2017/01/11

氷の神秘性 八ヶ岳山麓No.205

〔動と静の葛藤〕
 冬の八ヶ岳山麓で最も魅力的な被写体は氷である。氷は固体と液体(水)の間で千変万化し、二度と同じ形にはならない。冬の渓流では、水の凝固と氷の融解が繰り返し起きている。人がコントロールできないという点では、氷は神秘的な存在だろう。Hpp1017370_2 結氷するには氷点下の寒気と着氷するための核が必要だ。水は氷点下になると、近くにある岩や流木の枝など、時には同じ氷などを“探して”氷になって付着する。結氷のし方にもいろいろある。Hpp1017381しずくが垂れてできる氷柱(つらら)、水流の飛沫が着氷する飛沫氷柱や飛沫着氷、空気中の水蒸気が昇華して直接個体になる霧氷などだ。それに流速や水位、流路、気温、風が影響する。これらが複雑に絡み合って氷は発達する。水温は約8度Cであるうえに流れているので、気温が0度Cではなかなか凍らない(凝固しない)。Hpp1017373_5流れが速いほど凍りにくい。渓流で水温が0度C以下になり、気温が氷点下3~5度Cぐらいなる必要がある。撮影に適した氷が発達するには一日中氷点下の日が3日ぐらい続く必要があるHpp1017412Hpp1017385_3氷も水も水の分子H₂Oで構成されているが、液体の場合は、分子が自由に動けるのに対して、固体は分子が結晶を作って、塊状になる。すなわち、水の「動」に対して、氷の「静」といえる。どちらも、自分の存在を維持しようとしているので、冬の渓流には、動と静の葛藤があるといえるのではないかHpp1017362_edited1_2Hpp1017394_2

                                        

〔氷写真の先駆者・清岡惣一〕

 氷の写真の先駆者として清岡惣一氏(1915~1991年)を挙げたい。清岡氏の写真集『清岡惣一の世界』(1993年 日本カメラ社 刊)には、多くの氷写真が掲載されている。Hpp1021502この写真集には、モノクロの作品が73点掲載されている。その中に、冬に撮影された作品が21点あり、そのうちの15点が氷(雪)の写真である。すべて日光中禅寺湖で撮影されたものだ。清岡氏は、1976年、東京・ペンタックスギャラリーで個展『雪と氷の湖畔・日光中禅寺湖』、1977年、金沢・名鉄丸越デパートで個展『雪と氷の湖畔』を開催している。残念ながら、私はどちらも鑑賞していないが、写真展のタイトルからも、清岡氏の氷に対する想いが伝わってこようというものだ。

 本写真集は、清岡氏が亡くなられてから刊行された。贈呈用の写真集に、清岡静子夫人が書かれた「御挨拶」という一文が別刷りで添えられてあった。奥さまが書かれている要旨は次のようなことだ。「病床にて故人自らが掲載作品の選定に最後の力を注ぎ、その後、多くの有志の方々の温かいご支援とご協力のもとに、完成したものです」「今、この故人の集大成とも呼ぶべき作品集を手にすると、満たされたときの主人の微笑みが思い起こされてなりません」とある。ページ構成を見ると、清岡氏は氷の写真に特別な想いを持っていたと推察できる。Hpp1021522私が言いたいことは、清岡惣一氏が氷の撮影に心血を注いでいたということだ。
 氷の撮影は、決して楽なものではない。氷点下の水辺での撮影は、指先がかじかんで、カメラ操作が思うようにできない。しかも、うっかり足を滑らせて、尻もちをついたり、衣類を濡らすと、衣類はすぐバリバリに凍ってしまう。すなわち命懸けである。清岡氏の撮影の緻密さと忍耐力は、推して知るべしである。私は、中禅寺湖畔でカメラを構える清岡氏の姿を想像した。

 カメラ雑誌の取材で、一度清岡氏にお会いしたことがある。そのとき、清岡氏の撮影姿勢と作風に好感をもった記憶がある。当時は被写体としての氷には注目していなかったのだが、実際に私が八ヶ岳山麓の渓流で氷を前にしたとき、清岡氏の心の奥底にあるものに触れた思いがした。私の氷写真の原点は清岡氏に負うところが大であると思っている。

