2019/03/17

第17回 ヌービック・フォト・フレンズ 5 写真展

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2019年ヌービック写真展は
3月26日(火)から開催
 

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 今年から、大澤聡氏をコーチに迎えての開催だ。大澤氏は、元日本カメラの別冊編集長だ。毎回、テーマを厳しく追求してきたヌービックにとって、大澤氏は、まさに“傾蓋、旧の如し”といった関係になるのではないか。これからは、“管鮑之交”になって、ますますテーマを追求してほしいものだ。以下に、あいさつ文(下図左)と作品一覧(下図右)を掲載する。ご高覧いただけたら幸いだ。なお、図はポップアップする

 

 さて私は、雪のカテゴリーに2点出品させていただいた。どちらも、2月の川上村の雪景色だ。気温が低いので、雪は軽くさらさらしている。『泡 雪』は形がモチーフの写真だ。枯草のカーブが、積。もった雪で折れそうで折れないところに微妙なバランスを保っている。『春を待つ』は、花芽という春のモチーフに雪という冬のモチーフを重ね、時間のモチーフを構成している。季節感を表現するには、またがる二つ以上の季節要素で画面を構成することが常道だ。

本写真展は毎回、写真集を制作している。今回もA5判、4C、36ページの写真集を作った(写真右参照)。これは、アマチュアのグループ展では大変珍しいことであり、理想的なスタイルだ。

『豊田芳州のTheme』に掲載された写真と文章は、著作権法で保護されています。無断使用はご遠慮ください。All pictures and writings on this blog are copyrighted.

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2018/12/26

山麓で過ごすクリスマス 八ヶ岳山麓No.209

Hpa0012222 1224日は、前日とは打って変わって寒くなった。標高1400メートルの高原は、最低気温がマイナス4C(写真下右)、一日中氷点下だった。朝目覚めて雨戸を開けると薄っすらと雪が積もっていた。クリスマスツリーのモミの木にも雪がつもっていた。ホワイトクリスマを予感させた(写真右は八ヶ岳の主峰赤岳)

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 冬の森は閑散としている。庭に残ているのはノリウツギのドライフラワーぐらいのものだ。クリスマスローズが1輪咲いている。ほかにつぼみが二つ、花に従うように並んであった(写真下左)。クリスマウローズは、氷点下の森のなかでも平気なのだ。草花の多様性に改めて感心させられた。シイタケができていた。寒さを予測して榾木にビニールシートをかけておいたのが良かったようだ(写真上右、同下右)。
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 我が家では、山小屋を建てて2~3年ぐらいして植えたモミの木をツリーにしている。高さは5メートルに達したろうか。もう3~4年もそのままつ使っている。(写真上はモミの木に積もった雪、同右は野鳥の水浴び用に準備した水が凍ったもの

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 買い物に出かける途中で、清里のモリモトに寄ってランチを食べた。モリモトはクリスマスの特別ランチのメニューで前菜の内容が、いつもより一品多くならんでいた(写真上左は前菜、同上右がパスタ)。私たちは“浅尾大根と無添加エビのパスタ、カラスミがけ”を食べた。あいかわらず素材の特長が生きていてとてもおいしい。なお、浅尾大根とは、隣町の明野村(地区)にある浅尾というところが産地の大根のことだ。モリモトのパスタは産地名をはっきりと表示している。それだけ自信をもち、洗練された味を出している。なにしろ素材の味が、いつもはっきりと感じられるのがモリモトのパスタなのだ。大根もエビもしっかりと風味が出ていて、カラスミがバランスよく効いていた。帰路に眺めた八ヶ岳はモンブラン菓子のように雪をかぶっていた。 (写真下はシュトレン

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 晩餐は、新横浜で買ってきたターキーの燻製を中心に家内がアレンジしてテーブルをにぎやかにしてくれた。Yさんからいただいたシュトレン(ドイツのクリスマス菓子)を楽しんだ。Hppc240282
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2018/03/13

