2019/01/18

リハビリの実情

 私はパーキンソン病のため、身体が思うように動かない。そこで、リハビリへ通っている。日頃は、そこで歩き方や話し方の指導をうけている。

 

手厚い日本の介護保険

 その施設は、くにもとライフサポートクリニックという神経内科医院の付属の施設で、「アンドモア」という名まえが付いている。「アンドモア」とは、and more「そしてもっと」という意味になる。この施設に通うにきっかけは、ケアーマネージャーのYさんの紹介による。初めてアンドモアに行ったとき、施設の土屋さんが私を迎えに来てくださった。そのとき、土屋さんは初対面の私の肩をかかえるようにして、送迎車へ連れて行ってくださった。私はすでに歩くことが困難になっていたので、送迎車に向かうときには不思議な感覚だった。なぜ歩けるのか不思議な気持ちだった。送迎車のなか土屋さんが自己紹介した。「理学療法士の土屋です」という。そのとき初めて、理学療法士という国家資格があることを知ったのである。理学療法士は、私にとっては神さまみたいな存在だ。歩けない私にとっては救いの神である。今でもまだ、普通に歩けるわけではないが、将来歩ける可能性を信じていられるのは、うれしいことだ。まさに、アンドモアである。何故もっと早くリハビリに行かなかったのかが悔やまれた。

 

 私は現在、要介護2だが、介護保険のlおせわになったとき(当時は要介護1)、私の自宅に7人の方々が集まって打ち合わせ会議をしたことがあった。①ニチイのケアーマネージャーのYさん、②アンドモアからは理学療法士の土屋さん、③ニチイの訪問看護担当のHさんほか2名、④部屋のリホームと介護用品担当のニチイのスタッフ、⑤電動車椅子担当のフランスベットの方が一人出席した。合計5部門7人もの人々が、私一人を支援してくださっているのだということがわかった。Hpdsc_0054_edited1_2ちなみに、この会議のことを担当者会議という。介護保険制度とは、これほど手厚いものだとは知らなかった。

 

うれしい時間を共有

 ところで、アンドモアでの生活は、なかなか充実している。これは、施設のスタッフはもちろんだが、通ってくる人々の人柄による。皆さん高齢ではあるが、知識人であると同時に人格者でもある。

 リハビリでは、まず始めに“おとなの学校”という時間がある。これは、毎回スタッフが講師になって行うレクチャーである。あるとき、聖徳太子について学習したことがあった。太子の有名な言葉に「和を以て貴しとなす」というのがある。そこで、「和」について話題になった。その時、講師の佐藤さんから「和」を作るにはどうしたらよいか? という質問があった。我々“生徒”のその質問に対する答えは、流石に立派なものであった(写真右上)。①話をよく聞く、聞き上手になる。②腹を立てない。③お互いに笑い(笑顔)を絶やさない。④近づこうと努力する。⑤譲り合う心。➅喜ぶことを考える。⑦自分のしてほしいことを、(他人に)してあげる。逆に、自分のしてほしくないことを(他人に)しない。⑧人前で相手をほめる。相手の良いところを見つける。というのが答えだった。私の答えは⑧だったのだが、そのとき、ほかの生徒さんが、その前に相手の良いところを見つける、という提言が付け加えられた。すなわち、私の答えを補ってくださったのだ。このような知的な環境は、めったにないのではないか。

 これは、我々高齢者でなければできない答えだろうが、高齢だからできる答えというものでもない。リハビリにいらしている方々の人格による。こういう方々と一緒に同じ時間を共有できるのはうれしいことだ。

 

楽しいクリスマス会

 昨年1215日は、アンドモアでクリスマス会があった。家内と二人で参加した。会場に到着すると、いつも私の身体の調子を診てくださっている理学療法士の野村さんがサンタクロースの衣装で私を会場へ案内してくださった。

