試胆会の思い出
12月1日、平林寺へ撮影に行った。紅葉が真っ盛りで、多くの観光客やカメラマンでにぎわっていた。銘木が多いのか、鮮やかな紅葉が初冬の低い日ざしを浴びて目を射るようだった(写真右)。平林寺は、臨済宗妙心寺派の名刹である。広大な武蔵野の雑木林の中に山門、本堂、庫裏、禅の修行場があり、松平家の墓所でもある。
ところで、私には平林寺に思い出がある。私が卒業した都立上野高校の寮が平林寺の隣にあった。生物部に入部して初めての合宿で寮へ行った。夜になって、生物部恒例の試胆会が行われた。延々と並んでいる松平家の墓のいちばん奥に置かれた自分の名札を独りで取ってくるのだ。もちろん外灯など一切ない。完全な暗黒だった。出かける前に先輩から怖い話をたくさん聞かされて、脅かされたような気がする。往復の途中にも、奇声や、物音が聞こえた。先輩のいたずらである。何とか名札を取って帰還したときはほっとした。
試胆会で自分が歩いたところを思い出そうとして、人のいない墓所の中を歩き回った。当時の記憶をたどってシミュレーションしてみた。しかし、昔とは違っているように感じた。まっすぐ歩いた記憶があるが、墓の中は迷路のようになっている。現在、ここで試胆会 をやったら、あまりいい気持ちはしないだろうなと思っ た。試胆会コースと思しきところを何個所か撮影した(写真上左)。墓所を通り過ぎ、さらに奥へ進んだら、開けた広場に出た(写真上右)。そこも紅葉がみごとだった。たくさんの人々は弁当を食べたりくつろいでいる。一瞬、青春時代のタイムトンネルを抜けて現在に舞い戻った気がした。どうもそこが寮が建っていた場所のような気がしたが…。
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