“名残り”というモチーフ

第16回 ヌービック・フォト・フレンズ5写真展
『名残りの情景』 は18日15時まで

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会期:2018年3月13日(火)~18(日) 10時~18時 初日は13時~ 最終日は~15時
会場:かなっくホール ギャラリー(A) アクセスは、DMを参照ください

以下に、本写真展のあいさつ文と作品一覧を掲載する。(写真や図表はすべてポップアップします)Hpimg_0002_4 Hpimg_0001_6Hpdmimg_4Hpimg_0001_7

 ヌービックフォトフレンズ5は、昨年、『発端の物語』という写真展を開催した。今回の『名残りの情景』は、テーマとしては正反対だ。物事の最初が発端だとすれば、最後は名残りで終わるのではないか。すなわち物事の最初と最後という意味で正反対といったのだ。
 発端も名残りも、私が提唱している8大モチーフの一つである「時間」に属する。名残りは過去のカ テゴリーに含まれる。また、過去のモチーフの中でももっとも重要なモチーフと言える。名残りは記録の本質でもあるからだ。写真撮影の目的は、名残りをとどめておきたいという願望の実現にあるともいえよう。記念撮影しかりだろう。写真撮影のもっともポピュラーな目的にかかわる。何をどう撮っても名残りになるともいえる。しかし、そうは言っても、被写体の選び方と撮り方には工夫が必要だ。
 『発端』について取り組んだので、次は『名残り』を撮ろうというヌービックの発想は、自然でもあろう。
 私は、今回、参考出品させていただいた。自然界には、常に始まりと終りがあり、それを繰り返している。その繰り返しが、人々の心に響き、自然への憧れや期待、逆に絶望や寂寞などの情感を醸し出している。私の自然観は、『自然は厳しい』ということだ。美しい反面、生きるか死ぬかの厳しさがある。その厳しさに注目している。名残りには、それを感じさせる要素があると思う。私は、春と秋の季節の名残りとして2点を出品した。

 

 『春のさきがけ』は、満開のモクレンの名残だ。早春に咲くモクレンには、春の喜びがあふれている。散らばった落花には、その面影を感じる。『豊穣の余韻』は、折れて落ちたミミガタテンナンショウの果実を撮影したものだ。秋の豊かさを象徴しているのではないか。
 
           ご高覧いただけたら幸いだ。
Hpp4060298『春のさきがけ』

Hppb190337『豊穣の余韻』

 ヌービックでは、毎回、写真集を制作している(写真左)。Hpimg_0005

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2017/09/03

第10回 プローバー’01写真展 『写真を編む』         11日16時まで

Hpdm_img_0002_4会期:2017年9月5日(火)~11日(月) 10:00~18:00(初日13:00~ 最終日は~16:00)
会場:かなっくホール ギャラリーA(DM参照)

 私がコーチを務めていた、写真クラブ・プローバー’01が写真展を開催する。タイトルは、『写真を編む』という今までにはない変わったタイトルだ。あいさつ文にある解説には、「一人当たり3点の写真を縦糸に、撮影にまつわる物語を180字前後の横糸として編み物をつくるように写真をお見せできればという組写真に近い趣向で展示しました」とある。また、DMには、「撮影を縦糸に、物語を横糸に…」というキャチコピーが書かれている。内容ではなく見せ方にかかわるタイトルといえよう。Hp2017dm_img_0001
 組み写真にはちがいないが、編み物や織物として写真を見せようという発想はユニークだ。ところで、私には織物や染色といった、テキスタイルに関連した分野にはほとんど縁がなかった。一方、同じ「編」が付く編集という作業には、多少縁はあったので、編集のつもりでチャレンジしてみた。
 なお、私の後を継いでコーチを担当いただく福田徳郎先生は、朝日新聞の出版写真部のデスクを務めた方だ。いわば、組み写真のエキスパートである。また、多くの撮影現場に立ち会ってきただけでなく、比叡山で修業されたこともあるという。ユニークなキャリアの持ち主で、すばらしい師を得た思いだ。今回の写真展にも、基本的構想を提案いただいた。Hp_pa220414_edited2

