2015/10/11

キノコの家族 八ヶ岳山麓No.184

価値ある分解者の存在Hpp9160140

 私はキノコが好きだ。まず形がおもしろい。種による違い、個体差など、さまざまな形は、ドラマチックであり、メルヘンチックであり、神秘的だ。そして、短時間(1日単位)でその形を変える、変身術の見事さにも驚く。老若(老菌と幼菌)の違いは、人間のライフステージの縮図のようだ。老菌は何の跡形もなく消えてゆく。理想的な生き方ではないか。

 植物が作った葉や茎、木質にはセルロースが含まれている。セルロースは植物体の細胞膜の主成分で、繊維素ともいわれ、物理的にも化学的にも強靭な特性をもっている。その特性を利用して、人類は紙や紐の原料にしたり、セロハン、アセテートなど繊維を作っている。しかし、人間がすべてのセルロースを消費しているわけではない。植物の成長や時間ともに地球上には落ち葉や朽ち木としてセルロースが年々蓄積していく。このままでは、地球上はセルロースでいっぱいになってしまう。

 さて、キノコは菌類といわれ、森の清掃者ともいわれる。森の中で、ある種の菌類は落ち葉や朽ち木(セルロース)を分解して、菌糸を作りキノコを構成する。キノコは腐りやすいので、自然界で腐敗分解し、土壌のとけ込み肥料となる。同時に、キノコは人を含む従属栄養生物の餌になる。一方、ミミズやムカデなどの土壌生物も落ち葉や小枝を食べてセルロースの分解に一役買っている。肥沃な土壌にはミミズやムカデがたくさんいるといわれるゆえんだ。森の中でセルロース(落ち葉や朽ち木)があふれないのはキノコと土壌生物のおかげである。すなわち、キノコと土壌生物は、森の清掃者ということになる。

 生物の『三界説』というのがある。地球上の生物の進化を把握するために生物を『植物界(生産者)』『動物界(消費者)』『菌界(分解者)』の三つに分類しようという考え方だ。また、『五界説』というのもある。こちらは『モネラ界(原核生物 細菌や藍藻類など)』『原生生物界(単細胞生物 ミドリムシや鞭毛虫類など)』『植物界(緑色植物など)』『菌界(キノコ類)』『動物界』の五つに生物を分類している。ここで、注目しなければならないのは、どちらの説にも分解者としての菌界があることだ。菌類(キノコ)は、地球の進化にとって欠かせない存在であったということだ(以上は、概観的な解説であることをご容赦いただきたい)。この事実を知ると、ますますキノコが好きになる。この秋撮影したキノコの一部を人間関係に当てはめてみた。森の中で果たす役割について併せ考えてみたい。

●恋人同士 カラカサタケの成菌と幼菌。親子というより恋人同士のようなほほえましさを感じた (写真最上段)

●孫と祖父母 老菌のようすをみるとこのように感じたが…。キノコの同定は不詳 (写真下)Hpp9210302
●大家族 最近、都会ではめったに見られないのではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hppa090301

●5人兄妹 仲の良い兄妹のようだ。うらやましい家族ではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hp5p9220287_edited1

●老カップル ニセショウロ科の老菌。撮影後、たたいてみたら胞子が出てきた。まだ元気いっぱいだ (写真下)Hppa090593

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2014/06/28

衣類の回収ボックス

フランスで見つけたリユースの例
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 パリの滞在中、一日だけ地方へ出かけた。ローマ遺跡があるというサンリス(Senlis)を目ざしてパリ北駅を出発した。途中、列車からバスへ乗り換えるシャンティイ(Chantilly)は、ガイドブックでもページを割いている名所である(写真下左 シャンティイの駅舎)。目的地のサンリスよりは知られた町だ。Hpp6070683_2サンリスについては機会をあらためよう。ここではシャンティイで体験したことについて触れる。パリの北約40キロにあるシャンティイは、フランス競馬のメッカだという(写真右上 バス停に建っている広告塔)。サンリスへ向かうバスの車窓から見えた広大な馬の施設には、ゆとりと風格を感じた。馬具博物館もあるという。

