2017/07/16

キビタキの営巣に付き合う 八ヶ岳山麓No.207

 昨年から今年にかけて、野鳥の営巣(子育て)をいくつか観察した。野鳥の健気な子育てに感心した。 私たちは、山小屋の近くに、巣箱を4つばかり置いてある。いずれも家内の手作りだ。今までに、3つの巣箱には、営巣の実績がある。Hp616p6163247 今年は、今までに無視されていた4番目の巣箱にも、ヤマガラが営巣した。そのほかに、今年は、台所の窓辺にもキビタキが営巣し、窓が開けられないという事態になった(写真右 巣立つ前日の夕方、親が子に餌を与える。写真下左 台所の窓辺にできたキビタキの巣)。

 野鳥たちが、巣の場所を決めるのには、いろいろな理由がある。まず、天敵に襲われない安全な所だ。Hpp5200146 キビタキにとって安全な場所とはどのようなところだろうか? 野生動物のテンやキツネ、カラス、猛禽類、蛇などから、巣を守れるかどうかが、第一条件だ。そのためには、人の生活圏がもっとも安全だ。キビタキは、山小屋の台所の窓の格子を利用して巣を作った。ちょっと山小屋を空けていたすきに作られてしまった。私たちが山小屋に来たときには、巣は完成していた(5月14日)。窓辺を占領されて、私たちの生活のし方に支障が生じてきた。Hp2p4180492 しかし、私たちは、キビタキのために、多少の不便を我慢することにした。キビタキのほうも、我々を信じてよいのかどうかを、様子をうかがっているようだった。カップルで私たちのそばまで飛んできて、観察しているようだ。キビタキは、めったに見られる鳥ではない。しかし、今年のこの時期にはしょっちゅう観察できた。鳴き声も頻繁に聞こえた。巣を作ってからしばらくは卵はない。その間に周囲の環境を点検しているようだ。Hpp5280417

 私たちが、家の裏に回て、巣を直接、観察しよとすると、つがいは巣を離れ、近くの樹に留まって、様子をうかがっている。警戒しているようだ。私たちはしかたなく、室内から窓越しに観察することにした。窓ガラスは、半透明の型板ガラスだ。シルエットがやっと見える程度の観察になる。1個目の卵が確認できたのは、5月16日だった。2個目を26日に確認、私が2階の窓から自撮り棒で撮影したのが28日だ(写真上右 卵2個を確認)。このときも、自撮り棒を窓から少し出しただけで、親は巣を離れてしまった。Hpp6163290

 約1週間、山小屋を空けて、6月7日に山小屋へ戻ると、2個の卵は孵っていた。それからは、親の熱心な育児が、窓越しに感じられた。早朝から夕方暗くなるまで、親は代わる代わる、約5分から20分間隔で餌を運んでくる。夜は交替で巣に留まって子ども の面倒を見る。

 図鑑によると、キビタキはスズメ目ヒタキ科で体長14センチとあるが、これはオスのサイズではないか。メスは、2センチぐらい大きく見えた。オスの色は胸が黄色で、白と黒の羽のコントラストが美しい。ひと目でキビタキとわかる。メスは全身が黄褐色で地味だ。ガラス越しのシルエットでも、オスとメスの区別がつく。夜に、室内灯のよって照明されたオスの羽の白い部分が見えた(写真右上)。

Hpp6163265Hp616p6163254 6月16日の夕方、家内が出かけているときに、我が家の犬が大声で鳴き喚いた。私の犬に対する対応が気に入らないらしい。耳をつんざくほどの鳴き声に、私は、窓の外のキビタキが気になった。 せっかく、私たちが大切にしてきたキビタキに対する思いを無にするような鳴き方だったからだ。これではキビタキの親は、心配だろう。窓の外に不穏な気配を感じた。シルエットの親と雛が動き始めた。羽ばたきの練習も始めた。巣立ちの間近なことを予感した。(写真上2点 巣立つ前日の雛のようす。羽ばたきの練習をしている)

Hpp6170210  Hpp6170212 翌日、6月17日、朝から窓の外が活気づいている。親が盛んに餌を運んでくる。そして出かけるときは、口に白いものを加えて飛んでいく。巣の中の糞を運び出しているのだ。どんな野鳥も、巣立ち直前になると巣の中に溜まっている子どもの糞を運び出す。糞の臭いが天敵を呼び寄せることになるのを警戒しているのだろう。ますます、巣立ちが近いことが予想された。10時ごろ、親に巣立ちをうながされて、2羽がほとんど同時に巣だっていった。Hpp6240235なんとも言えない寂しさと空虚感に襲われた。約1か月に及ぶキビタキの営巣に立ち会って、人間の育児や夫婦の絆について、あらためて考えさせられた。 (写真上2点 巣立ちの日の親子。同右 キビタキの巣材、下が窓側、白いものは糞の残り)