 さて、私はメンバーの一員として参加した。最近は、人生の晩期を感じる。そこで『晩年』というタイトルで、秋の自然写真を展示しようと考えた。はたして、テーマに沿っているかどうか不安である。以下に私の出展作品を掲載しよう。 (写真はすべてポップアップ可)

『晩 年』
 「終わり良ければすべて良し」という諺がある。晩年を迎えた私には気がかりな諺だ。Hp_p9120300_edited1秋は四季の晩年といってよいだろう。私は、自身の心境を秋の自然写真に置き換えてみようと試みた。
Hp_pb020508_edited2Hp2017img_0004_2ヤマブドウの葉には、“波瀾万丈”を感じる。ヌメリスギタケは、ひと目“他力本願”に見えるが、分解という大役をこなしている。私は、自然写真を撮っていたおかげで、今も植物の発生に“興味津津”である。

左上に、本写真展の作品一覧を掲載する。

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会場風景Hpp9072307_edited1

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2017/07/31

2017年7月下旬の森の生活 八ヶ岳山麓No.208

 今年の季節の推移は早いのか、遅いのか、どちらだろうか? 春の植物については、昨年に比べて1週間ぐらい遅かった。それはすなわち、平年並みを意味しているのだろうか。森の中で生活していると、自然界の動きがよくわかる。Hp726_p7264292Hp_721p721399
八ヶ岳山麓のウバユリやギボウシの開花も、昨年よりほぼ1週間遅れである。関東甲信越の梅雨明けは早めだったようだが、前線が南下して、八ヶ岳山麓も、ここ2、3日は梅雨のような天候だ。梅雨明け後1週間の夕焼けの美しさも、まだ見ていない。「梅雨明け宣言」にはいろいろ問題がある。7月下旬の森の生活をレポートしよう。

ユリ科の植物の不思議
 ギボウシ(写真上右2点)は、つぼみの状態と開花時期の状態が、別の花ではないかと疑うほどに大きな違いがある。Hpp7133679_2
Hpp7264330ウバユリ(写真下左2点)も同じようにひと塊のつぼみから1~数個の花が咲く。どちらもユリ科で、つぼみは天に向かって砲弾型をしている。しかし、開花直前になると、花冠は横に向きを変える。なぜこのように進化したのだろうか。きっと昆虫からの防御と授粉を助けるために共進化したのだろう。しかし、ウバユリには、つぼみのうちに虫に食われてしまうものが目立つ。

森の訪問者
 山小屋に来て、ベランダで初めて夕食を摂っていると、ミヤマクワガタのメスが外灯にぶつかってきた。翌日はコクワガタのオス(写真下右)がやって来た。Hpp7223490
 毎年一回は観察するセミの羽化に、今年も巡り合った。エゾクマゼミ(写真下左)が変わった場所で羽化していた。シカに葉を食べられたミズナラの小木で、小枝の先端だった。行き止まりの細い枝で戸惑ったに違いない。Hpp7240247向きを変えて、羽化を開始したようだ。羽化した場所から離れて羽を整えるのを初めて観察した。危険な羽化だったと思われる。しかし、無事に飛び立っていったようだ。
 オオミズアオには、何か因縁を感じる。今までに、身近な要人が亡くなると現れるのだ。今回は、4月に叔母が102歳で永眠した。オオミズアオを見ていると、叔母の才気と厳しさを思い出す。Hpp7264375
 カミキリムシは、日本に600種ほどいるという。夜のべランダに飛び込んできた個体は、なんとも渋い色のカミキリだった。翌日よく見ると、重厚なカラーと質感のある個体だ。Hpp7284626しかし、同定はできなかった。なかなか賢いカミキリで、虫かごの蓋を少し開けたら、あっというまに逃げてしまった。そのとき、翅を広げてファッションショウーを見せてくれた。

夏野菜のパスタ
 清里のモリモトへランチに出かけた。トマトベースの夏野菜のパスタがおいしかった。ズッキーニ、トマト、カボチャ、ナス、ブロッコリーなどの夏野菜をふんだんに交ぜてトマトベースに味付けされている。Hpp7224_2