 さて、シャンティイでの乗り継ぎ時間が1時間もある。バス停で時間をもてあましていたところ、すぐ隣りにゴミ箱が3つ置かれているのに気づいた(写真下左)Hpp6070699_22つはガラス製品のリサイクル回収箱、もう一つは衣類のリユース回収箱だった。日本ではめったに見ない衣類の回収箱に引かれて撮影した。Hpp6070702投入口にはみ出した衣類が見える。フランス語の辞書と首っ引きで、書かれていることを翻訳してみた。まず、環境問題を標榜する絵とキャッチコピーが目に入った(写真右)。コピーには「環境と雇用のために日々行動しましょう」とある。そして、この回収箱を利用する規定が次のように書かれていた(写真下左)。「下記の指示に従うように」とあり、箱に入れる規定が書かれている。「提供物はこの中へ。あなたの衣類と布地をきれいで乾いた袋に入れて提供してください。また、あなたの靴も一足をひもでくくって提出してください。革製品もけっこうです」。「汚れた、そして濡れた繊維はお断りします」とある。当局は、シャンティイ地区の町の共同体のようだ。なお、「雇用のため……」という意味が、私にはわからない。私はフランス語にはまったく縁がないので、翻訳がまちがっているのかもしれない。Hpp6070702x_2_2

 最近、衣替えを兼ねて衣類を取捨選択した。捨てようと決めたものの中には、未練が残るだけでなく、十分役立つものがある。それらを有効に活用できたらと考えるのは私だけではあるまい。フランスで見たこの回収箱は地球レベルで有効ではないか。しかし、じゃまなものを捨てるためにこのような回収箱を悪用されることも考えられる。このシステムは人々の良識によって成り立つのであろう。

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2012/08/04

“犯人”はニホンアナグマだった 八ヶ岳山麓No.142

日本の食生活を考える…コンパクトカメラシリーズ42

 山小屋の庭に設置したコンポストのふたが、毎晩、開けられている。中のゴミが目当てだ。犯人の正体を突き止めようと、インターバル撮影の無人カメラを仕掛けた。使用カメラはオリンパスSP-350、5分ごとにシャッターが切れるように設定した。今までに2回失敗し、3回目に成功した。前2回は、コンポストのふたを開ける前に、フラッシュの光に驚いて逃げてしまったらしい。3回目はふたを開けたとたんにフラッシュが光りそのまま逃げたらしい。Hpbp8012890とりあえず1カットに、“犯人”がコンポストに顔を突っ込んでいるシーンを撮影できた。その前後のカットには何も写っていなかった。犯人はニホンアナグマと断定した。 【撮影データ】 オリンパスSP-350 8ミリレンズ(35ミリ判換算35ミリ) 絞りF4.5 1/30秒 ISO400  WB晴天 フラッシュ・オート発光 -1/3EV補正  8月1日 22:12

 アナグマは、丸々と肥っている。この写真から学べることは、私たちが食べ残したものにもかなりのエネルギー(カロリー)が残されているということだ。コンポストに捨てるゴミは、将来、肥料にするので生ゴミだけである。多少の食べ残しも含まれるが、ほとんど調理の屑物だ。これらも、アナグマにとっては貴重なエネルギー源になる。地球上のエネルギーが不足している現在、私たちの食生活にも改善の余地があるかもしれない。そして、アナグマは野生ではないということだろう。

 昨日のNHKラジオ第1放送「夏休み子ども科学電話相談室」で、「なぜキュウリは曲がるのですか」という質問に対して、「キュウリは本来曲がるのがあたりまえ」「曲がっても味はまったく変わらない」(以上要旨)という先生方の答えが興味深かった。市場で曲がったキュウリが嫌われるというのは、流通コストの問題だけではあるまい。商品の体裁にこだわる民心もかかわる。流通も民心も改善の余地があると思う。太陽光による地球上の生産物は、少しでも効率よく消費しなければならないからだ。もっとも、コンポストのゴミは家庭菜園で再利用されてはいるが…。 参照: 『夜のシカを撮影 八ヶ岳山麓No.102』