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2017/04/09

寄せ植えの芸術性

バラクラの日比谷公園展示会
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 寄せ植えは、コンテナー・ガーデニング(container gardening)という別名がある。すなわち、入れ物の中に庭を作ろうという発想だ。日本の盆栽に匹敵するだろうか? 両者は、構想や内容に違いはあるだろうが、“縮小芸術”(reduction art)という点では共通性があると思う。自然を尊重して一つの世界を目ざす点も似ているかもしない。家内が夢中になっているので、聞いてみたところ、「自然の植生や景観を大切にして美を追求する」というのだ。草花や樹木(灌木)を利用して、自身の自然観を再現しようということだろうか? おのずと、技法や流儀があるのだろう。蓼科バラクラ イングリッシュ ガーデンは、英国風の寄せ植えや庭造りの普及に寄与している。

 日比谷公園で開催されている寄せ植え展を見てきた。会場の展示は、1点1点を横一列に並べて見せるギャラリーのような構成だ。一堂に会している作品群を見て、今までにはない感動を覚えた。Hpp4072092今まで、私が見てきた展示は、作品1点1点が庭の構成要素のように置かれていた。作品で中庭を作ろうという見せ方だった。これは、寄せ植えの利用目的や日常性を重視した展示といえるのではないか? 寄せ植えの展示方法については、私はよくわからないが、今回の展示は、それぞれの作品が際立って見えるので、個性や自然観、作者のイメージが伝わってきた。Hpp4072099特にマスター(免許皆伝の作者)の作品は、迫力がある。重厚さや力動感、デリケートな反復など、それぞれの作品には、独自性が感じられた。
 DMに「世界的レベルで高く評価される作品展示です」と書かれているが、そのとおりだろう。私は自然写真に取り組んでいるが、寄せ植えと自然観の違いはあっても、創作の思考過程は同じなのではないか? 寄せ植えは、実際に植物を使うのに対して、私の写真は、被写体の画像で構成するという違いだけのような気がする。

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2017/03/08

横浜・山手のイギリス館 横浜No.93

懐かしいひと時を過ごす

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 3月5日、久しぶりに横浜・山手へ出かけた。好天に恵まれた暖かい一日、懐かしい横浜を体験できた。
 私は、1980年代に横浜を被写体にした『横浜がみえる時間』というテーマに取り組んでいた。そのころは、毎週末に横浜の旧市街地へ出かけて撮影していた。Hpp3050213_2Hpp3050242_2

 明j治維新以来、外国人居留地があった横浜には、エキゾチックな雰囲気がただよっていた。
 また横浜には、アメリカンな雰囲気もある。第二次世界大戦後、昭和27年(1952年)当時、横浜市には米軍基地の全国接収地面積の62パーセントが集中し、市域の39パーセントに及んだ。現在、横浜観光の中心地である中区では74パーセント、また横浜の中枢である港湾施設の90パーセントが米軍に接収されていた (「港町 横浜の都市形成史」 横浜市企画調政局編)。Hpp3050090_2Hpp3050170が撮影を始めたころには、かなりの基地が返還されていたが、それでも今よりはアメリカンな雰囲気が漂っていた。エキゾチックな被写体に不足はなかったので、夢中になって撮影したものだ。 (写真上2点は敷地内で見つけた実生と芽生え)Hpp3050203

 山手の西洋館は文明開化の香りが高く、よく出かけた。イギリス館は、元英国総領事公邸の建物をそのまま開放している。横浜山手ではもっとも規模が大きな西洋館である。ここで、家内が英国風の花の寄せ植えを習っている。蓼科バラクラ イングリッシュ ガーデン主催のレッスンだ。イギリス館は、英国風の寄せ植えを学ぶにはぴったりの環境だ。
 私は家内に付き添って出かけた。玄関回りの花壇や付属のバラ園で撮影をした。現在のバラ園は、白と紫のパンジーが冬枯を補なうように咲き競ている。バラは手入れが行き届いているように見えた(写真)。ここのバラ園は、花の品種が豊富で、撮影のしやすさを考慮すると一級だ。花の季節が待ち遠しい。(写真上は家内が当日に仕上げた寄せ植えとリース)
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 ランチには、撮影に夢中になっていたころ、よくいったローマステーションでイタリアンを食べた。お店はだいぶリニューアルされていたが、面影は残っていた(写真)。

