2014/05/02

山手の春を楽しむ 横浜No.75

『どんたく』のにぎわい

 恒例のサンモール・インターナショナル・スクールのフードフェアを目ざして山手へ出かけた。フードフェアは、毎年4月29日に開催され、横浜の原点とも言えるイベントである。Hpp4290301_3 1859年の開港後、山手に住みはじめた外国人たちは、異国に滞在する寂しさをまぎらわすために野外イベントを開いた。それを「どんたく」(Zondag 日曜日)と呼び、生活の中の楽しみにしたという。私は、フードフェアは開港当時のどんたくの流れを引くイベントと考えている。そこで毎年、この時期に山手を訪れることにしている。横浜山手の春を寸描しよう。 写真上 山手十番館(レストラン)と外人墓地

〔下左〕フードフェアのゲート 〔下右〕お国自慢のファーストフードで会場はハッピームード。韓国、メキシコ、日本、インド、中国、チリ、ハワイ、アメリカ、フィリピン、アイルランド、レバノン、オーストラリア、ニュージーランドなどが出店していた。毎年、バーベキューの煙が漂うHpp4290199_3 Hpp4290272_3

〔下〕ゲートわきの特設ステージでは、中高生のジャズバンドが演奏Hpp4290228 Hpp4290212

〔下左〕子どもたち手作りのゲームには、アイディアとユーモアがいっぱい 〔下右〕フェイスペインティングは山手らしいHpp4290257 Hpp4290245

〔下左〕外人墓地も華やか 〔下右〕チューリップ・アート・プロムナードという催しが、山手の西洋館(234番館、エリスマン邸、111番館、イギリス館)で開催されていた(5月3日まで)。写真は山手234番館の作品Hpp4290129 Hpp4290197

〔下〕山手99番(外人墓地正門前)が公園になった。「山手の移り変わり」(右)と「山手のブラフ積み」(左 当時の石積みの技法)を紹介したパネルが設置されているHpp4290166 Hpp4290139_2

〔左〕山手99番公園のモニュメントHp99p4290175

参照: 『横浜が見える時間』 横浜No.66

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2012/01/24

聖ミヒャエル教会のファサード ドイツNo.112

                テーマについてのアドバイス

工事中のまごころ、几帳面、潔癖

Hpp6147000_2 ドイツのほとんどの町は、旧市街を大切に守っている。旧市街とは、市庁舎と教会、マルクト広場を核として中世以来形成されてきた町の中心部である。第2次世界大戦で被災し破壊された旧市街でも、絵画や図版、写真などを参考にして中世以来の町並みを復活、再現している。そこには、我が町を大切にする執念を感じる。けっして生半可ではない。それだけこだわっているので、工事現場でもすきを見せたくないにちがいない。工事中の建築をおおうホロにもそれが表れている。Hppc104691_3

 昨夏、ミュンヘンの目抜き通り、ノイハウザー通りにある聖ミヒャエル教会が工事中だった。その壁面を覆うホロには、教会のファサードが精巧に描かれていた(写真上左)。そこで、どれだけ本気で描いたのか調べるため、以前撮影した実物のファサードと比較してみた(写真右)。カメラポジションやレンズの画角、天候など2点の撮影条件が違うので、厳密な比較にはならないが、要点はわかるだろう。ホロには、順光トップライト下のファサードが描かれている。

 ドイツでも建築や施設の修繕、補修、リフォームは欠かせない。工事中は景観が変わってしまうのはやむをえないだろう。そのとき、Hppc173187_2観光客など多くの人々へできるだけ本来の姿を伝えたいというドイツ人のまごころを感じる。また、それを支える几帳面と潔癖さを察することもできる。根幹には、Hpp6044555自身の住んでいる町、ひいては国を守りたいという精神が流れているのである。

 聖ミヒャエル教会は、1583~97年にミヒャエル5世によって建立された。そのファサードは、宗教的、歴史的にも注目すべき価値があるという。私は、2006年12月、クリスマスのアドベント時期にミュンヘンを訪れ、聖ミヒャエル教会でミサを見学した。そのときの体験は、今も忘れられない。昨夏は工事中のため聖堂は見学できなかった。しかし、1階(半地下)の礼拝堂は開いていたので、キリスト受難と復活の場面を再現した一連の彫刻を撮影させていただいた。Hpp6044546 (写真上左 聖ミヒャエル教会聖堂内部(2006年12月)。写真左 1階礼拝堂の「復活」を表す模型。写真上右 「復活」を表す彫刻)

参照:「工事現場のホロに描かれた絵 ドイツNo.50」 「町の美しさを探る ドイツNo.78」

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2012/01/02

山下公園でカウントダウン 横浜No.59

震災復興を期す年越しイベントHpp1015473

 2012年のカウントダウンを横浜の山下公園で迎えた。おりから山下公園では、年越しイベントとして「HOPE」が開催されていた。12月31日は、約2000個のキャンドルで地上に「HOPE」の文字を描き(写真上)、約3000個の電池式LEDを果実袋で包んだ「ひかりの実」を公園の樹木につるした(写真下左) HOPE実行委員会のホームページによると、Hppc315393「ひかりの実」とはアーティストの高橋匡太氏が描いた基本的なパターンに、スマイルやメッセージを書き加えるように準備されていて、横浜市内の小学生が協力してそれに描き加えて「ひかりの実」を作った(写真下2点)。それを「被災地に笑顔を送る」という趣旨で、一部は陸前高田市竹駒町にある滝の里工業団地・仮設住宅集会所にも展示されている。