Hpp7224102_2その上にチーズが振りかけられている。さっぱりとした味わいながら、チーズが深いコクを作っている。いつも、ランチセットの前菜が魅力的だ。Hpp7224109今回は、レタスのスープ、自家製ハムのサラダ、清里サーモンのカルパッチョなど5品に自家製のパンが少々付いている。

ニュー・ロック
 レストラン・ロックは、清里の顔だ。昨年、火災に遭い全焼した。今春再建されて営業を開始した。外観や内装に大きな違いはないが、部屋のストーブがなくなり、トイレは一新された。Hpp7254153玄関前のアプローチが広く華やかな雰囲気になった。山小屋でお付き合いしている友だちと一緒に、ランチに出かけた。野菜いっぱいのビーフカレーは相変わらずの味だった。

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2017/03/20

2017年3月中旬の森の生活 八ヶ岳山麓No.206

★八ヶ岳山麓の現状
 3月12日、約2か月半ぶりに八ヶ岳山麓を訪れた。冬の期間、山小屋の周囲は厳しい寒気に襲われる。そこで、暖房用の燃料費を節約しようと、山小屋生活を自己規制した。Hpp3170186_2その結果、氷の撮影と初期の渓流釣りを断念した。不在中の最低気温はマイナス15.2度Cだった(写真)。この最低気温は、私にとっては意外だ。もっと寒いのではないかと思っていた。Hp313_p3131680_3
 往路途中の清里・シーニックデッキでシカの歓迎を受けた(写真)。山小屋へ到着。この時期としては暖かな日和だった。141号線に設置してある野辺山の気温表示には2℃と表示されていた(写真)。氷点下でないのがありがたかった。なにしろ、山小屋生活の初日は寒い。燃料費のほとんどを、小屋を温めるのに使ってしまうからだ。Hpp3151832しかし、日差しが高く、長くなっているのが、春の訪れを感じさせる。
 翌々日、窓を開けると雪景色だった。ベランダの手すりに積もった雪から、積雪は10センチぐらいと推測した(写真)。しかし、日中の日差しでほとんど消えてしまった。

★清里・モリモトのランチ
 14日は、さっそく清里へ出かけ、モリモトのランチを食べた。イチローそっくりのマスターが出て来たのであいさつをした。最近は、この店の常連に名を連ねたのかもしれない。Hpp3141773この日に食べたランチコースの前菜は、『花豆のスープ』と『自家製ハムを添えた野菜サラダ』、『清里マスのカルパッチョ』をワンディッシュに盛りつけたものだ。メインディッシュは、オイルベースの『香川県産のマテ貝とプチベールのスパゲッティ ゆずこしょう風味』だ。一口食べると、ほのかなユズの香りが口いっぱいに広がる。マテ貝は、今までに食べたことがない。Hp_p3141776_2同じ貝類のボンゴレやムール貝とは違った味覚だ。マテ貝の心地よい食感は、アルデンテのパスタとハーモニーを作る。デザートは、『吉澤さんちの花豆と地どり卵のカタラーナ』だった。平べったいお皿に固められたプリン状のもので、表面をこんがりと焼いたお菓子だ。Hpp3141786中央に生クリームと花豆をアレンジしてある。焼き跡がサクサクしていて香ばしい。いつもながら満足できるランチだった。
 最近は、清里観光のお客もここモリモトを目ざしてやって来るようだ。もともと、地元の人気店だったよううだが、観光客にも知名度が高くなってきたのだろう。

★シカの歓迎
 シカの展望台シーニックデッキへ車を止めて観察した。約30頭がわれわれのシーズンインの歓迎してくれた。Hpp3131656

★ベランダに現れたテン
 3月16日もわずかな積雪があった。ベランダの雪面に大きな足跡がある。かなり大きな肉球を持った動物だ。夜中にベランダを歩き回ってから帰ったようだHpp3160084_2Hp_p3160080

