2015/10/11

キノコの家族 八ヶ岳山麓No.184

価値ある分解者の存在Hpp9160140

 私はキノコが好きだ。まず形がおもしろい。種による違い、個体差など、さまざまな形は、ドラマチックであり、メルヘンチックであり、神秘的だ。そして、短時間(1日単位)でその形を変える、変身術の見事さにも驚く。老若(老菌と幼菌)の違いは、人間のライフステージの縮図のようだ。老菌は何の跡形もなく消えてゆく。理想的な生き方ではないか。

 植物が作った葉や茎、木質にはセルロースが含まれている。セルロースは植物体の細胞膜の主成分で、繊維素ともいわれ、物理的にも化学的にも強靭な特性をもっている。その特性を利用して、人類は紙や紐の原料にしたり、セロハン、アセテートなど繊維を作っている。しかし、人間がすべてのセルロースを消費しているわけではない。植物の成長や時間ともに地球上には落ち葉や朽ち木としてセルロースが年々蓄積していく。このままでは、地球上はセルロースでいっぱいになってしまう。

 さて、キノコは菌類といわれ、森の清掃者ともいわれる。森の中で、ある種の菌類は落ち葉や朽ち木(セルロース)を分解して、菌糸を作りキノコを構成する。キノコは腐りやすいので、自然界で腐敗分解し、土壌のとけ込み肥料となる。同時に、キノコは人を含む従属栄養生物の餌になる。一方、ミミズやムカデなどの土壌生物も落ち葉や小枝を食べてセルロースの分解に一役買っている。肥沃な土壌にはミミズやムカデがたくさんいるといわれるゆえんだ。森の中でセルロース(落ち葉や朽ち木)があふれないのはキノコと土壌生物のおかげである。すなわち、キノコと土壌生物は、森の清掃者ということになる。

 生物の『三界説』というのがある。地球上の生物の進化を把握するために生物を『植物界(生産者)』『動物界(消費者)』『菌界(分解者)』の三つに分類しようという考え方だ。また、『五界説』というのもある。こちらは『モネラ界(原核生物 細菌や藍藻類など)』『原生生物界(単細胞生物 ミドリムシや鞭毛虫類など)』『植物界(緑色植物など)』『菌界(キノコ類)』『動物界』の五つに生物を分類している。ここで、注目しなければならないのは、どちらの説にも分解者としての菌界があることだ。菌類(キノコ)は、地球の進化にとって欠かせない存在であったということだ(以上は、概観的な解説であることをご容赦いただきたい)。この事実を知ると、ますますキノコが好きになる。この秋撮影したキノコの一部を人間関係に当てはめてみた。森の中で果たす役割について併せ考えてみたい。

●恋人同士 カラカサタケの成菌と幼菌。親子というより恋人同士のようなほほえましさを感じた (写真最上段)

●孫と祖父母 老菌のようすをみるとこのように感じたが…。キノコの同定は不詳 (写真下)Hpp9210302
●大家族 最近、都会ではめったに見られないのではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hppa090301

●5人兄妹 仲の良い兄妹のようだ。うらやましい家族ではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)Hp5p9220287_edited1

●老カップル ニセショウロ科の老菌。撮影後、たたいてみたら胞子が出てきた。まだ元気いっぱいだ (写真下)Hppa090593

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2014/06/28

衣類の回収ボックス

フランスで見つけたリユースの例
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 パリの滞在中、一日だけ地方へ出かけた。ローマ遺跡があるというサンリス(Senlis)を目ざしてパリ北駅を出発した。途中、列車からバスへ乗り換えるシャンティイ(Chantilly)は、ガイドブックでもページを割いている名所である(写真下左 シャンティイの駅舎)。目的地のサンリスよりは知られた町だ。Hpp6070683_2サンリスについては機会をあらためよう。ここではシャンティイで体験したことについて触れる。パリの北約40キロにあるシャンティイは、フランス競馬のメッカだという(写真右上 バス停に建っている広告塔)。サンリスへ向かうバスの車窓から見えた広大な馬の施設には、ゆとりと風格を感じた。馬具博物館もあるという。

