2016/12/14

2016年12月上旬の高原のようす 八ヶ岳山麓No.204

兵どもが夢の跡Hppc120103

 私たちの山小屋がある川上村は、『野菜王国』を自称している。キャッチコピーには『高冷不毛の寒村からレタス生産量日本一の高原野菜立村へ』(川上村誌 通史編 現代より)と書かれている(写真左)。しかし、野菜王国に上りつめるには並大抵の苦労ではなかったようだ。Hp1253pc050006_edited1

 川上村誌 通史編 現代 近現代概説(写真右) 第三章 第三節「野菜」に10項にわたって、野菜王国への経緯が記されている。第9項の「野菜産業」によると、川上の農業を企業経営として確立しようという意図が感じられる。Hppc120150_2例えば、昭和63年(1988年)に掲げた基本方針には、「ニーズに対応した本物づくり」「ブランドの確立」「先端技術に対応」「農家の経営基盤の強化」「農業者の健康管理と後継者の確保」「魅力ある農村づくり」など優良企業を目ざした方針だ。企業イメージ、社員の福利厚生などに配慮した会社組織に匹敵した取り組みだ。
 同年1月には、村営有線テレビ局を開局、7月からは村民向け野菜市況速報の放送を開始した。平成3年(1991年)村内に設けた観測地点のデータを活用して詳細な天候の予測情報を流し、野菜生産の一助とした。そのほか、機械化やポリマルチの採用、農薬散布の適正化、など栽培技術の向上に努め、平成5年(1993年)には、村内3農協の販売総額は200億円に達し、過去最高を記録したという。

 一般に、農業は加重労働を強いられる。レタスなどの生鮮野菜もご多聞にもれず、たいへんだ。私の観察では、出荷が最もたいへんに見える。Hppc070262_2Hppc070266_2ばしば、早朝3時前に電灯を付けて作業している現場を見たことがある。「朝採り」で消費者へ提供するためだろうか。私たちには深夜の時間帯に仕事をしているのである。Hppc070207出荷作業が一段落して、朝日を浴びながら畑で朝食をとる農家の団らん風景を見ると、何かうれしさが込み上げてくる。夜から早朝にかけて出荷作業に取り組む人々の姿には、どこか共感できる。むかし、編集部で仕事をしていた時を思い出すからだ。徹夜の校了日に朝日のまぶしさに、何とも言えない満足感を感じたものだ。Hp127pc070334どんなに過酷な労働でも、収益が上がればやりがいがあるだろう。

 12月に入って、気温が急に下がった。12月7日の最低気温は、マイナス8.5度C(写真左 最高最低温度計を夕方に撮影)。就寝中は電気毛布を使わないと足が温まらない。昔は電気毛布などは使わなかった。10度C以下の布団に入ってもすぐ眠れたのだが。本格的な冬に入った八ヶ岳山麓の情景を紹介しよう。(写真上は12月5日の八ヶ岳。根雪が付き冬の厳しさが出てきた)

●冬の畑に残された野菜を見ると、まさに「兵どもが夢の跡」である(写真上3点 ハクサイとブロッコリー)

●ボタンズルのドライフラワー。逆光で異常に輝いている(写真下右)Hppc070220

●ヤドリギ。落葉樹の枝に寄生する植物だ。ヨーロッパでは、果実のついた枝をクリスマスの飾りとして使うHppc070275_edited1

●クレソン。冬枯れの中に青々とした葉を見るとホッとする。採取して食卓に供した(写真下)Hppc070295

●山小屋のベランダにやってくる野鳥たち。今年は、水浴び場を用意した。朝、雨戸を開けると、ヒマワリの種をねだりに来る
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2016/12/02

感動の大原治雄ブラジル展

『ブラジルの光、家族の風景』

 去る11月16日、清里フォトアートミュージアム(K★MoPA)へ、大原治雄展を鑑賞に出かけた。パンフレット(写真右下2点)だけの予備知識で出かけたのだが、素晴らしい写真展だった。どうしても書かずにはいられない衝動にかられ、遅ればせながら執筆した。同展は12月4日(日)までだ。 http://www.kmopa.com/