Hppc152511_2Hppc152531_2 クリスマス会は、なかなか充実したプログラムだった。スタッフは、ハンドベルの演奏やフラダンスを披露した(写真上2点)。始めに、たどたどしい“日本語”でガイダンスがあった。それが外国人の日本語に似ているので、日常を知っている参加者から笑いが起きた。お菓子のプレゼントは、すべてスHppc152550タッフの手作りだという。Hppc152547
最後に、全員で「聖しこの夜」を合唱した。久しぶりに楽しいひと時を過ごした。

 

早くから対策を
 最近、くにもとライフサポートクリニックでは、早くから(高齢になって体が動かなくなる前に)身体の調子を整えておきたい人のために、「メディカルフィットネス『にこっと』」を新設した。世の中には、身体の自由がきかない方々がたくさんいらっしゃる。『にこっと』には、筋力アップだけでなく、生活習慣病の予防と、改善、および健康維持、健康増進などを目的にしているという。Hp_edited1私も、通いたかった施設だ。特に認知機能を守ることに力を入れているという。これは素晴らしいことだと思う。このほかにも、神経内科の医院のメリットを生かしたいろいろな内容がある。詳細は、ホームページなどを参考にしてほしい。http://www.mf-nicotto.com

 さて、「アンドモア」にしても、「にこっと」にしても、ネーミングがおもしろい。ほかに「笑いヨガ」というのがある。「おとなの学校」の最後に、みんなで大笑いするのである。笑うことが体に良いということは、以前から知っていた。私の叔母が骨折したときに、担当医が苦笑いでもいいから笑って患者に接してほしいと言われたことがある。それ以来、笑いを心がけてきた。笑うと免疫力が高まるといことだ。これをヨガと結びつけたとろが流石である。何か新しいことをやるときには、それに名まえを付けて、取り組む人たちがそれを共有することが大切だ。

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2016/03/21

導引術の深呼吸が基本

 初めて、 「上工中国気功整体院」 (写真下右)を訪れたときに、何 磊(か らい)先生から指導いただいたのは深呼吸だった。日本式の腹式呼吸ではなく、導引術によるものだったので、ちょっととまどった。Hp_p3011751しかし、そのとき、それが私の現在の難局を乗り切る切り札になろうとは思わなかった。「上工中国気功整体院」へ通う主な目的は気功整体を受けることだが、何先生からは、そのほかに健康に関する生活習慣や知識も教えていただいている。しかし、私の健康の基本は、導引術の深呼吸にある。

 日本式の腹式呼吸も、仕事や趣味に没頭しているときに有効なのは知っていた。一般に、深呼吸は酸素をたくさん脳に送るので、脳が活性化する。そのためか、気分をリフレッシュさせてくれる。
Hpp5043164_2 導引術の深呼吸は、お腹をへこませたり膨らませることは、意識しない。口による排気もない。正確ではないかもしれないが、何先生から指導を受け、自身が実践していることを書こう。まず、肩の力を抜いてリラックスして立つ。口を閉じ、歯は軽くかみ合せる。舌の先を上あご(上の歯の内側)に付ける。鼻から息をいっぱい吸って胸を膨らませ、腹をへ込ませる。目は正面遠方を凝視し、背筋を伸ばし、頭のてっぺんで天を突くような気持ちになることが大切だ。従来やっていた腹式呼吸と違うところは、お腹を膨らませないことだ。息を吐くときも、やはり鼻から吐く。口は閉じたままだ。舌を上あごに付けることで、「陰」(人体の腹側)と「陽」(人体の背中側)が一つにつながるという。Hpp5011507「陰陽」は、中国の易学でいう、宇宙の万物に働く相反する概念で、「陽」は天、男、日、昼、動、明、などであり、「陰」は地、女、月、夜、静、暗などであるという。陰と陽についての考え方は、中国医学の根底にかかわるという。
 私は、導引術の深呼吸を2~3回繰り返すと、身体の動きの改善につながるのだ。Hp14p7315460これについての詳細は後述するつもりだ。