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2015/12/31

2015年12月下旬の森のようす 八ヶ岳山麓No.190

フォトレポート『暖かい冬』…沈黙の森から
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 山小屋周辺に住んでいる方々が、「今冬は暖かい」と言っているので、今までのところは、あきらかに暖冬のようだ。滞在中の最低気温は、28日の-11.5度Cだった。それ以外は、0度C~-7度Cぐらいで、一日中氷点下の日は一日もなかった。積雪はまったくなく、おかげで珍しい植物を観察できた。しかし、この時期が絶好の氷の撮影はお預けだ。八ヶ岳の冠雪も少ない。12月下旬の森のようすをレポートする。

●八ケ岳 12月25日の赤岳と阿弥陀岳(左)Hppc250199_2
●ツチグリ この時期には珍しいキノコ。タコの足のような外皮は湿ると開き、乾燥すると閉じるという。食用にもなる(写真最上)

●クレソン 湧水の近くに自生している。サラダに添えて食べた ●アオミドロ 緑藻類に属し、光合成をする原始的な植物。少し清水が流れ込む池に発生していた。この時期には珍しHppc242572いか?Hppc280294_3




                                               

●結 氷 夕刻、氷点下4度Cに冷え込んできたとき、みるみるうちに落ち葉を取り込んで結氷していたHppc270119_2
●カサゴケモドキ 初めて見たコケだ。蘚類に属するHppc260390

●十八夜の月 今年はクリスマスイブ(12月24日)が満月だった。28日の朝は、八ヶ岳赤岳の頂上を滑るように沈んでいったHppc280253

Hppc242586_edited1●ノダケの果実(種) セリ科の多年草植物。つぼみは、総苞に包まれた鞘の中で成長し、複散形花序の暗赤色の花をつける

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2015/03/04

写真展『厳寒のざわめき』 予告 八ヶ岳山麓No.172

第2回 豊田芳州ネットギャラリー写真展「沈黙の森から」
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 『ドイツの栄光』展に続いて第2回目のネットギャラリー写真展を開催する。八ケ岳山麓でのライフワーク「沈黙の森から」の氷雪編ともいうべき写真展だ。題して『厳寒のざわめき』である。冬の八ヶ岳山麓(標高1400メートル)の寒気は厳しい。生物はほとんど活動を休止している。雪と氷で閉ざされた森の中で聞こえるのは、渓流のせせらぎと枝をかすめる冷たい風音だけだ。しかし、雪面に残された足跡は、野生動物の命がけの生活が読み取れるし、渓流には宝石のような氷が発達していて、私たちの目を楽しませる。八ケ岳山麓の森から、冬のざわめきをレポートする予定だ。 ネット・ギャラリーのメリット・デメリットについて、第1回展の予告記事 (リンク)を参考にしてほしい。

 

◆期 日:2015年3月25日(水)~31日(火)
ネットギャラリー:
『豊田芳州のTheme』 http://silent-forest.cocolog-nifty.com/

 

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2014/01/01

あけましておめでとうございます               八ケ岳山麓No.158/横浜No.72

皆さまの新年の平穏をお祈り申しあげますHppc300578_2
 年末は八ヶ岳山麓で過ごした。12月29日は、最低気温が-13.5度Cで、一日中氷点下だった(標高1400メートルの山小屋で)。やっとめぐり合った寒気だったので、渓流の霧氷を撮影した。Hppc290283今冬初である。枯葉の先端部に発達する霧氷を撮影していると、枯葉にもわずかにエネルギーが残されていて、それがひと花咲かせたようにみえる。 (写真上は12月30日現在の八ヶ岳連峰)

中華街で2014カウントダウン

 横浜ではいくつかの名所でカウントダウンの催しがあるが、私は中華街を選んだ。中華街は、歴史的にも、地理的にももっとも横浜らしいエリアである。Hppc310640そのうえに、竜舞と獅子舞の動き、爆竹の響きが新年を迎えるのにふさわしい。2013年12月31日の午後11時40分から横浜中華学園の校庭で、夜光龍という龍舞が催された。ブラックライトによる照明だけで竜舞を演じる。蛍光塗料を塗った龍の衣装が紫外線でわずかに明るく見える。カメラのISO感度を3200に設定しても、F2.8 1/13秒でしかシャッターがきれない。超過酷な撮影だった。