 Hpp1img大原治雄氏(1909~1999)は、高知県生まれのブラジル移民である。写真家である前に移民としての多くの蓄積があった。写真を始めたのは、24歳で結婚したときからだという。家族の写真を撮ろうとしたきっけは、これから始まる一族の壮大なドラマを予感して記録しようとしたのか、カメラに興味を持ちはじめたのか、写真のテクニックに引かれたのか、私は、これらすべてではなかったかと推測した。大原氏の胸の内を図ることはできないが、彼の移民としての経験が反映したことは間違いあるまい。移民としてブラジル・パラナ州ロンドリーナを開拓するという、無から有を生ずるような過酷な生き方に立ち向かい、それにめどが立ったときに、所帯を持ち、何か一つのことに打ち込んでみたいというのは、自然な心の動きではないだろか。Hpp2img未開の大地を農園にするまでには、並々ならぬ苦労があったようだ。

 大原氏の写真の傾向や作風について感じたことに触れよう。『ブラジルの光、家族の風景』というタイトルがついているが、まず、自身のセルフポートレートが目立つ。これは何を意味するのだろうか。私には、家族の始まりは、自身 大原治雄であるということを伝えたいのではないか。現在、70人を超す大家族となった大原家の元は大原治雄であることはまちがいない。たくさんの子どもや配偶者、孫の写真の中に、ときどき大原自身のポートレートが散りばめられている。これほど多くのセルフポートレートが目だつ写真展は見たことがない。私が最も気に入ったセルフポートレートは、最初の壁面に飾ってあった1点だ。木に寄りかかり、足を投げだして座っている足元にコーヒーポッドが置かれている。大原氏の顔はフレーミングの中にはない。背中と左腕の一部が写っているだけだ。タイトルは、確か『休憩』か『休息』だったと記憶している。私は、このシーンの大原氏に感情移入することができる。顔をみせずに自身の休憩時間を表現しようという、この写真のモチーフに共感する。多様なセルフポートレートと写真展での公表は、私もまねしたいと思った。

 カメラを手にしたときには、過酷な開拓の時期はすでに終わっていたのかもしれないが、彼の作品には、労働の厳しさや不安な気持ちは写っていない。おそらく撮影はしたが、作品展には展示しなかったのであろう。家族の幸せとブラジルの大地を讃えたいという意図のもとに写真展は編集されていると思う。移民という日本国を代表した親善使節の役割を思えば、当然な編集意図だろう。『霜害の後のコーヒー農園』という作品があった。胸高直径2メートル以上もある巨木の切り株の上に二人の男が乗り、周囲を見渡しているスナップような記念写真である。霜害といえば、農業に従事する人にとっては深刻な事態だろう。この状況下で、かつて切り倒したであろう大木の上に立って、お山の大将のようにふるまっているのは、いったいどんな心境なのだろうか。霜害の実情を示す写真は簡単に撮れるはずだ。この写真が、大原治雄氏の写真観を象徴した作品ではないか。前述のセルフポートレートといい、霜害の写真といい、婉曲的に表現しようとしていると思う。

 シルエットと陰影を生かした作品が目立つ。タイトルの『ブラジルの光、家族の風景』のとおり、光のモチーフを多用している。ちなみに、シルエットも陰影も光のモチーフに属する。Hp4img_0004パンフレットの表紙を構成する2点の作品は、シルエットの写真だ。どちらも、背景の空が美しく、人物は大地と一体になってシルエットになっている。解説書の4ページ目『本展のみどころ』(写真左)には、『ブラジルの大地を切り開いたからこそ現れた「空」と「水平線」であり、大原はこのモチーフを繰り返し撮影しています』とある。パンフレット上段の写真の人物は大原氏だという。『苦難の日々を乗り越えた喜びに溢れる姿ですが、大原自身は画面右端に立っていることから、この写真の主役がブラジルの大地と空であることがわかります』。シルエットのテクニックを生かしたセルフポートレートである。