 さて、気功導引術とは仙人(神仙)の技であるという。私は、昔から仙人に憧れていた。深呼吸を実践することにより、少しでも仙人の境地へ近づけたら、こんなうれしいことはない。仙人は霞を食べて生きているという話を聞いたことがある。私は、その話にも、なんとなく引かれる。そこで、八ヶ岳山麓の森の中で、仙人が現れそうな雰囲気が写っている写真を選んでみた。Hpp8090157_2それにセンニンソウ(仙人草)の写真(写真右)を加えて掲載する。センニンソウは、果実の白い毛を仙人の白髭にみたてて命名されたという。なお、 「上工中国気功整体院」についてはホームページをご参照ください。

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2012/01/21

森の健康食品・くん製 八ヶ岳山麓No.134

      テーマについてのアドバイス

レシピと作り方Hppc245491_2

 私は、八ヶ岳山麓でときどきチキンの燻(くん)製を作る。最近、今までよりおいしくできるようになったので、レシピを公開することにした。作り方は芳州流で、だれにでもできる簡易的な燻製法だが、味は上等だ。なお、このページは昨年来、掲載の時期をうかがっていたもので、写真も以前のものだ。

 まず、ソミュール液を作ろう。材料は、水1000ml/食塩 大さじ3杯/日本酒 100ml/味醂 大さじ1杯/コショウ 少々/ロリエ(乾燥させた月桂樹の葉)数枚。容器は、肉などを入れたときあふれないほどの大きさであれば何でもよい。ソミュール液というのは、本来、食塩の飽和溶液にしなければならないのだが、芳州流では食塩は少なめだ。これに好みの香辛料を加える。Hppc250269コショウとロリエが定番だが、ロリエをきらしていたのでオレガノのドライリーフをもみ砕いて入れた。ちなみに、オレガノは山小屋のハーブ園の中では優先種である。毎年大量のドライリーフが採れる。日本酒や味醂の代わりに赤ワインも合う。今回まろやかな味になったのは、味醂のおかげのようだ。

 これに素材のチキンの骨付きもも肉を浸ける。素材の選択は自由だ。私は、鶏の砂肝、豚のバラ肉やレバーなどもしばしば使う。常温(気温は10~15度C、冬の山小屋で)で半日から一昼夜浸ける。ときどきHppc250270 、かき回してソミュール液が均一にしみ込むようにする。半日以上たったら、水洗いして大皿に乗せて乾かす。 燻材はヒッコリーとクルミを使った。燻製器(構造は写真上左のとおり)の底に燻材を敷き、その上に素材からしみ出した油を溜めるトレイを敷く。その上に金網に乗せ(写真左)素材を置きふたをする(写真下左)。燻製器を弱火で約2時間熱する。肉を蒸し焼きにするのだ。弱火にするのは煙を長時間安定して出すためである。強火では燻材はすぐ燃え尽きてしまい良い煙が出ない。燻煙中の2時間の間に素材を3回ひっくり返し、まんべんなく煙と熱がゆきわたるようにする。また、途中で1回燻材を補充をする。Hppc250272 私が作る燻製は温燻なのだが、肉類を焼くのではなく、煙と弱火で蒸す感じだ。芯まで熱がとおるのには2時間以上かかる。当然、煙がたくさん出るので屋外で作業する。私は、火力にボンベ式ガスコンロを使っている。

 味は抜群だ。市販のハムやソーセージとは違った濃厚な煙の香りがする。ビールやワイン、ウイスキーのつまみには最高だろう。私は、燻製を健康食品だと思っている。燻製には樹木のフィトンチッド(木精)が浸み込んでいると思うからだ。Hp200707300029 フィトンチッドは殺菌、消臭作用があり、このエッセンスが濃縮して浸み込んでいる。さらに、燻煙中に大量の脂がしみ出しトレイに溜まる。燻製にしないときは、この油も食べているのかと思うとゾッとする。温燻は脂が抜けるのである。燻製は食品として体に悪いはずがない。もちろん完全な保存食である。ちなみに、燻製にはハエがたからない。(写真右 燻煙中の鶏のもも肉)