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2011/08/15

山小屋周辺の清掃 八ヶ岳山麓No.124

自身が「ひと役買う」覚悟Hpp8149458

 8月14日は、自治会主導で山小屋周辺(保健休養地、別荘地)の清掃をした。老若男女27名が参加して、ゴミ拾いと花壇の草取りをした。今回は3回目だが、私は初めて参加した。広大な別荘地を路地別に分け、分担してゴミを集める。目だつゴミは、清涼飲料のペットボトルと空き缶、吸殻、菓子類のパック袋などだ。自販機で扱っているものが中心だ。Hpp8149466_2 自販機は購買者のマインドを変えてしまうのだろうか。集めたごみは可燃ゴミ、不燃ゴミ、ペットボトル、ガラス瓶類、粗大ゴミなどに分別されゴミ回収箱へ入れた。

 だれでもが自分たちが住んでいる町をきれいにしたいと思っているはずだ。Hpp8149467ところが、「旅の恥は掻きかき捨て」とばかり自身になじみの少ないところではへいきでゴミを捨ててしまうものだ。町をきれいにするという点では、ドイツに比較して日本はあきらかにモラールが低い。その理由を、私は日本人の中央集権的思考にあると考えている。中央集権的思考は、だれかがやるだろうという発想になる。自身がひと役買わなければならないという自覚は生まれにくい。大きなコミュニティー(大都市)Hpp8149438では特にそうだ。地方でも根底に流れている思考は同じだろう。中央と地方は人や情報が交流しているから当然だ。その結果、政府や自治体に依存してしまうのである。「親方日の丸」というのは公務員を皮肉った言葉だが、一般国民も同じだろう。(写真上 ゴミの分別作業)

 一方、長い時間をかけて培われたドイツの地方分権思考は、自分自身がやらないと「町を守れない」という考えから育った。城壁で囲まれた町(小さなコミュニティー)は常に外敵に備え、市庁舎と教会を核にして一致団結していたのである。一人ひとりが自身の持ち分をわきまえていた。それは、町をきれいに保つ習慣と無関係ではあるまい。(写真下右 ペットボトルゴミ、同左 ゴミの袋詰め作業)Hpp8149441

 私の山小屋がある別荘地は、特別な管理会社が入っていない。自治会が自主管理している。これは、見方によっては理想的だ。管理会社なしで済ませられれば、経費は節約できるし、モラールも高まるだろう。管理会社に依頼すると、管理が行き届いていると安心してそれに頼ってしまう。人間とはそういうものではないか? 自治会と言っても参加者は50所帯余りで、全区画の一部であり、Hpp8149451_2さらに「我が町」と思って管理に取り組んでいる人はわずかである。課題はたくさんあるが、私たちが快適な山小屋生活を過ごすことができるのは、彼ら有志のおかげだ。私たちも心しなければならない。

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2011/08/03

盛期のイワナ釣りで生態系の不安を感じる              八ヶ岳山麓No.123

人にも魚にも優しいカメラ…コンパクトカメラシリーズ37Hpp8018927

 8月1日は、久しぶりに晴れた。ここ3、4日は、梅雨のような空模様で、日中は降ったり止んだり、夕方には豪雨という、うんざりする天候だった。やっと晴れ間が出たので午前中に川に入った。水量は多いが濁りはない。絶好のコンディションだ。魚も活発に餌を追う。一つの落ち込みで2尾が釣れるというめったにない状況もあった。もちろん、スポットのすみずみまで探った結果だ。1時間半で6尾ほど釣ったが魚は小さい。撮影に値するのは1尾だけだった。しかし、渓流に立つ幸せを体験できた。Hpp8018905