 さて、シャンティイでの乗り継ぎ時間が1時間もある。バス停で時間をもてあましていたところ、すぐ隣りにゴミ箱が3つ置かれているのに気づいた(写真下左)Hpp6070699_22つはガラス製品のリサイクル回収箱、もう一つは衣類のリユース回収箱だった。日本ではめったに見ない衣類の回収箱に引かれて撮影した。Hpp6070702投入口にはみ出した衣類が見える。フランス語の辞書と首っ引きで、書かれていることを翻訳してみた。まず、環境問題を標榜する絵とキャッチコピーが目に入った(写真右)。コピーには「環境と雇用のために日々行動しましょう」とある。そして、この回収箱を利用する規定が次のように書かれていた(写真下左)。「下記の指示に従うように」とあり、箱に入れる規定が書かれている。「提供物はこの中へ。あなたの衣類と布地をきれいで乾いた袋に入れて提供してください。また、あなたの靴も一足をひもでくくって提出してください。革製品もけっこうです」。「汚れた、そして濡れた繊維はお断りします」とある。当局は、シャンティイ地区の町の共同体のようだ。なお、「雇用のため……」という意味が、私にはわからない。私はフランス語にはまったく縁がないので、翻訳がまちがっているのかもしれない。Hpp6070702x_2_2

 最近、衣替えを兼ねて衣類を取捨選択した。捨てようと決めたものの中には、未練が残るだけでなく、十分役立つものがある。それらを有効に活用できたらと考えるのは私だけではあるまい。フランスで見たこの回収箱は地球レベルで有効ではないか。しかし、じゃまなものを捨てるためにこのような回収箱を悪用されることも考えられる。このシステムは人々の良識によって成り立つのであろう。

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2012/08/04

“犯人”はニホンアナグマだった 八ヶ岳山麓No.142

日本の食生活を考える…コンパクトカメラシリーズ42

 山小屋の庭に設置したコンポストのふたが、毎晩、開けられている。中のゴミが目当てだ。犯人の正体を突き止めようと、インターバル撮影の無人カメラを仕掛けた。使用カメラはオリンパスSP-350、5分ごとにシャッターが切れるように設定した。今までに2回失敗し、3回目に成功した。前2回は、コンポストのふたを開ける前に、フラッシュの光に驚いて逃げてしまったらしい。3回目はふたを開けたとたんにフラッシュが光りそのまま逃げたらしい。Hpbp8012890とりあえず1カットに、“犯人”がコンポストに顔を突っ込んでいるシーンを撮影できた。その前後のカットには何も写っていなかった。犯人はニホンアナグマと断定した。 【撮影データ】 オリンパスSP-350 8ミリレンズ(35ミリ判換算35ミリ) 絞りF4.5 1/30秒 ISO400  WB晴天 フラッシュ・オート発光 -1/3EV補正  8月1日 22:12

 アナグマは、丸々と肥っている。この写真から学べることは、私たちが食べ残したものにもかなりのエネルギー(カロリー)が残されているということだ。コンポストに捨てるゴミは、将来、肥料にするので生ゴミだけである。多少の食べ残しも含まれるが、ほとんど調理の屑物だ。これらも、アナグマにとっては貴重なエネルギー源になる。地球上のエネルギーが不足している現在、私たちの食生活にも改善の余地があるかもしれない。そして、アナグマは野生ではないということだろう。

 昨日のNHKラジオ第1放送「夏休み子ども科学電話相談室」で、「なぜキュウリは曲がるのですか」という質問に対して、「キュウリは本来曲がるのがあたりまえ」「曲がっても味はまったく変わらない」(以上要旨)という先生方の答えが興味深かった。市場で曲がったキュウリが嫌われるというのは、流通コストの問題だけではあるまい。商品の体裁にこだわる民心もかかわる。流通も民心も改善の余地があると思う。太陽光による地球上の生産物は、少しでも効率よく消費しなければならないからだ。もっとも、コンポストのゴミは家庭菜園で再利用されてはいるが…。 参照: 『夜のシカを撮影 八ヶ岳山麓No.102』