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2010/01/05

写真展『元気で幸せ』… シャトロー会展

Hpdm_2得意技と応用力

 私がコーチを務めるシャトロー会が6回目の写真展を開催する。シャトロー会会員の撮影姿勢はたいへん柔軟だ。メンバーそれぞれが得意技と得意被写体をもち、どんなテーマや課題があってもびくともしない。得意技でこなせるからだ。一方、得意があるということは応用が利くということなので、どんな被写体でも平気である。撮影が最高におもしろいと感じる境地に立っているのではないか。

 私は、今回のテーマをこなすためにマニュアルを配布した。それはコーチの務めである。メンバーそれぞれが元気になれ、幸せを感じたときにシャッターをきるようお願いした。Hp_7被写体は多彩だ。孫との遊び、祭り、ベランダの至福、富士山、植物の神秘、若者、カルチャーやコミュニティー、動物の躍動、スポーツ、自然とのつき合い、季節の移り変り、朝夕の感動、などだ。会場のあいさつ文を下に掲載する。

会期:2010年1月7日(木)~12日(火) 11:00~19:00(土日開催)/会場:フォトエントランス日比谷(日比谷三井ビル) アクセスはマップ(上左)をクリックしてくださいHpp1060630Hpp1060629

         

         

         

第6回 シャトロー会 写真展 『元気に幸せ』(あいさつ文)

 今、社会の大きな関心事は健康でしょう。元気に暮らせたら、これに勝る幸せはありません。私たちは、元気の根源をカメラで追求してみたいと考えました。そこでメンバーそれぞれは、自身が元気になり、幸せを感じた場面にシャッターをきりました。老若男女の活躍、動植物たちの躍動、自然からのメッセージなど、被写体はさまざまです。これらを次の4つのカテゴリーに分けて展示いたします。

Partner 一緒にいる幸せ/Nature 自然の霊力を感じる/Location 元気で幸せになれる所/Chance 元気で幸せになれる時

 新年早々、ご高覧の皆さまにも元気になっていただけたら幸いです。 シャトロー会コーチ 豊田芳州

 私は、朝と夕方の感動をそれぞ1点ずつ発表した。一つは、白馬山麓で迎えた朝の風景だ。山頂から徐々に浮かび上がってくる山容に『前途洋洋 Chance』とタイトルを付けた。もう一つは、蓼科の日向木場展望台からの夕焼けだ。「有終の美」という言葉がぴったりの風景だったので『有終の時 Chance』というタイトルを付けた。朝夕は、私たちを元気にしてくれると確信する。各カテゴリーの代表作も以下に掲載する。HpHp_2

                                           

       

        

        

                     『学 習』 Partner 中村文江Hp_5

Hpdsc01093『全 開』 Nature     菊谷義美

Hp_5『飛 翔』 Location    矢部 徹

Hp_6『底 力』 Chance    新沼早智子

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2007/11/01

写真で癒し、いやされる

第4回 シャトロー会 写真展 『癒し、いやされるとき』

Hpdmimg_3 会場:代官山フォトギャラリー(マップは要クリック)

会期:11月1日(木)~6日(火) 10:00~18:00 最終日は17:00まで

 優れた写真には人を癒す働きがある。自然や町の風景、花や昆虫などの生物、人々のスナップなど、どんな分野の写真にも癒し効果はある。一方、写真を撮影するときにも癒されるときがある。被写体を探す好奇心、求める被写体にめぐり合った感激、すばらしい被写体の前に立ったときの幸せ、シャッターをきるときのときめき、思いどおりに撮れたときの達成感など、いやなことを忘れさせ、ストレスを解消してくれる。