Hppc310738_2 カウントダウンが始まり、新年の0時になり、会場の全員で「コンシン・シンネン・クヮイロー」(中国語がこのように聞こえた)と合唱したあと、獅子舞が始まった。銅鑼と太鼓の小気味好いリズムに合わせたは獅子舞は、いつみても元気づけられる。ステージの演技なのでアクロバティックだ。Hpp1010784獅子舞のほうは、ISO2500 F4 1/160秒でシャッターがきれた。このころになると、町のあちこちから爆竹の響きが聞こえてきた。私は、新年を迎えた喜びをかみしめた。

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2013/04/06

『写真は発見・発明だ!!』

第6回 霧が丘写友会写真展Hp2013dm_4

 私は、写真専門学校の教壇で、「写真は発見・発明だ!!」という課題を学生に出した。渋谷の街で、足とカメラを使って何かを発見して撮ろう、そして今までにない画面を創ろうという課題だ。発見の例として「コロンブスのアメリカ大陸の発見」や「ニュートンの万有引力の発見」を挙げた。発明の例としては「エジソンの電球や電話器の発明」を挙げた。これほどの大発見や大発明はできないまでも、今までだれも気づかなかった物や事を見つけて、写真にしてみようと指示したのである。これは、プロ写真家の使命であると考えたからだ。

 私は、シャッターをきりたくなる動機として8大モチーフというのを提唱している。その3番目に「発見・発明」がある。私たちは、珍しい稀有な被写体を発見したときにはシャッターをきりたくなるのではないか。それが「発見」のモチーフである。自身が発見した対象を自身の実績として残したいのは当然だ(記録欲)。Hp2013dm_5それを他人に見せたいというのは人間の本能ではないか(顕示欲)。「発明」というのは、今までにない被写体を作ることを意味する。例えば、コマーシャル写真の被写体状況は、写真家やデザイナーが創った今までにないものがしばしばだ。また最近は、テーブルトップフォトという分野が注目されていて、選んだ被写体を目の前で組み合わせ、アレンジして撮る写真がある。これは発明と言えるだろう。また、写真は画面で見せるので、Hp2013今までにない大胆でダイナミックな画面を創ることも発明にあたると考えられる。一方、写真の観賞者は、初めて見る新鮮な被写体と画面を期待するだろう。写真にとって「発見・発明」は大切な命題である。

 ところで撮影とは、被写体を見つけ、それを撮影テクニックを駆使して画面に構成することである。理想的には、被写体は「発見」されたものでありたいし、画面構成は「発明」でありたい。すなわち、「写真は発見・発明」という言葉には、写真撮影の理想像が込められている。Hpp1090542私たちは、いつも新鮮な被写体を見つけて、新鮮な画面を創造していきたいものだ。

 霧が丘写友会は、今までに「自然の表情」と「タイムトリップ」(時間)という、8大モチーフのうちの二つをこなしてきた。今回のテーマ「発見・発明」は三つ目になる。開催要項とあいさつ文を以下に掲載する。 (表上右 作品一覧(ポップアップ可)。写真左 会場風景)

会期:2013年4月9日(火)~14日(日) 10:00~16:00(9日は13:00~) 会場:横浜市都筑区総合庁舎1階・区民ホール(写真上左のDM参照 ポップアップ可

〔あいさつ文〕 優れた写真には、何らかの発見があるものです。カメラのファインダーをのぞくと、観察が鋭くなり被写体が新鮮に見えてくるのでしょう。また、被写体と自身との関わり合いも見えてきます。新しい発見や発明をしたとき、それを記録したくなるのは人間の本能ではないでしょうか。シャッターを切りたくなる動機はさまざまですが、私たちは、発見・発明に焦点を合わせて撮影しました。カメラを通した発見・発明には、次の3つの条件があります。
 Ⅰ カメラポジション(特別な場所)/Ⅱ シャッターチャンス(特別な瞬間)/Ⅲ 私たちの内面(心に浮かんだイメージ)
 作品を以上3つのカテゴリーに分けて展示いたします。ご高覧いただけたら幸いです。    2013年4月9日   霧が丘写友会一同/講師:豊田芳州

Hp_p3110195 私は『クリスタル・ライン』を出展した。クモの糸に発達した霧氷の写真だ。八ヶ岳山麓の水辺で撮影したもの。当時は氷点下10度Cだった。風で揺れていたので気づいた。糸の長さは7センチぐらい。私にとっては大きな発見だった。【撮影データ】 オリンパスXZ-2 I.ズイコーデジタルED6~24ミリF1.8~2.5(6ミリ<35ミリ判換算28ミリ>で撮影) 絞りF4 オート -1.0EV補正 ISO250 WB晴天