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2012/06/15

ビールを燃料にして走る車?! ドイツNo.118

気勢をあげてハンブルグの公道を走行Hpp6083977_2

 ハンブルグの町で奇妙な車を見つけた(写真2点)。車には数人の若者が乗っていて、ビールのジョッキーを傾けながらペダルをこいでいる。ときどき気炎や奇声をあげて、いかにも愉快そうだ。見つけた場所は、UバーンのSt.Pauli(ザンクト・パウリ)駅付近の交差点だった。翌日は、Glacischaussee(グラツィシャウスゼー)通りとFeldstr.(フェルド通り)の交差点で見た。

Hpp6094389 車体のフロントにビア樽が置かれ、屋根には「BierBike.de」と書かれた看板がある。看板は「ビール自転車」と訳すべきか。エンジンは付いていないようだ。人力車といってよいだろう。ビールを飲んで上機嫌でペダルを踏むという情景は、ビールを燃料にして走る車と解釈したい。彼らは乗客ではなくドライバーとエンジンに相当する。乗車目的は、エンターテインメントのほかに、市内観光、私的パーティ―などのようだ。もちろんこの車じたいが宣伝カーになっている。詳細はホームページを参照してほしい。このメカニズムとスタイルで公道を走れるとは、さすがにビール王国ドイツらしい。

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2010/10/24

豊穣の秋…フォト・レポート 八ヶ岳山麓No.109

10月下旬の森のようす…コンパクトカメラシリーズ26Hppa236961

 いつもの散歩道で、秋の風情を撮影した。今夏の異常気象は、秋にも影響を与えたかもしれない。木の実とキノコが豊作だ。夏は、平年以上に太陽エネルギーが降り注いだのではないか。紅葉シーズンは遅れぎみだが色づきは濃い。標高1400メートルでは、23日に最低気温が2度Cまで下がり、紅葉は進んだ。参照:『ドングリをバイオ・エネルギーに 八ヶ岳山麓No.63』

●ハウチワカエデの紅葉 今年は色づきが良い(写真上右)

Hppa236899●ダンコウバイの黄葉 我が家のものは、シカに食べらてほとんど葉がなくなった

Hppa226795●ハリギリの落ち葉 私は、紅葉や黄葉よりこのような葉が好きだ

●豊作のズミ 赤と黄の実があるHppa236936Hppa226764

                          

                          

                          

                          

●はじけたクリ 今年は木の実が豊作だ。はじけ方は3分割と4分割があるHppa226853Hppa226838Hppa226849

      

     

Hppa226885_2●キノコ類 今年はキノコも豊作だ。シラカバの切り株にできたキノコ。ジグザグ行列には意味があるのだろうか

Hppa226773_2●純白のキノコ 地中から球状のキノコが発生していた。同定不詳

Hppa226825●紫色の花 この時期には珍しい花だ。同定不詳

Hppa226856●コロギス 肉食昆虫のコロギスと思われる

Hppa236937●秋型のキチョウ 夏よりは動きが鈍いので撮りやすい

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2010/03/04

石の上にも三十年 八ヶ岳山麓No.96

                     植物から学ぶ「動かない」知恵Hpp3010513_2

 イワナ釣りで渓流に入り左の写真を撮影した。そのとき、「石の上にも三年」というブログを書こうと思った。このことわざの真意は、「つらく困難なことも、辛抱していればいつかは必ずなし遂げられる」ことのたとえである。植物は発芽したところで一生過ごさなければならない。動物のように移動できない植物は、より厳しい生活を余儀なくされるものと考えていた。すなわち植物よりは動物のほうが進化していると思っていた。撮影しながら、石の上で成長した樹木にことわざをあてはめられると考えていた。