Hppa311117Hppa311114_2  癒すとはどういうことだろうか。辞書によれば①病気や傷をなおすこと、②悲しみや苦痛をなくすこと、とある。写真で撮影に熱中すると、苦痛や苦悩を忘れてしまうのだ。これは写真撮影にか ぎったことではない。好きなことに夢中になると、少なくともそのときだけは我を忘れる。「病は気から」という言葉があるが、いつも気がめいって、暗い気持ちでいたら病気になってしまいそうだ。写真でそれをいくらかでも解消できたら幸いだ。ただし、夢中になれる被写体があることが絶対条件だ。

Hppa311120_2 以上は、写真撮影の精神面について触れた。しかし、私は肉体的にも効果はあると考える。被写体を探索するときの目と足の使い方は、日常生活とは明らかに違う。日常生活のように省略できないのである。日常では日ざしや水面の波紋などは気にしてはいられない。それらを気にしていたら、用事は遅れ、ときには足元が狂って転ん でしまう。しかし、撮影ではそこが勘所だ。日ざしや水面の状態を生かすカメラポジションを一生懸命探す。スナップ撮影では、ファインダー全視野で人々の表情と関係を瞬時につかまなければならない。しかも、ピント合わせHppa311124_2 を確認しながらの観察だ。目と脳、足、指(ピント合わせやレリーズに使う)を連動させた動作は写真独自のものだ。いろいろな器官が連動することは脳に良い刺激がある。写真撮影は、フォトセラピーとして治療効果があることは以前に話した。参照(「写真は病気を治すか 信州No.5」)

 シャトロー会メンバーは、写真の癒しについて考え、自身の体験を作品に託した。手前味噌で、我田引水のところもあるが、同じ人間同志なら共感していただけるだろう。特に写真仲間には理解してもらえるのではないか。ご高覧いただけたら幸いだ。

Hp_2米山明六 「禅の力」(平林寺) 秋の禅寺で感じた禅の精神を形にしたもの。天へ収束する形(クサビ形)には動きや力がある。

Hp_3 矢部 徹 「至福」 私はゴルフをしないが、友人たちの話をたびたび聞いていると、このシーンには癒しがあることを想像できる。

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2007/08/26

夏の省エネは高原で 八ヶ岳山麓No.41

Hpp8139126

今夏を過ごし、私は以前に書いたブログの再掲載を決断せざるを得ない気持ちになった。エネルギーの問題だけではなく働き方の問題もかかわってきたからた。テレワークが普及してきたののだ。


  • 再掲載

遷都論 愚考

 

 地球環境は深刻な段階に来ている。北極の氷が異常に解け、世界中で異常気象が発生し、日本でも猛暑日が続いている。炭酸ガス(温室効果ガス)の排出を少しでも削減しなければならない。1997年の京都議定書で、日本も1990年水準の6パーセントを2012年までに削減すると世界に約束した。しかし、現在のところ削減どころか約8パーセントも増加している。目標達成は絶望的だ。このところの猛暑でエアコンの電力消費量が増え、東京電力では供給量がピークに達している。エアコン使用は炭酸ガスの排出に大きく影響する。これをなんとかできないものだろうか。ここで心機一転して対策を講じなければならない。

 

Hpp8139149 八ヶ岳山麓(標高1400メートル前後)では、真夏の最低気温が16~17度C、最高気温は27度Cぐらいだ。そのため、エアコンによる冷房の必要はない。夏季だけでも、余裕のある企業や所帯は八ヶ岳山麓などの高原へ移住して生活することを考えてよいのではないか。ドイツでは通常、冷房用エアコンは使っていない。例外はあるかもしれないが、基本的に冷房機器は部屋にはない。緯度が高いのであまり高温にならないことと、湿度が低いので不快指数は低いようだ。また、ドイツでは害虫が少ない。窓を開け放っていても蚊や蛾は部屋に入ってこない。殺虫剤をたくさんまいているのではないかと気になるが、そのようなことはないようだ。緯度が高いからだろう。夏にエアコンを使わないということが、ドイツのエネルギー事情に大きく貢献しているのだろう。八ヶ岳山麓はドイツに似ているような気がする。