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2012/05/13

「永 遠」をプレイバック

第10回 ヌービック・フォト・フレンズ5 写真展Hp12dm_0001_2

 現在の若い人々がうらやましい。パソコンや携帯、ゲームやダンス、多様なスポーツなど、私たちが10代から20代のころにはなかった遊びやエンターテインメントがたくさんある。学問や仕事、食べものなどの選択肢も豊富だ。一方、ボランティアへも積極的に参加する若者も立派だと思う。ボランティアは歳をとってもできるはずだが、やはり気力がついていかない。若者のその気力と体力もうらやましい要因の一つだ。

 写真界で我々中高年にできることは何だろうか。当然、若者がやらないこと、またはできないことに取り組まなければならないだろう。私たち中高年は、自身の過去や歴史を生かしつつ、人類の個体発生と系統発生を学びながら写真に取り組みたいものである。Hp12dm_0002ヌービックフォトフレンズ5(NPF5)の今回のテーマは「永遠」である。写真は、現在を記録し残すことが第一の役目である。言葉を代えてそれを言えば「永遠」ではないだろうか。ヌービックが書いたあいさつ文作品一覧(ポップアプ可)を以下に紹介しよう。

第10回 NPF5 写真展 「永 遠…残したい光景 プレイバック

会場:かなっくホール ギャラリー/会期:2012年5月15日(火)~20日(日) 10:00~18:00(初日は13:00から、最終日は15:00まで)

 街歩きをしたときや旅に出たときに、ふと見た風景、あるいはお祭りなどの行事に出会ったら、「これはいつか見た光景だな」と思ったことはないだろうか。それは遠い昔の子供の頃の思い出に繋がっているかもしれない。いや、ひょっとすると、ただ単にかつて脳裏に焼き付いていた写真や映像の再現に過ぎないことだってあり得るし、心象風景だった可能性もある。でもその光景を見たときは、Hpp5170834Hpp5160803懐かしくて、永遠に残しておきたい、変わらないでほしいという心情が込み上げてくることは誰にでもあると思う。一方、現在目にしている風景も、後になってみれば、懐かしくなり、残しておきたいと思うことだって考えられる。今回の写真展はこのような「永遠に残したい」という観点に着目して作品作りに取り組みました。各々の作品には撮影者の残したいという意志と写真の記録性が交差して、永遠に何回でも、いつでもプレイバックできるという意が込められています。カテゴリーは、時間の経過とともに変化していく「時の流れ、変遷」、永遠に繰り返される「自然の摂理」、自分自身の過去を振り返るような「あの日、あの時」、敬虔な気持ち溢れる「敬う心」、誰もが懐かしさを感じる「心のふるさと、伝統」の五つに分類しました。 (写真上左 展示に合わせて制作した写真集 写真上右 会場風景 写真下右 5月18日付の神奈川新聞記事)Hp2012_3

Hp20120518_101457_3 私も1点出品した。厳冬の寒気が作った枯れ葉と霧氷のデュエットである。つかの間の命とわかっているが、永遠に残してやりたい光景なので、それを讃え、「自然の摂理」のカテゴリーへ「宿命へのあがき」(写真下)として展示する。【撮影データ】 オリンパスXZ-1 ズイコーデジタル6~24ミリF1.8~2.5(6ミリで撮影 35ミリ判換算28ミリ) スーパーマクロモード 絞りF6.3 オート(1/500秒) -1.0EV ISO200 WB晴天Hppc104245_4

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2012/02/24

森の中の葛藤 八ヶ岳山麓No.135

自然界の厳しさ…人類の過去にもあったことHpp2134930_3

 冬の森は閑散としている。そのため、“住人”のようすがよく見える。生活だけでなく育ちや素性までもわかるのだ。一般に自然環境はたいへん厳しい。冬は特にそうだ。ほとんどの動植物は生きるか死ぬかの瀬戸際で生活している。彼らは厳しい環境に耐えながら、ほかの種や仲間と闘っている。ときには、その勝敗までわかる。私の自然写真のテーマは「沈黙の森から…From the Silent Forest」だが、自然界の厳しさを伝えるのが主旨である。厳冬の森で見つけた自然界の厳しさと葛藤を紹介しよう。