 こんなことを考えていたときに、三省堂の書棚で『植物の生存戦略…〈じっとしているという知恵〉に学ぶ』(「植物の軸と情報」特定領域研究班 編 朝日選書)が目に入った。自身の関心にかかわる見出しにひかれて購入した。まだ出だしだけしか読んでいないが、今まで考えていたことに問題があることがわかった。要旨は、「植物と動物はどちらも現在、陸上で繁栄している。進化の頂点に立つ被子植物と哺乳類は、長い時間をかけて淘汰され、現在の形質や生活形を身につけてきた。植物は移動しなくても生きていける知恵を身に付けている」というものだ。植物と動物は、「環境に対する応答の仕方が違う」だけだという。植物の生活環境は、動物より厳しいとは言えないようだ。さらに全編を読んでからレポートしたいと思う。

 植物が移動しなくても生きていけるのは、光合成により自分が消費するエネルギーを作ることができるからだ。これを独立栄養生物という。これに対して動物は従属栄養生物である。人間も、自分独りで生きていくエネルギーを作れないので従属栄養生物である。しかし、樹木(植物)の生き方から何かを学ぶ必要があるのではないか。人間社会で考えると、転職、転勤、引っ越しなど移動をあおるような風潮には疑問を感じる。Hppa310051特に、現代のようなIT化とインターネット、通信技術で情報を交換できる時代にあっては、無益な移動をもっと減らせると考えられる。もちろん動くことを否定しているわけではない。有効な動き、むだのない動きが必要であろう。「石の上にも三年」をことわざだけで終わらせたくない。

 人の移動手段は、獣道に始まり、「シルクロード」や「東海道」などを経て高速道路や新幹線、航空機まで発展してきた。移動は文明の象徴であり、生活とビジネスの効率を追求するうえで欠かせない。しかし、移動手段が整ってきたために無駄な移動もあるのではないか。移動にはエネルギーを消費する。位置エネルギーの消費だ。位置エネルギーは垂直方向にだけあるのではない。水平方向の移動にもエネルギーを消費する。移動に時間やお金がかかるというだけでなく、東京から長野まで新幹線に乗っているだけでも疲れる。時間とお金はエネルギーが置換されたものである。生活場所(位置)を変えるということは、エネルギーを使うのである。このエネルギーを節約することは、地球レベルで必要ではないか。

 上の2点の写真は、「石の上にも三十年」とも「五十年」とも言える状況が写っているのではないだろうか。(写真上左は八ヶ岳山麓で3月1日撮影、写真上右は白馬山麓で2009年10月31日撮影)

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2009/07/22

ペットボトルの自動回収機 横浜No.37

Hpp7150026_2デポジット制のテスト?

 開国博は環境イベントである。有料4会場の電力は廃棄物発電(サーマルリサイクル)でまかない、施設や運営は随所で環境に配慮されている。特に、Y150トゥモローパークは顕著だ。会場を囲む緑化壁、分別ゴミ箱のエコステーション、省エネで外気温を下げるドライミストなど、近未来の都市像を想定した施設がある。Hpp7150185_2

 もう一つある。会場内のコンビニエンスストアーの前にペットボトルとカンの自動回収機が設置されている(写真上左)。ドイツ・ヘレンベルグのスーパーにあったもの(写真下左)と類似した機械である。回収できるボトルとカンは、開国博で販売されているコカ・コーラ社製品に限るが、消費者が環境問題に積極的にかかわる機会ができるので、一歩進んでいるのではないか。Hpp7150032

Hpp6066981 ドイツではデポジット制の端末として設置されているが、ここではキャンペーンの一環なので、抽選で賞品(飲料の引換券と割引券)が当たるようになっている。ボトルやカンを回収口(写真右)へ入れると、ボトルに張られたバーコードをOCRが読み取り、処理される。当たり券が出ると、コンビニ店内で特典に交換する。まだテスト段階だが、日本でもそろそろデポジット制が普及するのではないか。ペットボトルなどの回収率と環境意識を高めるのに役立つだろう。Hpp7150049_2