 放流する前の撮影で、魚にできるだけダメージを少なくするために少し工夫した。浅瀬に魚を誘導し、水から引き上げずにシャッターをきった。オリンパスXZ-1をスーパーマクロモードに設定、ローポジションで接近、イワナの目にAFターゲット(フォーカスフレーム)を合わせてレリーズした。有機ELのディスプレーは明るく指向性も良好で、ローアングル、ローポジションでも(斜めからのぞいても)フレーミングができる。ライブビュー撮影はカメラだけが被写体に接近するので、撮影者はしゃがむだけでカメラを構えられる。もちろん魚に与える脅威も少ない。XZ-1は撮影者にも、イワナにも優しいカメラだ。釣果の撮影が少し進化したのではないか。Hpp8018920_2

 釣れた魚は15センチ前後の2年物が中心だ。一昨年の秋に孵化したイワナである。このサイズが多いということは、先に楽しみが残る。ただし、大物が少ないと、生態系のバランスは維持できないだろう。少し心配だ。キャッチ&リリースを遵守したいものだ。

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2010/10/17

新横浜パフォーマンス2010 横浜No.49

「良い世さ来い」!! 「ワールドカップ来い」!!Hp_2

 10月16日、17日、新横浜駅周辺は「新横浜パフォーマンス2010」でにぎわった。会場は、新横浜駅前広場(第一会場)、NISSAN STADIUM(第二会場)、レンガ通り(第三会場)、アリーナ通り(第四会場)の4か所だ。レンガ通りと新横浜駅前広場をのぞいてみた。レンガ通りは、「新横黒船祭り“良い世さ来い”よさこい踊り」の舞台と化し、次々にチームが登場して“元気”を競った。パンフレットを見ると、40以上の団体が参加しているようだ。横浜や神奈川県内だけでなく、千葉や東京、静岡、茨城からも参加している。Hppa176540「新横黒船祭り“良い世さ来い”よさこい踊り」は、今や、新横浜の名物行事だろう。私は「流(東京支部)」と「西伊興龍巳組」を見た。老若男女が夢中で演舞する姿を見て、私の知らない一つの世界が確立していると感じた。Hppa176569

 新横浜駅前広場には、アラブのサウンドが流れていた。私は、イランやトルコ、シリアなどへ取材に行ったことがあるので、中近東の音楽は耳になじむ。ステージでは、華やかな衣装でベリーダンスが演じられていた。ベリーダンスとは、アフリカや西アジア地方の民俗舞踊で、官能的に腹や腰を振る踊りである。つかの間、アラブの情調をなつかしんだ。出演はOriental Venusというグループだった。Hppa176598_2

 なお、このイヴェントは、2022年に日本・横浜へFIFAワールドカップを招致するための応援企画でもある。

 横浜市がかかわる催しものでは、かならずエコステーションが設置される。これは、ごみの分別と公共マナーの動機づけに大いに役立っていると思う。ボランティアだろうか、若者たち明るく働いていた。Hppa176580_3

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2010/09/28

パリの乗り合い観光バス

パリ・ラ・オープン・ツアー(Paris L'Open Tour)Hp015p6113375_2

 パリへ初めて行ってみたが、右も左もわからない。ガイドブックやインターネットで多少調べたが、現地に入ると雰囲気にのまれるだけだ。大都市であるうえに、「パリ」という名まえに圧倒されてしまった。頭では町の地図や名所旧跡をわかっているが、実感としてピンとこない。どこから手を付けていいかわからない。頭と足は連動していないのだ。初めて訪問した町ではよくある現象だ。(写真上右はオペラ大通りを走るパリ・ラ・オープン・ツアー)