  なお、春の横浜では『Garden Necklace YOKOHAMA 2017』 (ガーデンネックレス横浜2017)という花と緑の祭典がある。Hp_img_0001『ガーデンネックレス』とは、「第33回全国都市緑化よこはまフェア」の愛称である。(財)都市緑化機構が毎年、全国各地で開催するイヴェントだ。横浜では、みなとガーデン里山ガーデンの2会場で3月25日~6月4日に開催される(パンフレット参照)。

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2016/12/02

感動の大原治雄ブラジル展

『ブラジルの光、家族の風景』

 去る11月16日、清里フォトアートミュージアム(K★MoPA)へ、大原治雄展を鑑賞に出かけた。パンフレット(写真右下2点)だけの予備知識で出かけたのだが、素晴らしい写真展だった。どうしても書かずにはいられない衝動にかられ、遅ればせながら執筆した。同展は12月4日(日)までだ。 http://www.kmopa.com/

 Hpp1img大原治雄氏(1909~1999)は、高知県生まれのブラジル移民である。写真家である前に移民としての多くの蓄積があった。写真を始めたのは、24歳で結婚したときからだという。家族の写真を撮ろうとしたきっけは、これから始まる一族の壮大なドラマを予感して記録しようとしたのか、カメラに興味を持ちはじめたのか、写真のテクニックに引かれたのか、私は、これらすべてではなかったかと推測した。大原氏の胸の内を図ることはできないが、彼の移民としての経験が反映したことは間違いあるまい。移民としてブラジル・パラナ州ロンドリーナを開拓するという、無から有を生ずるような過酷な生き方に立ち向かい、それにめどが立ったときに、所帯を持ち、何か一つのことに打ち込んでみたいというのは、自然な心の動きではないだろか。Hpp2img未開の大地を農園にするまでには、並々ならぬ苦労があったようだ。

 大原氏の写真の傾向や作風について感じたことに触れよう。『ブラジルの光、家族の風景』というタイトルがついているが、まず、自身のセルフポートレートが目立つ。これは何を意味するのだろうか。私には、家族の始まりは、自身 大原治雄であるということを伝えたいのではないか。現在、70人を超す大家族となった大原家の元は大原治雄であることはまちがいない。たくさんの子どもや配偶者、孫の写真の中に、ときどき大原自身のポートレートが散りばめられている。これほど多くのセルフポートレートが目だつ写真展は見たことがない。私が最も気に入ったセルフポートレートは、最初の壁面に飾ってあった1点だ。木に寄りかかり、足を投げだして座っている足元にコーヒーポッドが置かれている。大原氏の顔はフレーミングの中にはない。背中と左腕の一部が写っているだけだ。タイトルは、確か『休憩』か『休息』だったと記憶している。私は、このシーンの大原氏に感情移入することができる。顔をみせずに自身の休憩時間を表現しようという、この写真のモチーフに共感する。多様なセルフポートレートと写真展での公表は、私もまねしたいと思った。

 カメラを手にしたときには、過酷な開拓の時期はすでに終わっていたのかもしれないが、彼の作品には、労働の厳しさや不安な気持ちは写っていない。おそらく撮影はしたが、作品展には展示しなかったのであろう。家族の幸せとブラジルの大地を讃えたいという意図のもとに写真展は編集されていると思う。移民という日本国を代表した親善使節の役割を思えば、当然な編集意図だろう。『霜害の後のコーヒー農園』という作品があった。胸高直径2メートル以上もある巨木の切り株の上に二人の男が乗り、周囲を見渡しているスナップような記念写真である。霜害といえば、農業に従事する人にとっては深刻な事態だろう。この状況下で、かつて切り倒したであろう大木の上に立って、お山の大将のようにふるまっているのは、いったいどんな心境なのだろうか。霜害の実情を示す写真は簡単に撮れるはずだ。この写真が、大原治雄氏の写真観を象徴した作品ではないか。前述のセルフポートレートといい、霜害の写真といい、婉曲的に表現しようとしていると思う。