 最後の入出口に近い壁面には、パターン写真が展示されていた。草花や納屋の片隅に見つけた農機具などをパターン化した作品群だ。モノクロ写真なので、当然、ブラジルの光と陰影を生かした作品だ。大原氏のカメラアイの一端を知ることができた。

 大原氏の孫の一人が写真家になっている。サウロ・ハルオ・オオハラ氏が撮影した大原治雄氏のスナップが展示されていた。 ベットに腰かけている晩年の姿だ。ものさびしそうに見えるが、孫に撮影されている幸福感も読み取れた。私も写真家の端くれなので、うらやましく感じた。

 私は、鑑賞し終わったとき、大河ドラマを見たような気がした。そして、写真にもこのようなスケールの大きい表現が可能だということを知った。今までは、写真は映画や音楽にはかなわないと思っていたが、決してそのようなことはないと確信した。Hppb160141_edited2
 なお、サウロ・ハルオ・オオハラ氏が、祖父の故郷・高知県を訪れたときに撮り下ろした『Aurora de Reencontro 再会の夜明け』展も同館で展示されている。参照:田園の誘惑

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2016/10/30

2016年千葉大学スキー部OB会

築地・江戸銀で開催…フォト・アルバム

 今年の大OB会は、10月16日に「築地・江戸銀」で開催された。Hppa169007
 千葉大スキー部OB会は二つある。一つは、発足当時の中高年メンバーだけで構成されたOB会である。もう一つは、現在も新会員が毎年入会してくる現役スキー部に支えられたOB会だ。前者を「大OB会」とするなら、後者を「正OB会」と呼ぶべきだろう。もちろん、大OB会のメンバーは、正OB会のメンバーでもある。

 約50年前、卒業したスキー部員の有志が集まり、ホームゲレンデである妙高高原に山小屋を建てた。将来にわたってスキーのトレーニングと親交を深めたいという希望を実現したものだった。そのメンバーが中心になって大OB会が結成され、現在も続いている。合宿やスキーツアーなどで、同じ釜の飯を食った仲間だけに、深い親交と硬い信頼で結ばれている。私にとって大OB会は、いまや心の糧である。Hppa169024

 江戸銀は、築地場外にある。築地場内市場の移転が問題になっているが、場外市場はほとんど残るらしい。それは当然だろう。築地というブランドは大きい。最近、我が生活圏内にできた2件の寿司屋の店名にも、築地という字が冠に乗っている。築地と聞いただけで、新鮮と伝統のようなものを感じる。簡単に離れることはできない土地である。

 築地・江戸銀の創業は大正13年(1924年)である。大OB会の倍のキャリアを誇る。料理はすべておいしかった。また、店員の気持ち良い対応はさすがだった。おかげで、年に一度の親睦会を愉快に過ごすことができた。当日の模様をフォト・アルバムとして掲載する。

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●T氏とF氏が、富良野スキーツアーの思い出話に火を付けた。当時のプリントを見ながら盛り上がった(写真上)

Hppa169035_2Hppa169039Hppa169043Hppa169114●おいしい料理に満足。 お造り、フグのから揚げ、手長海老のから揚げ、握り寿司など(写真上)

Hpimg_edited1Hppa169127●会場での記念撮影。仲居さんにカメラの使い方を指導するK氏(写真上)

Hp2pa169133●記念撮影は、屋外でも行われた

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2016/09/18

秋の探訪 八ヶ岳山麓No.202

〔キノコがいっぱい〕 9月16日、山小屋の最低気温は14度C、正午の気温が18度Cだった。秋が深まりつつあるが、まだ寒さを感じない。Hpp9140345_2山小屋周辺の林床は、いたるところにキノコが発生している。雨が多いからだろか。ここ2、3日はキノコの撮影に終始したすべてオリンパス スタイラス1sで撮影した。Hpp9150588Hpp9140336_2