参照: 「ペットボトル回収システム ドイツNo.66」

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2008/10/23

ドングリをバイオ・エネルギーに            八ヶ岳山麓No.63

木の実をリスやクマと分け合うHppa130631

 高原に本格的な秋が訪れると、カシワやコナラなどのドングリが落ちてきて屋根や路面をたたく。この響きが秋の深まりを感じさせる。10月上旬、いつもの散歩をしていると、コツン、コツンと地面をたたいてドングリが天から落ちてきた。 車道のドングリは、車にひかれて痛々しい(写真下)。こんな末路をたどるなら、いっそ資源として使えないだろうかと考えた。Hppa130555_3

Hppa130617_4 いわゆるドングリはブナ科コナラ属の果実である。コナラ、カシワのほかに、クヌギ、ミズナラ、イチイガシなど、多種類ある。ドングリは、大きさや重さ、表面の質感など野生の風格がある。 その存在感は大きい。子どものころ、遊び道具のない時代にドングリは宝物だった。ドングリ独楽を作って遊んだものだ。今年は豊作のようだ。リスも食べきれないのではないか。

Hppa156008  ドイツのソーセージがおいしいのは、ドングリを食べた豚の肉を材料にするからだという。浜本隆志著「モノが語るドイツ精神」(新潮選書)によると、ドイツでは昔、Hpp9089534秋になるとブタを森に放牧してドングリを食べさせた。ドングリは栄養価が高くブタは丸まると太るのだそうだ。特に、ミズナラのドングリがソーセージの味を良くするという。中世のドイツには、広葉樹の深い森が広がっていたので、たくさんドングリが落ちていたのだろう。

 縄文時代にドングリ粉製のパンがあったという。現在でも、縄文文化を知るためにドングリパンを作って食べる体験があるという。人間にとってもドングリは食料資源だったのだ。それなら、エネルギー資源としても使えるのではないか。Hppa130602しかし、全部人間が採ってしまうとリスやクマが困るので、制限しなければならない。 または、ブナ科の樹木を植林して生産量を増やさなければならない。太陽エネルギーの生産物を利用するという点では、人間もリスやクマも同格である。ドングリを撮影しながら、野生動物を思い合わせた。

Hppa155985 木の実は、ドングリ以外にもたくさんある。今秋は木の実に着目して撮影した。ナナカマド(写真上右)、ヤマボウシ(写真左)、カンボク(写真上右)、ヤマナシ(写真上左)など、生産量の多い木の実は資源として活用できるのではないだろうか。地球上のエネルギーが不足気味の昨今なので考えてみた。一方、農業ではときどき出荷調整が行なわれる。そのとき廃棄される作物をエネルギーに変換できないか。せっかくの太陽の恵みを、むだにしてはならない。                                                    

             

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2008/08/17

低い日本のエネルギー自給率 八ケ岳山麓No.59

北杜市の太陽光発電実験Hpp7270033

 日本でも太陽光発電の本格的実験が進められていることを知った。中央道を諏訪方向に向かって走り、長坂インターに近くなると左車窓に太陽電池を大規模に設置した場所が目に入る。見慣れない風景で、なにかものものしい雰囲気が漂っているので訪れてみた。場所は、長坂インターから約3分の中央道沿いだ。小高い丘に展望台があり、ほぼ全貌を観察できる(写真上右)Hpp7278552ずらりと並んだ太陽電池モジュールは国内、海外の20数社が提供している。国内では、シャープ、三洋電機、京セラ、三菱電機、カネカ、三菱重工業、富士電機システムズ、ソーラーシリコンテクノロジー、昭和シェルソーラー、ホンダソルテックなどだ。当日は、NTTファシリティーズの担当者が説明にあたっていた。近未来の日本をイメージするには良い体験だった。