Hpp2137800_2寒気と闘う知恵(写真左) 多くの植物は、氷点下の気温では生活できない。コートを着たり移動できない植物は、種子になったり、葉を落として冬を越す場合が多い。シダなど一部の植物は、冬になるとロゼット状に葉を伏せて寒さに耐えながら越冬する。大気の低温と風から身を守るためだ。そのようすは、人間の挙措のようにも見える。ロゼット状のシダを見ると、必死にふるまう人間のようだ。

Hpp2137866種間競争(写真右) 倒木を見つけた。ひと目、強風か雪の重さで倒れたのかと思った。近寄ってみると、つる植物に引き倒されたのだわかった。Hpp2248476_4胸高直径20センチぐらいの高木のそばに直径数センチのツル性樹木がかぶさっている。おそらく、高木はツル植物が成長するにつれて幹を締め付けられ、何かのきっかけで耐えられなくなったのだろう。今までにもツル植物に締め付けられている大木を何例も観察してきた。森林内ではよくあることだ(写真左参照)。ちなみに葛藤とは、葛(クズ)や藤(フジ)などのツル植物がもつれ合う意からきた言葉だ。

地中での攻防(写真下左) 山道ふさぐように倒れている樹木があった。道路にはみ出した部分は伐採されていたが、根もとから3メートルぐらいはそのままだった。近づいて観察すると、根が数個の岩を抱えている。Hpp2137936_3一般に、樹木の根は自身を支えるために土中へ深く伸び、水を吸収するために水平に広がる。この二方向に根を張って樹木は生きていける。伸びようとする根の周りに岩があると地中深く伸びにくい。それは、幹を支えきれず倒木の要因になる。目の前の樹木も深く根を張れずに倒れたのである。根は地中で岩と闘っているのである。人類もかつてはこのような葛藤を繰り返してきたことを忘れてはなるまい。耐寒や障害の克服(環境への適応)、種間・種内競争(対立と紛争)は、現在も続いていると言えないか。

霜柱のパワー(写真最上右) 地中の水分が毛細管現象で地表にしみ出して凍結するのが霜柱だ。そのとき、地表を覆う土や落葉、落枝などを押し上げる。そのパワーは強大で、大きな岩や倒木まで動かす。鉄道の線路や家の土台までも押し上げる力がある。先日、巨大な霜柱を発見した。高さ30センチ以上、15階建ての高層だ。一日でこれだけ高くなったわけではない。観察によると、霜柱は1日平均2~3センチ高くなり、15日以上続いたようだ。これだけの霜柱を観察したのは初めてだった。霜柱の上には倒木の根が乗っていた。この霜柱で持ち上がったのか、継続して観察していないので不詳だ。しかし、線路を動かすほどのパワーを霜柱はもっている。倒木を浮き上がらせても不思議ではない。いずれにしても厳寒期の森には、凍結の膨張力と重力との大きな対決がある。

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2012/02/18

横浜写心倶楽部写真展

                       大倉山エルムフォトクラブ写真展紹介

「心の琴線にふれた光景」Hp12dm

 琴線とは琴の糸のことである。人情に置き換えると、感じやすく、琴の糸のように共鳴することを意味する。作品展のタイトル「心の琴線にふれた光景」とは、微妙に感じとったことが自身の中で拡大し、長く続くことである。感動の一つの状態だ。微妙であることと、共鳴し心に残ることがポイントだ。

 写心倶楽部は、結成から10年になる。写真活動をとおして、互いの人生観までも普段着のままで話し合えるクラブになったという。写真を“写心”と書くところにクラブの特長が表れている。「心の琴線にふれた光景」というタイトルもぴったりだ。第6回目の写真展を迎える。ご高覧いただけたら幸いだ。

Hp12dm_3会場:港南区民文化センター「ひまわりの郷」(左のマップ参照 ポップアップ可)/会期:2012年2月16日(木)~22日(水) 10:00~18:00 (初日は14:00から 最終日は17:00まで)Hpp2160432Hpp2160423