★カエデの落ち葉
 もっとも早く芽を出すカタクリやギョウジャニンニクを探したが、みつからなかった。その代わりに林床をおおっているカエデの枯れ葉を撮影した。Hpp3151908_2

★氷シーズンの終焉
 3月19日、散歩道から渓流をのぞいてみた。渓流の氷はほとんど解けて消えている。わずかに残った氷の末路を見届けた。この氷(写真)の成り立ちは、渓流におおい被った倒木から垂れ下がった氷柱が発達して(太くなり)カーテンのようにつながったと考えられる。そこに、飛沫が当たり、ますます厚みのある壁になったようだ。Hpp3190130_2

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Hpp3190132大きな氷は、なかなか解けないので、現在まで残っていたのだろう。 さて、氷をつなぎ留めている倒木と氷が離れそうなので、その瞬間を撮ろとシャッターチャンスを待つことにした。3カットの写真は、氷のシーズンの幕引きを象徴しているといえよう。

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2017/01/11

氷の神秘性 八ヶ岳山麓No.205

〔動と静の葛藤〕
 冬の八ヶ岳山麓で最も魅力的な被写体は氷である。氷は固体と液体(水)の間で千変万化し、二度と同じ形にはならない。冬の渓流では、水の凝固と氷の融解が繰り返し起きている。人がコントロールできないという点では、氷は神秘的な存在だろう。Hpp1017370_2 結氷するには氷点下の寒気と着氷するための核が必要だ。水は氷点下になると、近くにある岩や流木の枝など、時には同じ氷などを“探して”氷になって付着する。結氷のし方にもいろいろある。Hpp1017381しずくが垂れてできる氷柱(つらら)、水流の飛沫が着氷する飛沫氷柱や飛沫着氷、空気中の水蒸気が昇華して直接個体になる霧氷などだ。それに流速や水位、流路、気温、風が影響する。これらが複雑に絡み合って氷は発達する。水温は約8度Cであるうえに流れているので、気温が0度Cではなかなか凍らない(凝固しない)。Hpp1017373_5流れが速いほど凍りにくい。渓流で水温が0度C以下になり、気温が氷点下3~5度Cぐらいなる必要がある。撮影に適した氷が発達するには一日中氷点下の日が3日ぐらい続く必要があるHpp1017412Hpp1017385_3氷も水も水の分子H₂Oで構成されているが、液体の場合は、分子が自由に動けるのに対して、固体は分子が結晶を作って、塊状になる。すなわち、水の「動」に対して、氷の「静」といえる。どちらも、自分の存在を維持しようとしているので、冬の渓流には、動と静の葛藤があるといえるのではないかHpp1017362_edited1_2Hpp1017394_2

                                        

〔氷写真の先駆者・清岡惣一〕

 氷の写真の先駆者として清岡惣一氏(1915~1991年)を挙げたい。清岡氏の写真集『清岡惣一の世界』(1993年 日本カメラ社 刊)には、多くの氷写真が掲載されている。Hpp1021502この写真集には、モノクロの作品が73点掲載されている。その中に、冬に撮影された作品が21点あり、そのうちの15点が氷(雪)の写真である。すべて日光中禅寺湖で撮影されたものだ。清岡氏は、1976年、東京・ペンタックスギャラリーで個展『雪と氷の湖畔・日光中禅寺湖』、1977年、金沢・名鉄丸越デパートで個展『雪と氷の湖畔』を開催している。残念ながら、私はどちらも鑑賞していないが、写真展のタイトルからも、清岡氏の氷に対する想いが伝わってこようというものだ。