 シルエットと陰影を生かした作品が目立つ。タイトルの『ブラジルの光、家族の風景』のとおり、光のモチーフを多用している。ちなみに、シルエットも陰影も光のモチーフに属する。Hp4img_0004パンフレットの表紙を構成する2点の作品は、シルエットの写真だ。どちらも、背景の空が美しく、人物は大地と一体になってシルエットになっている。解説書の4ページ目『本展のみどころ』(写真左)には、『ブラジルの大地を切り開いたからこそ現れた「空」と「水平線」であり、大原はこのモチーフを繰り返し撮影しています』とある。パンフレット上段の写真の人物は大原氏だという。『苦難の日々を乗り越えた喜びに溢れる姿ですが、大原自身は画面右端に立っていることから、この写真の主役がブラジルの大地と空であることがわかります』。シルエットのテクニックを生かしたセルフポートレートである。

 最後の入出口に近い壁面には、パターン写真が展示されていた。草花や納屋の片隅に見つけた農機具などをパターン化した作品群だ。モノクロ写真なので、当然、ブラジルの光と陰影を生かした作品だ。大原氏のカメラアイの一端を知ることができた。

 大原氏の孫の一人が写真家になっている。サウロ・ハルオ・オオハラ氏が撮影した大原治雄氏のスナップが展示されていた。 ベットに腰かけている晩年の姿だ。ものさびしそうに見えるが、孫に撮影されている幸福感も読み取れた。私も写真家の端くれなので、うらやましく感じた。

 私は、鑑賞し終わったとき、大河ドラマを見たような気がした。そして、写真にもこのようなスケールの大きい表現が可能だということを知った。今までは、写真は映画や音楽にはかなわないと思っていたが、決してそのようなことはないと確信した。Hppb160141_edited2
 なお、サウロ・ハルオ・オオハラ氏が、祖父の故郷・高知県を訪れたときに撮り下ろした『Aurora de Reencontro 再会の夜明け』展も同館で展示されている。参照:田園の誘惑

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2016/10/26

サシガメとつき合う

ユニークな昆虫
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 10月25日、中央道・釈迦堂パーキングエリアで、見たことがない昆虫を見つけた。助手席に座っていると、ボンネットの上に奇妙な昆虫が見える。はじめはクモの一種かと思った。車中に常備してあるオリンパス スタイラスXZ-2で撮影を開始した。同機の望遠は105ミリ相当なので、大きくは撮れない。しかし、パソコンで拡大するつもりで撮影した。Pa259702_2

 そのうちにフロントグラスに登ってきた。スーパーマクロモードに切り替えて撮影を続けた。途中から、デジタルテレコンで210ミリ相当に切り替えて撮影した(写真左)。いずれの写真も、フロントグラス越しの撮影だ。

 図鑑で調べたとろ、サシガメの一種であることまではわかった。サシガメは、半翔目異翔亜目サシガメ科に属する。カメムシの仲間だ。口の形が鋭い針のようになっていて、これを小昆虫の体に刺して体液を吸う。人も刺されると痛いらしい。アップで見ると怖い感じがする。口針は折り畳み式で、付け根に複眼の目がある。
Hppa259706...
 車が動き始めて、高速になると、しがみ付いていたフロントグラスから消えていった。この間、約50カット撮影した。

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2014/09/23

秋の夜空を撮る 八ヶ岳山麓No.167

コンパクトカメラで天体撮影を楽しむ

 八ヶ岳山麓は天体観測のメッカである。野辺山には国立天文台の宇宙電波観測所がある。ほかに、ホテルや民宿などにも私設の天体観測所がたくさんある。八ヶ岳山麓は天空が澄んでいるうえに、天体観測に有害となる町の灯りが少ない。Hpp9204338_2すなわち、空がクリアーに見えるのだ。先日、私もベランダでイージーな天体撮影をしてみた。コンパクトカメラ(オリンパスXZ-2)を、レンズを空に向けてテーブルの上に置き、1分間シャッターを開くだけの撮影だ。1分間とは、オリンパスXZ-2の最長露出時間である。三脚もレリーズも使わなかった。 (写真上は撮影された全画面。写真下はその部分拡大、わずかに天球の動きが観察される)Hpp9204338_4
 まずカメラの設定だ。焦点距離を6ミリ(35ミリ判換算28ミリ)に決め、ピントをマニュアル(MF)で無限遠に調節する。次は露出の調節だ。マニュアル露出モード(M)で絞り値とシャッター速度、ISO感度をいろいろ変えて撮影してみた。その結果、ISO感度800、絞りF2.8、露出時間60秒でほぼ満足できる結果(写真)を得た。