 

Hpp8159341_3  オフィスの移転には出費が必要だが、それは環境改善のためのコストと考えればよいのではないか。これぐらいのことをしないと、日本は京都議定書の目標を達成できないだろう。ビジネス環境はコンピュータ化され、移転できる業種や部門がたくさんあると思う。コンピュータ化はそのためのもではなかったのか。

 

Hp200707310157 夏、高原で暮らすことにはいろいろなメリットがある。まず、電力量を節約できる。次に、空気がきれいなことだ。大都市の暮らしは排気ガスの中での生活といえる。例えば、乗用車のエンジンは、アイドリングの状態で1分間に800回ぐらい回転している。排気量1500ccなら1500×800=1200000cc/分=1200l/分の排気ガスが空中に排出されていることになる。長時間、何千台という車両が排出するので、空気中には膨大な排気ガスが混じっていることになる。私も横浜市の幹線道路のそばに住んでいるので、それを吸って生活している。一方、高原には排気ガスはほとんどない。森林があり、健康に良いフィトンチッドがたくさん放出されている。都市とは正反対の環境だ。

 

Hp200707310134 高原は水がすばらしい。八ヶ岳山麓には、豊富な湧水がある。甲斐小泉駅近くの三分一湧水(写真左)には近くの住民だけでなく、喫茶店やレストランが水を汲みにやってくる。ちなみに、三分一湧水の湧水量は8500トン/日。近くにある女取湧水は10000トン/日である。おいしい湧き水は健康に最適である。加えて、高原では、朝取りの新鮮な野菜や乳製品が食べられる。このような環境でリフレッシュして仕事に集中し、思考力と効率を高めることができるのではないか。

 

Hpp8180086  もちろん、八ヶ岳山麓は自然が豊かである。娯楽施設はほとんどないが、文化施設はたくさんある。写真家である私に関係があるのは清里フォトアートミュージアム(K・MoPA)(写真右)だ。そこは森に囲まれた良質な空間だ。先日は、西村豊氏の「森の妖精 ヤマネ」展を鑑賞した。自然環境の指標にもなるヤマネに密着した撮影姿勢と、被写体に対する真心に好感を持った。鑑賞し終わって、ロビーでくつろぎながら、満たされた気持ちになれた。

 

Hpp8149191 オフィスを移すにはさまざまな障害がある。一方、人々が高原に集まれば不都合が起きるであろう。しかし、ここで知恵を出し合って、環境と人々に優しい暮らしを目指せないだろうか。

 

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2006/08/16

足は写真と健康の基本 ドイツNo.23

Hpp5290010_1 歩くお年寄りが目だつ

 ドイツの町を歩いていると、お年寄りが歩行器を使って歩いている姿が目につく。普通の杖や松葉杖もあるが、4輪の歩行器が目立つ。これには荷台が付いているものがあり、買いものにも利用されている。日本では、病院の中ではよく見るが、屋外ではあまり見ない光景だ。

 ドイツの信号はすぐ変わる。お年寄りはゆっくり歩くので、横断歩道では、渡りきる前に赤になってしまう。しかし、ドライバーは渡りきるまで待っている。横断歩道がないところでも、横断しようとすると止まって待ってくれる。これはお年寄りにかぎらない。私たちが路肩に立っていると、停車して渡れと合図をする車が多い。お年寄りが町に出てくるのには、このような背景があるからだろうか。