 本写真集は、清岡氏が亡くなられてから刊行された。贈呈用の写真集に、清岡静子夫人が書かれた「御挨拶」という一文が別刷りで添えられてあった。奥さまが書かれている要旨は次のようなことだ。「病床にて故人自らが掲載作品の選定に最後の力を注ぎ、その後、多くの有志の方々の温かいご支援とご協力のもとに、完成したものです」「今、この故人の集大成とも呼ぶべき作品集を手にすると、満たされたときの主人の微笑みが思い起こされてなりません」とある。ページ構成を見ると、清岡氏は氷の写真に特別な想いを持っていたと推察できる。Hpp1021522私が言いたいことは、清岡惣一氏が氷の撮影に心血を注いでいたということだ。
 氷の撮影は、決して楽なものではない。氷点下の水辺での撮影は、指先がかじかんで、カメラ操作が思うようにできない。しかも、うっかり足を滑らせて、尻もちをついたり、衣類を濡らすと、衣類はすぐバリバリに凍ってしまう。すなわち命懸けである。清岡氏の撮影の緻密さと忍耐力は、推して知るべしである。私は、中禅寺湖畔でカメラを構える清岡氏の姿を想像した。

 カメラ雑誌の取材で、一度清岡氏にお会いしたことがある。そのとき、清岡氏の撮影姿勢と作風に好感をもった記憶がある。当時は被写体としての氷には注目していなかったのだが、実際に私が八ヶ岳山麓の渓流で氷を前にしたとき、清岡氏の心の奥底にあるものに触れた思いがした。私の氷写真の原点は清岡氏に負うところが大であると思っている。

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2016/12/14

2016年12月上旬の高原のようす 八ヶ岳山麓No.204

兵どもが夢の跡Hppc120103

 私たちの山小屋がある川上村は、『野菜王国』を自称している。キャッチコピーには『高冷不毛の寒村からレタス生産量日本一の高原野菜立村へ』(川上村誌 通史編 現代より)と書かれている(写真左)。しかし、野菜王国に上りつめるには並大抵の苦労ではなかったようだ。Hp1253pc050006_edited1

 

 川上村誌 通史編 現代 近現代概説(写真右) 第三章 第三節「野菜」に10項にわたって、野菜王国への経緯が記されている。第9項の「野菜産業」によると、川上の農業を企業経営として確立しようという意図が感じられる。Hppc120150_2例えば、昭和63年(1988年)に掲げた基本方針には、「ニーズに対応した本物づくり」「ブランドの確立」「先端技術に対応」「農家の経営基盤の強化」「農業者の健康管理と後継者の確保」「魅力ある農村づくり」など優良企業を目ざした方針だ。企業イメージ、社員の福利厚生などに配慮した会社組織に匹敵した取り組みだ。
 同年1月には、村営有線テレビ局を開局、7月からは村民向け野菜市況速報の放送を開始した。平成3年(1991年)村内に設けた観測地点のデータを活用して詳細な天候の予測情報を流し、野菜生産の一助とした。そのほか、機械化やポリマルチの採用、農薬散布の適正化、など栽培技術の向上に努め、平成5年(1993年)には、村内3農協の販売総額は200億円に達し、過去最高を記録したという。

 

 

 一般に、農業は加重労働を強いられる。レタスなどの生鮮野菜もご多聞にもれず、たいへんだ。私の観察では、出荷が最もたいへんに見える。Hppc070262_2Hppc070266_2ばしば、早朝3時前に電灯を付けて作業している現場を見たことがある。「朝採り」で消費者へ提供するためだろうか。私たちには深夜の時間帯に仕事をしているのである。Hppc070207出荷作業が一段落して、朝日を浴びながら畑で朝食をとる農家の団らん風景を見ると、何かうれしさが込み上げてくる。夜から早朝にかけて出荷作業に取り組む人々の姿には、どこか共感できる。むかし、編集部で仕事をしていた時を思い出すからだ。徹夜の校了日に朝日のまぶしさに、何とも言えない満足感を感じたものだ。Hp127pc070334どんなに過酷な労働でも、収益が上がればやりがいがあるだろう。

 

 12月に入って、気温が急に下がった。12月7日の最低気温は、マイナス8.5度C(写真左 最高最低温度計を夕方に撮影)。就寝中は電気毛布を使わないと足が温まらない。昔は電気毛布などは使わなかった。10度C以下の布団に入ってもすぐ眠れたのだが。本格的な冬に入った八ヶ岳山麓の情景を紹介しよう。(写真上は12月5日の八ヶ岳。根雪が付き冬の厳しさが出てきた)