 バルブ(B)で長時間露出すれば、星の移動軌跡を写す星野写真も可能だ。そのときには、ISO感度、絞り値、露出時間(シャッター速度)をいろいろ変えてテスト撮影して適正露出を決める。Hpp9230553天体撮影では、星の明るさと空の明るさが適正にならなければならない。特に、空の明るさが明るすぎず暗すぎず適正になる必要がある。なお、バルブ撮影にはレリーズが必要だ。 (写真右は撮影データを併記した再生画面)

 デジタルカメラでは、撮影結果をその場ですぐフィードバックでき、いくらでも撮り直しができる。ありがたいことだ。それにしても、宇宙にはなんとたくさんの星があるのだろうか。 参照 : 『八ケ岳山麓は宇宙との接点 八ヶ岳山麓No.116』

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2014/07/10

昔の巴里を撮りたい

セピア調の写真を楽しむHpp6020715b

 初めてコンパクトカメラだけを持って海外へ出かけた。海外取材は、経費がかかるうえに撮り直しはできない(一般に、どんな写真も同じシーンを撮り直すことはできない)ので、今までは信頼性が高いといわれる一眼レフをもっていった。しかし、コンパクトカメラの画質と信頼性が高まり、安心して取材に使えるようになった。持参したのは、オリンパス スタイラス1と同XZ-2、同XZ-1の3台だ。どれも信頼しているので、1台にトラブルがあっても、ほかの2台を使えるので心配ない。オールインワンのコンパクトカメラは、機材の軽量化ができ、カメラワークもシンプルになり、取材がずいぶん楽になった。 (写真右上 エッフェル塔Hpp6050442b_2

 
 私は、スタイラス1を中心に使った。35ミリ判換算300ミリまでの望遠撮影ができるうえに、マクロ撮影にも強いので、海外でもオールラウンドで使える(スタイラス1についてはいずれ詳述したい)。スタイラス1のモードダイヤルにART(アート)という表示がある。プログラムAEモード(P)や絞り優先AEモード(A)、シャッター優先AEモード(S)と同列にある撮影モードだ。ARTモードをひと言で説明すれば、諧調やカラーを変えて11種類の特殊な効果を作ることができる。Hpp6050457bそのなかの一つに「ジェントルセピア」という効果がある。「ジェントル」(gentle)とは「温和な」「優しい」「穏やかな」といった意味である。「セピア」(sepia)とは、色の種類で、「暗褐色」「黒褐色」をさす。「ジェントルセピア」で、写真を「穏やかな暗褐色」に仕上げることができる。 (写真上左 三輪車、写真上右 街頭のスタンド

 変色した古いモノクロ写真はしばしばセピア色になる。セピア色のプリントには、レトロとかアンティークな雰囲気があり、けっこう好まれている。Hpp6050451bこのユーザー志向に合わせてスタイラス1に採用されているのが「ジェントルセピア」である。 (写真左 パリジェンヌ

 私は、古いパリを撮りたかった。そこで、エッフェル塔とシャンゼリゼ通りで「ジェントルセピア」モードを選んで撮影してみた。パリの町並みはここ100年はほとんど変わっていない。セピアに仕上げれば往年のパリの雰囲気が出るのではないかと考えた。パリは「巴里」に写るのではないか?

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2014/04/09

Deutsche Geist 『ドイツの栄光』展 予告 ドイツNo.139

第1回 豊田芳州ネット・ギャラリー写真展

 インターネットが情報伝達の中枢的存在になってきた。各種のコマーシャルでは「詳細は○○で検索」などと、肝心の情報はインターネットで伝える場合が多い。行政や公共の情報もインターネットに任せているのがほとんどだ。Hp インターネットが嫌いだなどと言っていたら、世間の趨勢から遅れてしまうだろう。インターネットを敬遠するなら、それこそ自身の感覚を研ぎ澄まし(高感度のアンテナを立てて)、何倍もエネルギーを使わなければ生活情報は得られないだろう。もちろん、その選択肢はあると思うし、世の中の流れとは別の道を歩むということもありえる…。

 というわけで、私は自身のブログで写真展を開催することにした。ネットギャラリー『豊田芳州のTheme』の開設だ。ネットギャラリーのメリットはいくつかある。
①鑑賞者は会場へ足を運ぶ労力を省略できる ②いつでも鑑賞できる ③自身のサイトをもてば、だれでも写真展を開催できる ④会場費、パネル製作代などの開催費を節約できる ⑤アクセス解析で、鑑賞者のキャラクターと傾向をつかめる ⑥アクセスの多いサイトでは、多くの観客を動員できる。一方、デメリットもある。
①大画面の迫力がない ②組写真としてのレイアウト効果(モンタージュ効果)を生かしにくい。『豊田芳州のTheme』では、写真を並べて鑑賞できない ③作者と直接コミュニケーションができない
 デメリットの解決策として、①については、パソコンを大画面TVにつないである程度改善はできる。これには専用接続コードが必要だ。②については、ブログ上で特別なページ展開を工夫しなければならないので、現在の私に解決策はない。③については、コメントのやり取りで可能だろう。また前述のとおり、アクセス解析から鑑賞者のキャラクターと傾向をある程度つかめる。ネットギャラリーでは、作者と鑑賞者の間に、通常のギャラリーにはない接点が生まれるだろう。