Hp_2 そこで、町の全貌をつかむために観光バスに乗ることにした。写真家としてはあまりやりたくないことである。しかし、一度降参して作戦を立て直すことにした。観光バスというのは、「パリ・ラ・オープン・ツアー」(Paris L'Open Tour)と言う。屋根のない2階建てのバスがパリの主要観光地をほとんど網羅して巡回する。Hpp60222214コースあり、10~30分間隔で運行される(写真上はコースマップ ポップアップ可)。チケットは、1日券大人29€、2日券32€で、どのコースも乗り放題、降り放題だ。Hpp6022225興味のあることころで降りて、ロケハンし、2、3台後のバスに乗って次のポイントへ向かう。これを繰り返すと、パリ中心部のイメージを頭にインプットすることができる。すなわち、このバスツアーは撮影地を選ぶインデックスになる。Hpp6022213_2実際の撮影にも多少役立つ。2階席は、屋根がないので視界が広く情報量はかなり多い。地上からでは得られない高いカメラポジションも選べる(写真上右)。停車中には思わぬシャッターチャンスに恵まれるときもある。また、被写体やHpp6011826イメージによっては十分な撮影もありえる(写真上左)。日本にもこのような観光バスがあると便利だが…。(写真右は、バスのハイポジションから撮影した屋上庭園。これほど緑の多い屋上は珍しい)

Hp チケット(写真左)を購入するとコースマップとヘッドフォンが提供される。音声ガイドは10か国語で流れる。私は「日本国旗」マークのあるターミナルにジャックを差し込み(写真下右)、ヘッドフォンを耳にあてた。ていねいなガイドではあるが、世界史の知識があるとさらに理解が深まるであろう。Hpp6011799なおチケットには、一部の美術館などで10~25%の割引が得られる特典が付いている。私はバスで得た情報を頼りに、Metro(地下鉄)で移動して撮影した。参照:『Metro(メトロ)にはパリの旅情がある』

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2010/06/28

花の都のクリーンアップ作戦

Hpp6032338_2パリの清掃とゴミ処理

 私のあこがれの一つは、美しい町、清潔な町に住むことである。ドイツでは、しばしばそれを体験してきた。文明開化の横浜居留地にもその雰囲気があったという。そのためにも、私は横浜にかかわってきた。さて、花の都パリのゴミはどのように処理されているのだろうか。短い滞在時間ではあったが、できるだけその現場を撮影してきた。もちろん取材などという大それたものではない。

 滞在初日の朝、朝食をとっていると清掃車の音が聞こえてきた。小さいブルドーザーのような響きだ。朝食を中断して外へ飛び出して撮影したのが写真上右である。タンクにつながるホースから水を勢いよく出し、清掃職員が歩道のゴミを吹き流すのである。はじめは単なる散水車かと思ったが、そうではない。あらゆるゴミを洗い流していく。落ち葉や紙くずはもちろん、犬の糞まで流す。ドイツと同じように、パリでも犬の糞が目立つ。これを洗い流していく。歩道はみずみずしくよみがえる。8時30分ごろだった。作業は毎日ではなかったが、滞在中何回も見た。

Hpp6042566_3Hpp6117780_2 家庭ゴミは、各戸または各アパートの前に置かれたキャスター付きのゴミ箱に捨てるようだ。歩道上やわずかなスペースを確保してゴミ箱が置かれている(写真上2点)。ほかに、公共のゴミ箱が大通りの歩道や公園など各所にある。箱型もあればポリ袋タイプもある(写真下2点)。これを夕刻、収集にやって来る。職員がゴミ箱を収集車まで運び、リフターで引き上げひっくり返して収集車へ移す(写真最下段右)。これもドイツとほぼ同じだ。カラスがつついたのだろうか(ポリ袋タイプ)、ゴミが散乱している場面も見たが基本的に町はきれいだった。P6042535_2Hpp6123534_2

 清掃やゴミ収集のサイクルはよくわからなかったが、しばしば現場にめぐり合ったので短いサイクルだろう。ゴミ処理と町の美化には膨大な経費がかかっていると想像した。現在の日本を省みたとき、大都市のゴミ問題と美化には、まだまだ改善の余地があると感じている。私は、もっときれいな町に住んでみたいと思っている。なお写真は一部を除いてパリ第11区で撮影した。 (写真下左はパリの清掃車。左は“散水・放水”タイプ、右は“ほうき”タイプ)Hp2p6127791Hpp6042732 