 一方、ドイツの町では、石畳の路面が多い。石畳はでこぼこしているのHpp5240135 で、歩行器にかぎらず、普通の歩行にもけっして適しているわけではない。あえて、これを変えないのは、石畳の伝統と環境的メリットを優先しているからにちがいない。このへんがドイツらしいこだわりだと思う。歩きやすい石畳(写真上、中)も普及しているが、車道は従来の石畳が多いので、横断歩道も石畳になる。

 歩くことが健康的なことは言うまでもあるまい。けがをしたり、入院してベッドに伏すと、歩かなくなり一気に思考が衰えるという。特に、お年寄りには影響が大きい。身近な例を知っているのでまちがいないだろう。最近は、エレベーターやエスカレーター、自家用車などの普及率が上がり、お年寄りにはたいへん便利である。しかし、壮健な人々にとっては足を使う機会が減った。都市で生活すると、あまり歩く必要がない。これは足がどんどん衰えることになる。使わない器官が退化するのは生物の歴史が証明している。当然、脳にも影響があるだろう。これは人類の問題だ。

Hpp5300105  写真が健康維持に良いと言われるのは、歩くからだ。乗り物で移動しても、被写体の前に立ち、ベストカメラポジションを決めるためには歩かなければならない。カメラを持っていると、あっという間に1キロや2キロは歩いてしまう。歩くことで足を鍛え、足から脳に刺激が行くだけでなく、クリエイティブで前向きな気持ちが脳を活性化する。写真撮影は心身の健康に役立つ。ドイツの町でお年寄りを見ていて、その気力に感動すると同時に、写真のありがたみを再確認した。

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2006/01/05

写真は病気を治すか 信州No.5

森の宝石 Ⅱhpp1064484

 今冬の寒さは気象台のデータ収集開始(1946年)以来である報じられている。確かに信州でも実感する。日本海側は大雪だが、八ヶ岳山麓では近年になく少ない。このような気候のときが本当に寒いのだ。似たような寒さは以前にもあった。右上の写真は15年以上前の撮影だ。氷の魅力を発見したときの被写体とその写真である。当時は、森の中に宝物があり、『沈黙の森から』が成り立つと思った。右下の写真は5年ぐらい前の撮影だ。PLフィルターの効果で見える氷の風景だ。何のへんてつもない氷が、PLフィルターを通してこのように見えたときの感激は寒さを忘れさせる。今日も、渓流は宝石箱だった。 hpp1064490 

【撮影に夢中になると指先が温まる】 冬の撮影はつらい。撮影以前に寒さと闘わねばならないからだ。特に指先がかじかんで思いどおりにカメラ操作ができなくなる。これさえ解決できれば撮影は快適なのだが。しかし、寒さを我慢して被写体を探したり、シャッターチャンスを待たねばならない。ところが、良い被写体にめぐり合うと状況は変わる。まず寒さを忘れる。そして気がつくと、ついさっきまでかじかんでいた指先が温かくなっているのだ。

 フォトセラピーということばがある。初めて聞いたのは、1996年8月23日の朝日新聞紙上である。セラピーとは治療のことなので、フォトセラピーは『写真療法』とか『写真治療』ということになる。記事の要旨は、被写体とつきあい、写真を撮影し、それを評価したり鑑賞し、役立てることで治療ともいえる効果があるというのだ。これらはアートセラピー(芸術療法)の一種だという。

 私は指を暖めたわけではない。被写体に夢中になり、いい写真を撮りたいという目標を目ざしただけである。それなのに指先に変化が起きた。体内で何かが起きているとしか思えない。撮影には、心理療法のような効果があると実感した。同時にフォトセラピーも確信したのである。

【撮影データ】 [上の写真] ニコンFE2 Aiマイクロニッコール55ミリF2.8 絞りF5.6 1/8秒 フジクローム100プロD 左後方からストロボ日中シンクロ [下の写真] ニコンF4 ズームニッコール80~200ミリF2.8(200ミリ) 絞りF11  1/4秒 コニカクロームSINRA100

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