 ちなみに、山下公園は、関東大震災(1923年)で出たがれきで海を埋め立てて造った公園だ。1930年、日本最初の臨海公園としてデビュー、Hppc315397_2Hppc315451同年、横浜復興大博覧会の会場にもなった。1961年には桟橋に氷川丸が係留され、1979年には、公園内に「赤い靴はいた女の子像」が建てられた。現在は横浜観光の名所の一つになっている。ここで「HOPE」のイベントを開催することには、大いに意義があるのだ。Hppc315419

 元旦の0時になると、港の船がいっせいに汽笛を鳴らした。同時に周囲から人々の歓声と拍手がわきあがった。MM21のほうでは花火が数発上がり、人目を奪ったが、すぐ静かになった。2012年ぐらい新年をかみしめ、期待する年は少ないのではないか。平穏と復活を祈るばかりである。(写真右 年越しイベントのポスター、写真下 山下公園で新年を迎えた人々)Hpp1015484

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2008/08/30

水がしみ込む路面 ドイツNo.73

Hpp5279095_2石畳の文化

 昨夜は一晩中雷が鳴り、犬が落ち着かずに部屋を歩き回り、そのせいで眠りが浅かった。明け方には空が黄色く朝焼けし、この世の終わりが迫っているような雰囲気だった。まだ、この気象は続くようだ。(写真右はノルドリンゲンの石畳の路地 両わきに水が流れるくぼみがある)

Hpp8291105_2 ここ23年異常気象が目立っている。特に、今年は春から何か“へん”である。八ケ岳山麓では、春のドカ雪が目立ち、夏に入ってからは、バケツというより風呂桶をひっくり返したような雨がたびたび降った。車のワイパーも役に立たないぐらい強烈だ。日中、入道雲が四方に立ち上り、これが雷を伴ってやって来る。そのため、何度かイワナ釣りをあきらめた。ここ数日も、日本列島の天候は異常だろう。(写真左上はメーアスブルグの広場 魚眼レンズで石畳を強調して撮影した)

Hpp8291100_2 集中豪雨による災害が目立つ。神戸の親水公園の場合、東京の下水管工事の場合、最近では、鹿沼市の高架下の水没事故など、今までとは違う水害が起きている。大きな社会問題だが、事故の最大の原因は集中豪雨という自然現象である。予測を超す雨量で排水施設がパンクしてしまったのだ。Hpp5260067_4しかし一方で、アスファルトやコンクリートで固めた都市の路面も問題である。ドイツの路面は日本とは違う。

 ドイツでは、雨水が地中にしみ込むような方策が定着している。Hpp6087373_2初めて気がついたのは、オーバーアガマウの駐車場だった(写真左上)。穴の開いたブロックのような石を敷き詰め、路面に土が出るようにしてある。そこから水がしみ込み草が生えていた。ブロックのおかげで車輪が乗っても土の部分は固まらない。ドイツではこのような路面がたくさんある。(写真右は石畳の部分拡大 ヘレンベルグで雹が降ったときに撮影した)

Hpp5279162  ドイツには石畳の文化があると思う。日本では庭園の敷石や飛石にしか使われない石を道路や広場、駐車場、駐輪場(写真右上)に敷きつめている。中世以来の伝統だ。もちろんアスファルトの道路もあるが、石畳が基本だ。これは吸水効果だけでなく、地面を掘り起こす工事にも有効だ。簡単に掘り返し、すぐ埋められる(写真右)。伝統の石畳が現在でも有効に機能しているのである。水が大地にしみ込まないのは不自然である。日本でも、路面の吸水対応を検討してもよいのではないか。都市の水害にいくらかは良い影響があるだろう。

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2007/09/12

工事現場のホロに描かれた絵 ドイツNo.50

Hpp6160159_4景観にこだわるドイツ人

 ドイツでも、最近は工事が目立つ。撮影でファインダーをのぞいていると、特に気になる。10年前はそれほどではなかったと思う。それでも、工事王国の日本ほどではない。ミュンヘン中央駅から歩いて5、6分のところ、カールス広場の斜め前に工事中のビルがあり、外壁にホロがかけられていた。そのホロには巧妙に絵が描かれていた。ミュンヘHpp6160165_2 ンのどこにで もある立派な建物の絵である。うっかりしていると工事のホロとは気づかないほど精巧だ(写真上)。はじめは見逃して通り過ぎてしまった。道路の反対側にある「美術家の家」を撮影していたら、気がついた。目が撮影モードになったから見えてきたのだろう。

 日本でも、最近は工事現場のホロや囲いに絵が描かれている。ないよりはましだが、お世辞にもいい絵とはいえない。一方、ミュンヘンのホロに描かれた絵には、工事関係者のこだわりを感じる。よく見ると、工事しているビルをそのまま模写しているように見える(写真上右は、デジタル処理でホロのかかっていない部分を明るくし、絵と比較しやすくしたもの)。そこまでこだHpp6130142わる根は何だろうか。ドイツの町では、どこでも旧市街を大切にしている。中世、近世以来の町並みを保存し、誇りにしている。ランズフートの旧市街で、この誇りは建設当時からのものだとわかった(写真左)。それぞれがファサード(建物の正面)の形や高さ、飾りなどで自身の家を誇示し、競っているのである。自分の家はもちろんのこと、公共の建築(Rathausなど)でも、それを建設することは、一生の大事であり、栄光に満ちたときであろう。世代が変わってもその精神は引き継がれるようだ。ミュンヘンのホロの絵を見て、ドイツ人が町並みとその景観にこだわる背景がわかったように気がする。

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