初夏の大物釣行記 八ケ岳山麓No.77
ブログにはいろいろな目的や意義がある。私の主意はプロフィールに書いているが、自慢話もそれに加えたい一つだ。私は、ふだん自慢話はしないことにしているが、ブログでは控えないことにしている。ブログはミニコミであるうえに、読んでくれる人は気心が知れているので、「ア、いつもの話だ」と無視してくれるだろう。また、検索などで私のページへいらした方には、とりとめもない話に、すぐ退散するであろう。
自慢話をすることは、精神の健康につながるのではないか。自慢の事実を思い出しながらにんまりすることは心地よい。逆の立場に立つと、おもしろい自慢話は歓迎だが、それはめったにない。私も、他人にはつまらない自慢話をしよう。
6月21日は、午前中、雨だった。夕方、渓流へ入ったが、やや増水という感じだ。水は澄んでいる。つりには絶好の条件だ。増水による細濁りは釣果に結びつくかもしれないが、釣り人にとっては、やや姑息な手段である。なぜなら、相手を煙に巻いて切りつけるようなものだからだ(もちろん水を濁すような行為はしたことはない)。澄んでいれば、魚と対等に渡り合える。森には低い日ざしが入り、影をとられやすい。真剣勝負には願ってもない条件だ。
小さな落ち込みで12センチのイワナが釣れた。すぐ放流し、1段上の中渕へ移って15センチが釣れた。針を外そうとして竿を倒し、先端から2段目を折ってしまった。今日は中止しようかと思ったが、少しでも初夏の渓流に立っていたかったので、竿の折れ目を粘着テープで補強して上流へ向かった。雨上がりの渓流は実に気持ちが良い。それに、魚の出方が活発だ。先行者は入っていないし、どこでも釣れそうだ。
実績のある大渕に出た。ポイントはたくさんあるが、まず渕尻へ餌を投げた。先行者がいないとき、盛期の魚は渕尻で流れてくる餌を待っている。今まで近づきすぎて渕尻から魚が逃げる場面はしばしば見てきた。渕尻から攻めるのは定石だ。腰を低く構えた1投目で魚が戯れている手ごたえを感じた。軽くあわせると強烈な引きで抵抗された。魚は対岸へ逃げようと必死だ。手前に引き寄せられない。折れた竿は完全な調子ではないので、力任せにはできない。2分ぐらいやり取りしてからハリスを切られて逃げられた。
イワナは、一度バレてもまた餌を追ってくる。針と餌を新しくして再度振り込んだ。前回よりは渕の奥、落ち込み(小さな滝)近くだ。そこからゆっくりと手前にナチュラルドリフトする。目印に変化が出た。あきらかに食っている。ゆっくり合わせたが、竿が弓なりになるほどの引きだった。魚は対岸のぶっつけ(写真上左の右部の岩)に向かって引いていく。水面下には絶好の隠れ家があるのだろう。いつも誘いをかけていた場所だ。読みは当たっていた。そこに引き込まれないよう懸命に竿を立てた。しかし、急に竿が空を切った。ハリスを切られて、またバレた。あきらかに同じ魚だ。
もう一度チャレンジするために、針を大きくしハリスも太くした。食いついたところは渕のほぼ中央だった。やはり強引な暴れ方だ。ランディングネットは持参していないので、岸に引き寄せることは難しいと判断し、強引に抜き上げた。アユ釣り師が魚を取り込むやり方だ。落ち葉の上にズシッと落ちたのは約27センチのイワナだった。撮影はたいへんだった。静かになったと思ってカメラを構えると、思い出したように暴れだす。実は夕食のおかずを釣りに来たのだが、撮影しているうちに食べる気がしなくなり、放流した。大きな魚には情が移るのである。この勝負、後味の悪い勝ち方だった。
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