2011/09/07

実科学校 ドイツNo.107

多様な進路コースと価値観…10歳で進路を考えるHpp6071975

 ドイツ語の「Realschule」は「実科学校」と訳す。日本の専門学校に相当する。ヴァッサーブルグには国立の実科学校があった。校舎の壁面にボルダリング(岩登り)用の施設があるのを見て、エキスパートを養成する心意気を感じた。Hpp6071985ボルダリングは、登山家が登攀技術として習得する特殊技能である。習得には命がけの(ザイルで確保はされている)訓練を要する。優れたバランス感覚と筋力、テクニックが求められる。それが、学校の壁面に堂々と設置されているのだから、やる気満々ではないか。たとえ山岳ガイドを目ざさなくても、ボルダリングは心身を鍛えるだろう。

Hpp6072005 ドイツでは、日本の小学校に相当する基礎学校(Grundschule)で4年間学習すると(10歳になっている)、自分の将来の進路を決めるチャンスができる。このとき3つの選択肢があり、自身が進みたいと思っているコースを選ぶ。州による違いと複雑な制度を簡単には解説できないが、3つのコースとは、 大学に進学するための資格を取得するためのギムナジウム(Gymnasium 修業年限7~9年)、 職業教育学校や専門上級学校への入学資格を得る実科学校(Realschule 修業年限4~6年)、 以上の2コース以外の生徒が選択する義務教育で、Hpp6071999職人や工場労働者を目ざす基幹学校(Hauptschule 修業年限4~6年)である。

 の実科学校は、おもに民間企業の事務職や中・下級公務員を目ざすコースだという。ヴァッサーブルグの実科学校には、10歳から15歳ぐらいまでの学生が学んでいるのであろう。さて、選択した3コースそれぞれで資格を得て上級のコースへ進む。しかし、そのときの選択は決定的なものではなく、コース変更のチャンスにも恵まれる。10~11歳のときは、オリエンテーリング段階としてコース変更が可能だ。また例えば、実科学校卒業後、ギグナジウムへ転校することもできる。このあたりの柔軟性はドイツならではであろうか。いずれにしても、子どもは10歳で自身の将来を考え、国や州はそれに応える制度を準備しているということだ。

 地方分権であるドイツでは、教育制度は17州それぞれが権限をもっている。連邦(国)としての共通部分はあるにしても、基本的には州によって決められている。すなわち、州別の多様な教育制度と10歳でのコース選択がドイツの大きな特長だ。Hpp6071990日本の文部科学省が統括する単一な制度とカリキュラムとはだいぶ違う。一見、ギムナジウムはエリートコースに思えるが、他のコースからも最高の職業資格であるマイスターへの道が開かれている。ドイツでは、マイスターは大学教授に匹敵するという。マイスターは技術系の頂点であり、大学教授は教育界や学界の頂点になる。もちろんマイスターになるには厳しいキャリアを経て試験に合格しなければならない。しかし、日本では考えらえない資格制度があり、多様な価値観が根づいているのではないか。なお、ドイツでは原則として義務教育から大学まで学費はかからない。一部の私立以外は国が負担するという。

Hpp6092684 実科学校のSportplatz(校庭)でサッカーに興じる学生たちを遠くからながめた。午前中だったので体育の授業であろう。幸せそうだなと感じたが…。ところで、子ども公園をのぞいたら、子ども用のボルダリング設備があった。子どものころから岩登りを意識しているのだろうか? 子どもたちの置かれた環境と、親たちの育児観をかいま見た。 参考文献:『ドイツハンドブック』(渡辺垂範 編 早稲田大学出版部) 『ドイツ連邦がよ~くわかる本』(大野是 著 秀和システム) 『異文化としてのドイツ』(岩村偉史 著 三修社)

参照: 『ゆとりを生かせない日本 ドイツNo.34』 『ヴァッサーブルグの第一印象 ドイツNo.98』

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