   

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〔パスタが美味い〕
 ランチを食べに清里へ出かけた。清里へ出かけるときは、ほとんどMoRimoTo(モリモト)のパスタを食べることにしている。以前にも書いたように、私はもともとパスタは口に合わなかったので、はじめは家内を立てて出かけていた。しかし、このごろは率先してパスタにしている。MoRimoToのパスタは、実に美味い。私の舌は贅沢にできているのか、どんな食べ物でも、食べている途中から飽きてしまう。ところがMoRimoToのパスタは、途中から味が変わったかのように美味くなる。

 今日は、『ホタテとオクラのオイルベース カラスミ添え』にした。前菜は、無農薬ニンジンのスープ、自家製ハムとレタスのサラダ、Hp201609162040000
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清里サーモンのカルパッチョ。ニンジンのスープは格別だった。前菜とコーヒー(ドリンク)付き1,500円(写真参照 ケイタイで撮影)

〔シカを観察〕 シカの展望台(シーニックデッキ)へ行くと、たくさんのシカが出ていた。舞台裏から登場するもの、左の“袖”へ隠れるもなど“ステージ”は、にぎわっていた。Hpp9160796P9160807_3
Hpp9160812珍しく大きな角のあるオスジカがいた。角が重そうな素振りだった。シカたちのパーティーか集会があるように見えた。オリンパス スタイラス1sのデジタルテレコン(600ミリ)で撮影した。

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2016/05/25

白い森 八ヶ岳山麓No.197

ズミが数年に一度の大満開…フォトアルバム
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Hpp5250167_2 今年は、いろいろな自然界の異変がある。ズミの満開もその一つだ。これほどまでに、山小屋の周辺にズミの木があったとは気づかなかった。それほど花が目だつのだ。Hpp5240293_6Hpap5225838_edited1_3全体が白く見えるほどの咲きぐあいだ。しかも、花期が10日以上早い。周辺に住んでいる方によると、6年ぐらい前にもこのような状態があったという。Hpp5225644Hp_p5235959は、もう30年以上山小屋に通っているが、今まで見たことがない。過去にはタイミングが合わなかったということらしい。

 ズミは、バラ科リンゴ属の落葉小高木~高木だ。果実は、紅色と黄色があるので、種が異なるのかもしれない。花の付き方や葉の出方に、微妙な違いがある。満開の森の中には、杏仁(アンニン)豆腐の香りが漂う。家内によると、以前、果実の種を噛んだとき、杏仁豆腐の香りがしたという。もちろん果実酒も作れる。

 ドイツに「黒い森」(Schwarzwald シュバルツバルト)というのがあるが、山小屋周辺は、まさに「白い森」といった趣だ。Hpp5240206_2森の中は、ファンタスティクである。日中の日差しの下では華やかだが、夕刻や曇天時には幽玄になる。色温度を調節して、夜の白い森を演出してみた。Hpp5240206_3

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2016/04/15

ドイツよりドイツ的なつばめグリル ドイツNo.143

 エルディンガーのヴァイスビールを飲んで、ニシンの酢漬けを食べると、ハンブルグ港のカモメの鳴き声が聞こえてきた。今日は、デザートも。つばめグリルのイチゴのベイクドチーズケーキはドイツのよりおいしい。(携帯電話で撮影)201604151813000_3
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2015/12/10

写真家・田中宏明氏のご逝去を悼む

『乙女富士 一年三百六十六変化』

 英国王写真協会日本支部の知友、田中宏明氏が今年の11月10日に亡くなられた。生前を偲んで弔意を表したい。

 撮影活動にはいろいろなスタイルがあるが、定点観測撮影もその一つだ。写真家・田中宏明氏の写真集『乙女富士 一年三百六十六変化』は定点撮影の典型だろう。Hppc180170_edited2_2田中氏は、箱根外輪山の乙女峠から撮影した富士山を1年366日分集めて一冊の写真集にまとめた。私の拙文が、前書きとして採用された。田中氏の自宅を訪問したときのレポートで、英国王立写真協会日本支部(RPSJ)のブログのために執筆したものだ。その一部を掲載して弔意文に代えたい。なお、一部リライトしている。