 ネットギャラリーでの開催とはいえ、ダイレクトメール(案内はがき)を作り、期日とギャラリー(ブログのURL)を告知することにした(写真上)
〔期 日〕:2014年4月2日(水)~4月8日(火)
〔ネットギャラリー〕:「豊田芳州のTheme」 http://silent-forest.cocolog-nifty.com

 さて、なぜドイツなのか。私は、若いときからクラシック音楽が好きだった。無意識に聴いているうちにドイツ系の作曲家と曲が好きになっていた。ドイツを意識すると、ますますドイツ音楽に引き込まれた。ドイツ音楽を表徴するとしたら、重厚、荘重、躍動的、大上段と言ってよいのではないか。私は、“正統派”と思っている。好きな曲を生み出す風土や人々に興味をもつのは当然だろう。

 一方、写真を専門的に学ぼうとするとドイツのカメラに関心が出てくる。現在は日本がカメラ王国だが、その前はドイツがカメラ王国だった。日本は以前、ドイツのライカやコンタックスをまねた時期があった。Hpp5305116_2 Hpp6157053 ドイツのマイスターたちが作った精巧なメカニズムがカメラの基礎になった。写真関係者にとってドイツは特別な国である。それは私にとっても同じだ。ほかに町並みや人々は馬が合うし、パン、ソーセージ、ビール、コーヒー、ジャガイモなど大好物だ。現在、ライフワークとして「ドイツからの風」に取り組んでいる。第1回は『栄光』編としてまとめた。ドイツ各地で共感し、私なりに讃えたいと感じた風物である。アクセスいただけたら幸いだ。 (写真上左 うまいドイツのビール。同上右 おいしいドイツの朝食)

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2014/02/06

オリンパスXZ-2の主な仕様

高性能作画用カメラ…コンパクトカメラシリーズ54

 1960年ごろ、「カメラマン・コバック」というTV番組があった。チャールス・ブロンソン演じるカメラマンが、毎回、カメラと写真を使って事件を解決していくサスペンスものだ。Hpxz2pa157954_edited1 モノクロテレビ全盛時代の番組だった。コバックのベルトにはいつもライカ?が拳銃のようにホールドされていた。ストーリーはほとんど覚えていないが、コバック(ブロンソン)のかっこよさは、今でもはっきり覚えている。少なからず私のカメラマンへの憧れにつながった。 (写真上左は、オリンパスXZ-2のレンズ収納状態。UVフィルターを装着した豊田仕様)

 私は、もっとも基本的なカメラアイは、被写体の前にカメラをもって立つことだと考えている。シャッターを切らなければ何も始まらないからだ。そこで、フルタイムでカメラを携帯することが写真にとってもっとも大切だ。今でもコバックのように常時カメラを携帯できることにあこがれている。それに応えてくれるのがコンパクトデジタルカメラだ。大きさや携帯性だけではない。高性能で不満がない。作画用カメラとして十分使える機種がいくつかある。これに気がついたのは、オリンパスSP-350を使ったときだ。それ以来、XZ-1、XZ-2、スタイラス1(最近購入)と使い続けてきた。いずれも作画用カメラとして信頼している。オリンパスXZ-2の性能について、私のカメラワークにかかわるスペックを、XZ-1と比較しながらレポートする。

【レンズの基本性能】 レンズは、XZ-1と同じズイコーデジタル4倍オプティカルズームED 6~24ミリF1.8~2.5で、シャープさは変わらない。大口径レンズなので、コンパクトカメラの割には、ボケ味を楽しめる。しかし、私はボケ味、特に大ボケにはほとんど関心がない。焦点距離は、35ミリ判換算で28~112ミリである。4倍ズームだが、これに2倍のデジタル・テレコン機能があり、35ミリ判換算224ミリの望遠撮影まで可能だ。