参照:『共有・共感が町をきれいにする ドイツNo.18 『町の美しさを探る ドイツNo.78』

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2010/04/29

シカに異変 八ヶ岳山麓No.99

人とシカの攻防戦Hpp2220025

 シカを取り巻く環境が急激に変化している。人里や畑に出てくる頻度が異常に高い。人間にとっては、シカとの接点が明らかに増えてきた。3月30日の宵、車で走行中、八ヶ岳山麓の5か所でシカを目撃した。Hpp4220820そのうち2か所では20~30頭が群れをなしていた。(写真上右は牧草地に出てきたシカの群れと、写真左は山小屋の近くで見つけた糞) ほかの3か所でも数頭が道路わきから逃げて行った。牧草地や畑(レタス畑の予定地)をわがもの顔に走り回っている。昨年から今年にかけてシカを見る機会が増えた。Hpp4220814_2Hpp4240939_4シカが角を研いだり、かじった跡があちこちにある(写真下2点)。今までは、たまに見るぐらいだった。シカは、しばしば生木をかじる。おそらく草が見つからず、空腹をいやすためであろう。それほどシカにとっては深刻な事態のようだ。

Hpp3310428 3月31日は、森の中でシカの角を拾った(写真右)。初めての体験だ。ふだんから動物の骨や角はもっとわれわれの目に触れてもよいと思っていた。野生動物の寿命は2~3年、長くても数年と言われる。必ずどこかで死ぬので、その痕跡が見つかってもおかしくないはずだ。しかし、ほとんど見つからない。山の中でシカの角が見つかったことは、シカの生活と森の中で何かが起きているとしか思えない。

Hpp4020587_3Hpp4020601_3 4月2日は、山小屋の近くでシカの死体を見つけた(写真右)。あきらかに人間のテリトリー内だ。禁猟期に入っているので銃で撃たれたのではない。傷は見当たらない。そばに嘔吐物のようなものがあった(写真上左)。生木のかけらが混じっているのだと思っていたら、なんと動物の骨だった。木のかけらなら消化できるだろうが、動物の骨は無理だろう。消化不良で吐いてしまったのではないか。よほど腹が減っていたのだろう。目が青くきれい顔をしていた。それにしても、木片を消化できるとは、どんな胃なのだろうか。シカの糞から想像するに、胃の中にミキサーがあるのではないかとさえ思える。

 農業従事者にとって事態は深刻だ。シカに対する並々ならぬ対策を講じている。川上村では、レタス畑のシカ除けを改善した。従来の電柵から、頑丈な軽量鉄骨の垣根に変えた。畑と山林の境界など村全体を垣根で囲った。おかげで、私は渓流へ入りにくくなった。今までは、何とか電柵を潜り抜けていたが、もうそれはできない。シカ除けは人除けにもなってしまった。電流は流さないようだ。

Hpp4220828 私たちも被害者だ。柵で囲った家庭菜園の作物は安全だと思っていたが、最近、柵の中にシカの糞があった。柵を飛び越えたのだろうか。助走なしに高さ1.5メートルの柵を飛び越せるのだろうか。菜園だけでなく、植えた草花、野草などが軒並み食べられている。ギョウジャニンニクが全部食べられてしまったのはショックだった(写真上)Hpp4250942これから先、ウドやワラビ、タラの芽、イタドリなどすべて食べられてしまうだろう。シカに異変が起きていることは明らかだ。異常に繁殖してしまい、餌が足りなくなってしまったのだろうか。それとも、異常気象で森の中の植生が変わってしまったのだろうか。何か事件が起きていると言わざるをえない。私たちの山小屋生活の危機である。現在、対策を検討中だ。 (写真右上は食痕のそばに残されていたシカの体毛)