 

 

●冬の畑に残された野菜を見ると、まさに「兵どもが夢の跡」である(写真上3点
ハクサイとブロッコリー)

 

 

●ボタンズルのドライフラワー。逆光で異常に輝いている(写真下右)Hppc070220

 

●ヤドリギ。落葉樹の枝に寄生する植物だ。ヨーロッパでは、果実のついた枝をクリスマスの飾りとして使うHppc070275_edited1

 

 

 

 

 

 

 

●クレソン。冬枯れの中に青々とした葉を見るとホッとする。採取して食卓に供した(写真下)Hppc070295

 

●山小屋のベランダにやってくる野鳥たち。今年は、水浴び場を用意した。朝、雨戸を開けると、ヒマワリの種をねだりに来る
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2016/11/23

秋は過去に思いをはせるとき 八ヶ岳山麓No.203

円熟期に草創期を考える

 八ヶ岳山麓(標高1400メートル)には、初冬の風景が展開している。八ヶ岳の初冠雪は見たものの、まだ根雪にはなっていない(写真下)。Hp1120pb200013
 年間を通して同じ地域の自然を観察している私にとって、秋は過去を振り返りたくなる季節だ。春に発芽したり芽生えた植物は、夏の強い光を受け止め、生長し花をつけ、秋になると、葉は紅葉し、果実をつける。Hppa220406_2のようすを目の前にすると、どうしても過去の出来事や働きぶりを思い出ださざるを得ない。それは、山小屋のある八ヶ岳山麓でも、居住地の横浜市でも同じだ。観察の対象は、まったく同一の個体のときもあれば、同じ種に絞って観察する場合もある。(写真左 ヤマブドウの変葉)

 いうまでもなく、秋の季節感は紅葉や黄葉などの葉の変化とバラエティー豊富な果実にある。春の芽生えや夏の生活からは想像できない。Hppb050008_3E.ヘッケルの反復説によれば、春から秋にかけての植物の変化(個体発生)は、その固有種の進化の過程(系統発生)を短縮された状態で現れるといわれる。秋の紅葉や果実が、固有種の未来まで暗示してるのだろうか? 植物の神秘を感じる。継続して観察する意義は、そこにある。私は、植物それぞれの円熟を味わいつつ、過去を振り返って思いを“はせる”のである。(写真上右 カエデの落ち葉)

●カエデ(カエデ科) 若葉(5月3日)には原始的な二又分枝の面影がある(写真下左)。同じ個体の黄葉(写真下右Hpp5030504
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●ミミガタテンナンショウ(サトイモ科)
 5月8日に撮影した若芽(写真下左)。5月23日に撮影した花(写真下中)。9月19日に撮影した果実(写真下右)。それぞれ別の個体を撮影Hpp5080123
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●ミミガタテンナンショウ(サトイモ科) 
10月24日に撮影した果実(写真下左)。11月19日に撮影した同じ個体。風雨に打たれて倒れていた(写真下右)Hppa240066
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●ズミ(バラ科)
 今年は当たり年で、森が白く見えるほどの満開になった(5月27日撮影 写真下左)。6月22日の若い果実(写真下右)。どのズミの樹もたわわに実をつけている(写真下段)Hpp5270045
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●ウバユリ(ユリ科)
 7月5日のつぼみ。ユリ科に共通の形質が見える(写真下左)。7月2日の花(写真下段左)。10月22日に撮影した果実(写真下右)。果実の中からつまみ出した種。直径10ミリぐらいの薄片。(写真下段右)。Hpp7050351
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2016/09/24

西方寺のヒガンバナ 横浜No.92

雨の参道で撮影

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 9月23日は、横浜市港北区新羽の西方寺へ出かけた。西方寺は花の寺である。ほぼ1年中、花の撮影ができる。今は、ヒガンバナの撮りごろだ。おりしも雨天だったが、水滴を生かして撮影できてよかった。なお、当地には白と黄色のヒガンバナもある。使用カメラは、オリンパス スタイラスXZ-2。

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