【デジタル・テレコン】 2倍のデジタル・テレコンが採用されている。デジタルズームと何が違うのだろうか。一般に、デジタルカメラに採用されているデジタルズームは、ズーミングするとレンズの焦点距離を変えずに撮像素子(フィルム)の有効画面をHppc300587小さくして画角を狭くしている。 すなわち、望遠画角になるほど撮像素子の有効画面は小さくなるので、画素数が少なくなり画質は低下する。ところが2倍のデジタル・テレコンは、テレコンモードにすると、撮像素子の有効画面は中央部の1/2(面積で1/4)になる。しかし、少なくなった画素数を補間技術でカバーするので有効画素数は、いつも一定である。装着レンズの中央部の画質が高ければ、画質低下は少ない。実際に撮影してみると、通常モード(テレコンモードを解除)ほどのシャープさはないが、かなり使えそうだ。 (写真上右はデジタル・テレコン使用時の写真。35ミリ判換算約224ミリ)

【35点フォーカス・ターゲット・フレーム】 AFのフォーカス・ターゲット(フォーカス・フレーム)は、画面内に35点(縦5列×横7列)を配置してある(写真下左)。XZ-1が7点だったのでターゲットは5倍に増えた。Hp_xz2p6170976 そのぶん画面内で細かにターゲットを移動できる。また、ターゲットフレームが小さいので、被写体の狭い範囲をきめ細かにAF測距できる。「フレーミング⇒ピント合わせを合わせながらシャッターチャンスを待つ」という撮影手順をより正確にできる理想的なAFカメラだ。なお、デジタル・テレコン使用時には5点の大きなターゲットになる。

【二つになったAFモード】 XZ-1のAFモードは「S-AF」「マクロ」「スーパーマクロ」の3モードだった。ところが、XZ-2は「S-AF」と「スーパーマクロ」の2モードだ(写真下左)。ズーム全域でマクロ撮影ができる「マクロモード」が「S-AF」に取り込まれたことになる。Hp_afp1160007_3 Hpp8176960_2 それだけ、S-AFの近距離性能が高くなるうえに操作がシンプルになる。なお、「スーパーマクロ」モードでは広角6ミリ(35ミリ判換算28ミリ)に固定される。すなわち広角マクロになる。広角域でレンズ先端から1センチの距離にピントが合いうのは、私のカメラワークにとってうれしいかぎりだ。人間の視覚を超越した画像が撮れる(写真上右)。オリンパスXZ-1、XZ-2、スタイラス1のAF、特にマクロ撮影の性能はかなり高いと思う。また、ライブビュー撮影でのタイムラグはほとんど感じない。これは、私がカメラワークに習熟したせいかもしれない。

【±3.0EV露出補正】 XZ-2では露出補正幅が、従来の±2.0EVから±3.0EV拡大した。露出補正は作品のイメージにかかわるので重要なスペックだ。Hpp1160013_2 デジタルカメラでは、露出補正の結果がその場でわかるので、利用価値はますます高い。私は、マイナス補正を多用する。疑似夜景には-2EVでは足りないことがよくある。

【可動式液晶モニター】  私はローポジション撮影が好きだ。ローポジションやローアングルで植物や昆虫などと対等になって付き合いたいのだ。植物目線、昆虫目線になるには、ローポジションとローアングル機能は欠かせない。これに応えてくれるのが可動式液晶モニターだ。専用の電子ビューファインダーがローポジション用のファインダーとして使えるが、目をファインダーに近づけなければならないので、可動式液晶と比べると操作性は劣る。Hpp1180271_2 なお、タテ位置撮影には対応していないが、アスペクト比を1:1や4:3に設定してヨコ位置で撮影し、パソコンでタテ位置にトリミングすればよい。ライブビュー撮影についてひと言触れておこう。「明るいところでは見にくい」とか、「老眼なのではっきり見えない」という不満をよく聞く。しかし、これはファインダーの使い方を理解していないと言える。撮影時の被写体観察は、ドライバーの運転視界に似ている。被写体の主要部を観察しながら、一方でフレーム内全体を隅々まで見渡すことが重要だ。このようなファインダーと目の使い方には、液晶モニターのほうがむいている。また、撮影の機動性という点でも液晶モニターのほうが上だ。ある被写体を見つけたとしよう。とっさにカメラを構え顔にカメラを近づけファインダーをのぞき、フレーミングするまでの時間と、カメラをホールドして液晶モニターを見るまでの時間では、明らかに後者のほうが早いだろう。液晶モニターは、斜めからでも十分見える。これでも、シャッターチャンスの勘所はわかるものだ。実際、私も老眼であり視力は低い。しかし、慣れてくると液晶モニターのほうが使いやすい。現実に、多くの新世代カメラマンはライブビュー撮影をしている。視力や好みにもよるが、ライブビュー撮影のメリットを強調しておきたい。

