標高1400メートルの寒さ 八ヶ岳山麓No.115
八ヶ岳の積雪は少ない。山腹の雪は赤岳山頂付近までまだら模様だ。それだけ今冬は寒いと言える。冬型の気圧配置が続いているので、日本に吹きつける西風の湿気は日本海側で雪になってしまい、内陸部には達しない。
冬、山小屋に到着すると、まずユーティリティーを立ち上げる。水道管に巻きつけたヒーターの電源を入れて水を通す準備をする。10分ぐらいたってから、すべての蛇口を閉めて水道の元栓を開けるのだが、パイプの途中が凍っているらしく水が出ない個所がある。だいたい蛇口付近が凍っているので、ドライヤーで暖めたりお湯をかけて解かす。なんだかんだで、ユーティリティーが完全に立ち上がるまでに1時間はかかる。これが厳冬期に山小屋へ来たときの作業である。帰るときの水抜きも油断できない。点検を見落とすと水道管が破裂する羽目になる。
27日夕刻、到着時の室内は-5度Cだった。15度Cになるまでに3時間はかかった。山小屋は安普請なのでやむを得ない。厳寒時の室内の常温は15度Cと決めている。20度Cを保つには灯油の消費量が倍近くかかるからだ。厚着で15度Cを乗り切るのである。慣れると、都会の20度Cよりは温かく感じられるから不思議だ。寝るときの布団も氷点下である。昔は、自身の体温で温めて眠ることができたが、最近は電気敷き毛布を使っている。それでも、山小屋へ来た初日は足が暖まらない。暖房器具の熱は家を暖めるために使われてしまうからだ。二日目からはだいぶ楽になる。
最近は、ほとんどキツネを見なくなった。しかし、27日の夕方、山小屋へ向かう車窓から、家内がキツネを見つけた。やせ細ってとぼとぼと畑を歩いていたという。キツネにとっても今年の寒さは相当こたえているのではないか。28日の朝、山小屋前の道路にキツネの足跡が残されていた(写真上右)。この時期、ほっとするのは湧水である。真冬でも約8度Cの水が湧いていて、あたりには緑が目立つ。私たちは湧水地に「クレソン谷」と名まえを付けて大切にしている。29日に立ち寄ると、クレソンが寒気に耐えてがんばっていた(写真右上)。湧水地は野生動物にとってもオアシスである。いろいろな動物の足跡が目立つ。私たちは朝食用にクレソンを4本ほど採取した。
この時期は、氷と霧氷の撮影がおもしろい。28日と29日は、浅瀬の霧氷を撮影した。そこは水源に近いので、水温は7度Cと高い(写真左下)。気温は
マイナス数度である。15度以上の温度差が霧氷を作る。水面から蒸発した水蒸気は、すぐ冷やされて固体になる(気体から固体へ戻るときも昇華という)。このとき、そばにある落ち葉や小枝を核にして結晶ができる。これが霧氷だ。霧氷は、寒気が取り持つ水と植物の共演と言えよう。 寒い八ヶ岳山麓へやってくるのは、このドラマを見るためだ。
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