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2010/04/25

テンの顛末 八ヶ岳山麓No.98

4月24日ののようすHpap4240862_2

 最低気温は-5度Cだった。1~2センチの積雪があり、雪景色に変わった。標高1300メートル以上の八ヶ岳山麓では驚くほどのことではない。かつては連休でも雪が降った。早朝、犬と散歩をしようと玄関を出ると、薄雪が積もった階段の上に大きな足跡がある。肉球の大きさからテンの足跡だと断定した(写真上)。一度階段を上り、ドアの前まで来てまた降りて行った。右側通行で往復したのである(写真下 中央は私の足跡)。 

Hpp4240842_2 階段の下段では上るときも下りるときも、足跡は2段跳びである。テンはいろいろな歩き方をするようだが、もっとも通常の歩き方は「尺取り虫型」である。階段を上るときもそのようだ。後足でしっかり蹴って前進する。後足の大きな爪痕がしっかりと残されている。あらためて爪の力強さに驚いた。下りは爪痕がない。動物図鑑によると、テンの肉球は前足より後足のほうが大きく爪も長い。これが木登りと“木降り”を得意にしているのだろう。

Hpp4240874_2 以前、釣りをしていたら、上流からテンがこちらに向かって歩いて来た。いいテンポの「尺取り虫歩き」である。私の存在は眼中にないようだ。テンは獰猛だと聞いていたので、腰に差したナイフをつかんで身構えていた。テンは、私から数メートル離れた木に5~6メートル登り、すぐ逆さになって降りてきた。テンにはよくある行動だ。いよいよこちらに向かってくるかと思ったら、目の前を通過して下流へ向かった。私はホッとした。身の危険を感じる突然の出来事だったので、カメラを構えるのを忘れてしまった。写真家として、まだ修行が足りない。 (写真右上は雪面の足跡)

Hpp4240921_2 山小屋の周辺を調べてみると、歩いたルートがわかった。薄雪のおかげだ。山小屋前の車道から入ってきてコンポストに上がったようだ。コンポストは、しばしば野生動物のターゲットになっている。だれの仕業かわからないが、コンポストはしばしば蓋が開けられ、中身がかき回されている。この日、テンは蓋が開かなくて地団太踏んだのではないか。ダンスを踊ったように足跡が乱れていた(写真上)。そこから玄関前に向かったようだ。その後、山小屋の裏に回って帰った?Hpp4240890_3 林床の薄雪に残された足跡なので、何匹のテンがいて、ほかにキツネやタヌキがいたのかなど、詳細は私の探索力ではわからない。しかし、氷点下の森の中で動物たちが活動していることはわかった。 (写真右はハーブの枯れ枝に積もった雪)

【補足】 4月22日の朝日新聞朝刊『天声人語』に興味ある記事が載っていた。参考にしたい部分の要旨は、「テンは林業の害になるウサギの天敵(益獣)として佐渡島に導入された。トキを殺すと害獣呼ばわりされる。Hp人間のつごうで野生動物は益獣にも害獣にもなる」「人と動物、人と自然という対立軸を捨て、私たち人間は『ジグソーパズル地球』の遊び手ではなく、大きめの“一片”とわきまえたい。おごらない共生の視点から、人がこの星に招いた災いの出口が見えてくる」。すなわち、野生動物と人間は同格だといってよいだろう。

 私は、トキが殺されたニュースで、監視カメラの映像を見た。動物の大きさと色、動きからすぐテンだとわかった。そして、襲われたのは管理の失策だと思った。テンの存在と行動を知っていればこの事件は防げたのではないか。テンの行動をときどき観察し、シカに畑や庭を荒らされている自身の経験から、野生動物の知恵と必死の行動を知っている。当事者は野生動物に対する認識が甘いと感じた。それに莫大な予算があるのだから…。私たちは、今、シカの害を防ぐ対策を練っているが、難物である。

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