 「………。はじめにもてなしていただいたのは、抹茶だった。これは、田中宏明会員のパーソナリティーを表している。田中会員(以下さん付けで呼ばせていただく)は風流人である。しかし、武道家でもあり板前でもある。田中さんの原点は柔道であるという。4歳ごろから柔道を始め、厳しく鍛えられた。しばしば竹刀でたたかれたという。大病を患ってはいるが、いまだ風貌は武道家である。」

 「箱根のある保養所の管理を任され、たくさんの調理を経験した。Hp_3そこで、“景観料理”という新境地を切り開いた。これは、板前の本分である盛り付けで、いろいろな風情を表現するというものだ。日本の節句(季節感)や都道府県の代表的な風景などを皿の上に再現するのである。これを撮影した“景観写真”もいままでにないカテゴリーだろう。どちらも、制作にとりかかる前にデッサンを描き構想を練る。『七夕』と『秋田県米代川』のデッサンを見せていただいた。2月(2010年)に開催した第8回英国王立写真協会日本支部展(「The New Horizon」≪新たな展望≫をテーマとした)に出展した景観写真は、葛飾北斎の絵をモチーフにした『北斎』と節句シリーズの『端午の節句』の2点だった。」

 「田中さんの代表作は、『乙女富士 一年三百六十六変化』である。箱根の乙女峠から定点観測して撮影した富士山の作品群だ。『三百六十六日』は、一年をうるう年でカウントしているからだ。『変化』はへんげと読む。霊魂や神仏が人などの姿になって現れることを意味する。タイトルの意味は、富士山が366の姿になって現れるという意味だろう。コンタクトプリントのように構成されたアルバムを見せていただいた。Hp12pc180174ときどき同行される奥さまからうかがったところ、どんなに寒くても、暗いときでも、田中さんは車の外でシャッターチャンスを待つという。筆者も氷点下で富士山を撮影したことがあるが、シャッターチャンスを待つときは車中で過ごす。ほとんどの写真家はそうである。氷点下でシャッターをきらずにチャンスを待つのはつらい。しかし、田中さんにとっては、被写体である富士山を前にして車外でシャッターチャンスを待つことは意義があるのであろう。被写体と対峙するときの緊張感は筆者にもわかるが、田中さんの真意はわからない。おそらく、武道家としての真骨頂が現れているのではないだろうか。こうして完成されたのが『乙女富士 一年三百六十六変化』である。だれも取り組んだことのない大作だろう。」 (写真左上 12月の見開きページ)

 富士山が世界自然遺産となったいま、写真集『乙女富士 一年三百六十六変化』は偉大な文化遺産となったのではないか。

 「田中さんによると、戦国時代、武士は出陣に備え主君より一服の茶を進呈されたという。いざ出陣は、『いざ撮影』に通じるところがあるのかもしれない。写真を侘茶と融合させたところに田中写真の心髄がある。」

 田中宏明さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。

参照:RPSJリレートーク『写真撮影は心に汗をかくこと』

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2015/11/18

『色は何を語る』 11月25日 15:00まで

第10回 シャトロー会 写真展

会期:2015年11月19日(木)~11月25日(水) 平日10:00~18:00 土曜11:00~17:00 日曜休館 祭日(23日)10:00~18:00 最終日10:00~15:00
会場:フォトギャラリー キタムラ(DMのポップアップ参照)Hp_dmimg_0001_2_edited1
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 以下に会場のあいさつ文を掲載する。