 私は、八ヶ岳山麓で撮影した霧氷の写真「寒気のちょっかい」を出品した。1本の葉柄がほかの葉を突き破ったところに霧氷が付き、“ちょっかい”になった。水辺の落ち葉どうしが起こした小さなドラマである。Hppc244808【撮影データ】 オリンパスXZ-1 ズイコーデジタル6~24ミリF1.8~2.5(6ミリで撮影 35ミリ判換算28ミリ) スーパーマクロモード 絞りF7.1 オート(1/250秒) -0.3EV ISO320 WB晴天

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2012/02/08

『輪・話・和』…ミステリー・リング

写好会MARO 第七回写真展Hpmaro_dm_3

 私がコーチを務める写好会MAROの作品展を紹介する。同クラブは、テーマが表すとおりチームワークの良いグループだ。メンバーの総意で『輪・話・和』というすばらしいタイトルとテーマを考え、多様な解釈で撮影している。以下に要項とあいさつ文を掲載する。

会場:海老名市民ギャラリー 第一展示室/会期:2月8日(水)~13日(月)10:00~17:00 初日は13:00から 最終日は16:00までHpmarodm

〔あいさつ文〕 私たち「写好会MARO」は作品展のテーマを大切にしています。今回は、まず「輪・話・和」というタイトルを考え、それを元にテーマを構成しました。 「輪」の原意は「車+侖(リン)」で車輪を意味します。円、丸、リング、ループ、輪郭など、形を意味するだけでなく、輪番、輪読など、人々が集まり力を合わせる意もあります。Hpmarop2087045_2Hpmarop2087058「話」は人間のコミュニケーション手段です。私たちが仲よく暮らせるのは話のおかげです。 「和」は「平和」に代表されるように、仲よく協力し合う気持ちや、うまく調和がとれているようすのことです。 「輪・話・和」は単なる語呂合わせではなく、それぞれに共通の意味を探りテーマとし、人々が和やかに仲よく過ごせる場面を撮影しました。ご高覧いただけたら幸いです。  写好会MARO一同Hpmarop2087068

 私は、霜柱を撮影した「ミステリー・リング」 (写真下)を出品した。リング状に結晶した理由がわからないのでミステリー・リングと名づけた。使用カメラはオリンパスXZ-1。自由度の高いカメラポジションならびにアングル選択、Hppc245015高性能のスーパー・マクロAF、シャープなレンズなど、同機の機能と性能を十分に生かせたと思う。

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2012/01/11

にぎやかな氷点下の森 八ヶ岳山麓No.133

厳冬期の森のようすフォトアルバムHpp1084786

 1月上旬は、連日、最低気温が-13度Cまで下がった。もちろん日中も氷点下である。野辺山では-20度Cを記録したという。私たちの山小屋(標高1400メートル)は、野辺山の観測点より標高は高いが最低気温は高めである。山の陰で風が少ないのと、屋外とはいえ山小屋の暖気が温度計に影響しているのではないか。この寒さで渓流の氷は発達し、水温の高い上流では、毎朝、霧氷ができる。冬の撮影は最盛期に入った。

 ファインダーで被写体を探すと、冬の森がバラエティー豊かでにぎやかなことがわかる。氷や霧氷など視界はきらびやかだし、哺乳類はもちろん、昆虫の活動も観察できる。厳寒期に活動する昆虫を見ていると、時間(時期)的に棲み分けて適応しなければならない自然界の厳しさを実感する。しかし、私の知識ではそれらの昆虫を同定できないし、生活形も不詳だ。氷点下の森のようすをアルバムにまとめてみた。

「氷変化」(ひょうへんげ)(写真上右 渓流の氷)

「厳寒の八ヶ岳山麓」(写真下左) ●「アイスキャンデー」(写真下右 渓流の氷)Hpp1065785Hpp1086149

「綿菓子」(渓流の霧氷)(写真下左) ●「植 毛」(写真下右 渓流の霧氷)Hpp1055635Hpp1085909

「オアシス」(写真下左 氷面下の陽だまりでうごめく水生昆虫) ●「冬の縄張り」(写真下右 氷点下で活発に動く昆虫)Hpp1086023Hpp1085976_2

「皿回し」(写真下左 円盤状に発達した渓流の氷) ●「孤 独」(写真下中 キツネの足跡) ●「ミイラ」(写真下右 ドライフラワー)Hpp1055743Hpp1055618_2Hpp1075850_2

                      

                      

                     

                     

                     

「氷鉱石」(写真右 結晶状態の雪面)Hpp1075872

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