【ファンクション・ボタン】 Fnと表示された二つのボタンが装備された。それぞれのボタンに緊急性を要する機能を付与しておくと、とっさのときにすぐ呼び出せる。Hpfn1p1160016_2 Fn1ボタン(ボディ前面)には7項目の機能を、Fn2ボタン(ボディ背面)には16項目の機能を付与できる。ボタンを押すたびに機能が変わり選択できる。Hp_xz2p_f21160028_2 Fn2ボタンは、ユーザーのカメラワークに合わせて最優先の機能を選べるようロックできる。私は、Fn1ボタンには「デジタル・テレコン」を、Fn2ボタンには「ホワイトバランス切り替え」⇒「AFモード切り替え」⇒「NDフィルターON/OFF」を付与(設定)している。

【解像度の向上】 JPEG最高画像のサイズが拡大し、圧縮が緩和され、解像度が314(3648×2736)から350(3968×2976)に変わった。Hp_xz2p1160021_3 Hp_xz1p1160019_2表示ではLFからLSFへ。それだけ画質が向上したことになる。

【グリップ】 XZ-1にはグリップらしきものはなかった。わずかにボディ背面に小さな滑り止めがついていた。カメラ・ホールディングは明らかにしにくかった。ファッション性を追求するカメラとして設計されていた。XZ-2では、前面に一人前のグリップが付いている。背面にも突起の付いた滑り止めがある。ホールディングは大きく改善された。本格的な作画用カメラになったと言えるだろう。 (写真上 XZ-2<左>とXZ-1<右>のボディ前面比較)Hpp1180241_2

【大きさ・重さ】 ボディはひとまわり大きくなったように見える。グリップと可動式液晶のおかげだ。厚さが約6ミリ増えた以外はわずかな変化だ。重さはXZ-1が275グラム、XZ-2が346グラム。Hpp1180251_4 約25パーセント増だが、コンパクトカメラとしては“ずしり”とした感じがする。これを高級感とも言ってもよいが、もっと軽いほうが良い。機能はともかく写りに変わりのないXZ-1の存在感を感じる。カメラマン・コバックだったらどちらを選ぶだろうか? (写真上 XZ-2<左>とXZ-1<右>のボディ上面比較)

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2013/10/13

仲秋の風物詩 八ヶ岳山麓No.156

標高1400メートルの森のようす…コンパクトカメラシリーズ52
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 オリンパスXZ-2をもって秋の森へ入った。XZ-2はどんな被写体にも対応できる。マクロ撮影はもっとも得意とするところだし、望遠撮影にはデジタルテレコンが威力を発揮する。光学4倍ズームに2倍のデジタルテレコンが機能して8倍ズームになる。画素数を変えずに35ミリ判換算230ミリの望遠画角をカバーできる。ローアングル用の可動液晶パネルと相まって、カメラポジションと画角の調節には不自由を感じない。使いごこちが快適で、撮影がおもしろくてしょうがない。自然の探索、発見、記録には絶好だ。紅葉前の森で、秋の風物詩を探した。なお、標高1400メートルでは、紅葉のシーズンはあと10日ぐらい先になるだろう。(写真下 オリンパスXZ-2。左は使用状態で、レンズ鏡胴前端にUVフィルターを付けた豊田ヴァージョン。右は レンズを収納した状態)Hpxz2_pa157953_2Hpxz2pa157954_2

 




◇テンナンショウ
の果実。森の中では異彩を放つ(写真最上左)

18センチのイワナ。今年の納竿は9月28日、16時56分だった(下左) ◇ベニテングダケの老菌を見つけた(下右)Hpp9288178_2Hpp9288136_2

初めてミヤマダイコクコガネを見て感激した(下左) 完熟したナナカマドの果実。ルビーのように透きとおっていた(下右)Hppa038749Hpp9277894

夕方、固く閉じたリンドウのつぼみ。日中は開花していた(下左) 左の花の10日後。日陰で開花していたが、色褪せていた(下右)Hppa038900Hppa139535

物騒な?トリカブト(下左) こびとの世界を想像させるパラソル型のキノコ。同定不詳(下右)Hppa028449Hppa028710

新しく作った餌台にゴジュウカラがやって来た。自然界に餌になる昆虫が少なくなったのだろう。冬が間近に迫っている(下)Hppa139508_2

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