『色は何を語る』
 写真がモノクロからカラーに替わって数十年が経ちました。しかし、撮影で私たちはどれだけ色を意識しているでしょうか。どんな被写体にも色があり、無意識に写ってしまうので、色がもっている本来の情報を見落としているのではないでしょうか。色は本来、いろいろな情感や状況を表します。暖色/寒色、保護色/威嚇色、純色/中間色などの区分けがあり、あいまいな中間色には、アースカラー、パステルカラー、迷彩色などの名まえを付けて、他と区別しています。一方、顔色、声色、才色、反省の色など、人の表情の変化を色にたとえます。
 カラー写真は、あきらかにモノクロ写真にはない情報をもち、それを伝達しています。そこで、シャトロー会は、色がモチーフ(主役や脇役)になる写真を撮影し、 『人が色に託したこと』『自然からのメッセージ』の二つに分けて展示してみました。私たちが選んだ色をご高覧いただけたら幸いです。
       2015年11月19日   シャトロー会一同

目の進化と色知覚
 私たちは、外界から得られる情報の80パーセントを目(視覚)から得ているといわれる。残りの20パーセントが耳(聴覚)や鼻(嗅覚)や口(味覚)、肌(触覚)を使って得ている。目から入ってくる情報には、明るさ、形、動き、奥行き、色などがあり、いずれも人類が生活するために必要な情報である。生活とは、生きるため、子孫繁栄のためと言い換えてもよいだろう。
 さかのぼって目の進化をたどってみると、まず明るさに対応した。明るさで外界の変化を知った。Hpimg_33201x次ぎに線や形、動きを知覚し、餌なのか天敵なのかを区別できるようになった。奥行きは餌や危険物への距離を知るのに役立つ。原始的な生物や下等動物の目はこのように進化してきたと考えられる。
 人類(霊長類)は、森の中で木の実を探して食べる採集生活になった。そのために、木の実は食べられるか否か、美味しいかまずいか、などを判定できるような目が必要になった。そのために、青、緑、赤の3色に感度をもった目(3錐体型)へと進化した。この3色で、可視光のすべての色を知覚・判別できる。狩猟生活になって、色にたいする知覚はそれほど高度なものを要求しなくなったようだ。むしろ動きに対する感度が求められた。
 しかし、人類文明が高度に発達して、また高度な色の知覚が必要になる。人の表情を読むのに色の知覚が重要になる。上気したり恥ずかしがると顔は赤くなる。また、恐怖を感じたり寒気を感じると顔は青白くなる。高度な人間関係は顔色をうかがうことで成り立つ。野菜や魚が新鮮か腐っているかの判定にも3錐体型色知覚が不可欠だ。いうまでもなく、絵画や写真などの視覚芸術は色による表現は欠かせない。採集生活を支えるための色知覚が、文化としての色知覚へと変わった。現代の人類は、高度な色知覚で情報や情緒を伝達しているのである。

 私は、『人が色に託したこと』のカテゴリーへ2点出品した。 『レインボー (写真下左)はパリの市庁舎前の広場で出会ったシャボン玉の大道芸だ。Hp12p6010446_2シャボン玉は薄膜でできているので、膜の表と裏で反射した白色光が干渉して色光になる。いろいろな色が見えるのは、膜の厚さが変化するからだ。レンズのマルチコーティングと同じ原理である。シャボン玉の魅力は自在に変わる形と色ではないか。 『ミルキーウェイ』 (写真下右)は、横浜MM21のイルミネーションを二重露出したもの。Hp16b_pc080043カメラアングルを調節し、ボケ像を重ねて奥行き感を出した。イルミネーションは、色で人々の気持ちをとらえる典型ではないか。

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2015/10/11

キノコの家族 八ヶ岳山麓No.184

価値ある分解者の存在Hpp9160140

 私はキノコが好きだ。まず形がおもしろい。種による違い、個体差など、さまざまな形は、ドラマチックであり、メルヘンチックであり、神秘的だ。そして、短時間(1日単位)でその形を変える、変身術の見事さにも驚く。老若(老菌と幼菌)の違いは、人間のライフステージの縮図のようだ。老菌は何の跡形もなく消えてゆく。理想的な生き方ではないか。

 植物が作った葉や茎、木質にはセルロースが含まれている。セルロースは植物体の細胞膜の主成分で、繊維素ともいわれ、物理的にも化学的にも強靭な特性をもっている。その特性を利用して、人類は紙や紐の原料にしたり、セロハン、アセテートなど繊維を作っている。しかし、人間がすべてのセルロースを消費しているわけではない。植物の成長や時間ともに地球上には落ち葉や朽ち木としてセルロースが年々蓄積していく。このままでは、地球上はセルロースでいっぱいになってしまう。

 さて、キノコは菌類といわれ、森の清掃者ともいわれる。森の中で、ある種の菌類は落ち葉や朽ち木(セルロース)を分解して、菌糸を作りキノコを構成する。キノコは腐りやすいので、自然界で腐敗分解し、土壌のとけ込み肥料となる。同時に、キノコは人を含む従属栄養生物の餌になる。一方、ミミズやムカデなどの土壌生物も落ち葉や小枝を食べてセルロースの分解に一役買っている。肥沃な土壌にはミミズやムカデがたくさんいるといわれるゆえんだ。森の中でセルロース(落ち葉や朽ち木)があふれないのはキノコと土壌生物のおかげである。すなわち、キノコと土壌生物は、森の清掃者ということになる。

 生物の『三界説』というのがある。地球上の生物の進化を把握するために生物を『植物界(生産者)』『動物界(消費者)』『菌界(分解者)』の三つに分類しようという考え方だ。また、『五界説』というのもある。こちらは『モネラ界(原核生物 細菌や藍藻類など)』『原生生物界(単細胞生物 ミドリムシや鞭毛虫類など)』『植物界(緑色植物など)』『菌界(キノコ類)』『動物界』の五つに生物を分類している。ここで、注目しなければならないのは、どちらの説にも分解者としての菌界があることだ。菌類(キノコ)は、地球の進化にとって欠かせない存在であったということだ(以上は、概観的な解説であることをご容赦いただきたい)。この事実を知ると、ますますキノコが好きになる。この秋撮影したキノコの一部を人間関係に当てはめてみた。森の中で果たす役割について併せ考えてみたい。

●恋人同士 カラカサタケの成菌と幼菌。親子というより恋人同士のようなほほえましさを感じた (写真最上段)

●孫と祖父母 老菌のようすをみるとこのように感じたが…。キノコの同定は不詳 (写真下)Hpp9210302
●大家族 最近、都会ではめったに見られないのではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hppa090301

●5人兄妹 仲の良い兄妹のようだ。うらやましい家族ではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hp5p9220287_edited1

●老カップル ニセショウロ科の老菌。撮影後、たたいてみたら胞子が出てきた。まだ元気いっぱいだ (写真下)Hppa090593

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2015/04/15

2015年4月中旬の森のようす 八ヶ岳山麓No.174

八ヶ岳山麓で春の息吹を感じるHpp4147940

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 Hpp41479214月13日は、朝、雨からみぞれに変わり、すぐ雪に変わった。山麓には珍しい大きな牡丹雪が降り、みるみるにうちに枯草の地面は真っ白になった。しかし、夜の雨で、翌朝にはほぼ融けていた。Hpp4147942ギョウジャニンニクの若葉が濡れて青々としている。カタクリの花芽も元気いっぱいだ。おそい八ヶ岳山麓の春の息吹を撮影した。

 14日は、撮影後、清里のレストラン「MoRimoTo」(モリモト)へランチに出かけた。モリモトは、パスタと肴を売りにした店で、パスタは格別に美味い。パスタが苦手な私にも十分満足できる。ランチには、しばしば季節の素材を生かしたメニューがある。私たちは、「筍とエビのパスタ」をオーダーしたHpp4147998_2Hpp4148005_4Hpp4148010_3イルベースの味で、旬を堪能した。前菜とコーヒーがセットで1,500円だ。夜は、パブになるらしい。シェフは楽器を演奏する。

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