Hpp7270003 このプロジェクトは、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が北杜市とNTTファシリティーに研究を依頼し、さらに東京農工大や東工大、日立、産業技術総合研究所(独立行政法人)が協力して進められている。研究は昨年から始められたようで、現在は第2期工事(出力1.2MW)が進行中だ。2009年には2MW(メガワット)の出力を持つ発電システムを完成し、実用化の実験を続けるという。北杜市は、長い日照時間と冷涼な気候、市民の協力など立地条件に恵まれて、実験地に選ばれたようだ。

Hpimg 配布されているパンフレットによると、2MWの太陽光発電システムが稼動すると、年間発電量は約2,100,000KWh/年になり、石油換算量約510,300L/(ドラム缶約2,552/年、またはタンクローリー車約17/)に相当する。一般家庭525/年の消費電力をまかなえるという。環境貢献効果は、二酸化炭素削減量約1,165t-CO/年、森林の二酸化炭素吸収面積に換算すると3,262,391m²/年で東京ドーム70個分の森林面積になる。同時に周辺の温度、湿度、風速などの環境モニタリング調査と、カヤネズミなどの野生動物保護などにも留意している。(上右の解説文は現地で配布していたコピーより)

Hpp6066634 常々、日本は自然エネルギーへの取り組みが甘いと思っていたので、この施設を見学して少し安心した。日本はエネルギーの自給率が4%(原子力を含めて19パーセント)、そのうちの自然エネルギーの比率は多めに見ても1.4%である。私が関心のあるドイツは自給率27%(原子力を除く)である(2005年のOECDデーターによる)。そのうちの約3.6%が自然エネルギーだという。ドイツでは、まず自給率を高め、2050年までに自然エネルギー比率を総電力量の68%まで高めるという目標を掲げている(「ドイツ連邦がよ~くわかる本」大野昰著 秀和システム 刊)。日本はドイツよりも深刻な状態であるにもかかわらず、対応は甘いと言わざるをえないだろう。自給率を高め、温暖化ガスの排出を減らすためにも、太陽光発電や風力発電を促進しなければならないはずだ。(写真はミュンヘンの巨大な風力発電設備、ミュンヘン空港から市街へ向かうバスから撮影した)

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2008/07/01

ペットボトル回収システム ドイツNo.66

ヘレンベルグのスーパーでHpp6071763_2

 シュツットガルトの南西30キロぐらいのところにヘレンベルグ(Herrenberg)という町がある。シュツットガルトからSバーンで30分ぐらいなので、東京に対する横浜のような位置づけになるが、町は小さい。シュツットガルトの衛星都市といっていいだろう。シェーンブッフ自然公園(森)のふもと、シュティフツ教会の門前町のように旧市街が展開している。マルクト広場は木組みの家に囲まれ、いかにもドイツらしい落ち着いた雰囲気だ。写真上は、市(マルクト)が立ったマルクト広場。

Hpp6066980  ヘレンベルグのマルクトカウフというスーパーで買い物をした(写真左)。日本の基準では中型に属するスーパーだ。そのとき、日本では見たことがないペットボトルの回収システムにめぐり合った。スーパーの入り口には、ペットボトルのための自動回収機が設置されている(写真下左)。市民は、自転車などで運んできたボトルを挿入口(写真下右)へ入れる。規格に合っていHpp6066984_4 Hpp6066982_5 れば、自動的に機械の中 に引き込まれ、そして液晶パネルに25と表示される。これは25セント(0.25ユーロ 約42円)を意味し、ペットボトル1本分の返還料だ。マシンに吸い込まれた本数掛ける0.25ユーロ分の計算書が出てきて現金に換える。規格というのはドイツが採用しているデポジット制のことだ。リサイクルの処理代を含んだペットボトルの飲料を買うと、容器代の一部が返還される。このペットボトルに入った飲料を買うことで、リサイクルやリユースに協力したことになる。

Hpp6066985 そばで見学していたら、機械が受け付けないボトルがあることがわかった。規格外のボトルだからだ。それは、そばのカウンター(写真左)に持っていって引き取ってもらう。そのときの返還料(引き取り料)をカウンターの係員がわかりやすく説明してくれた。写真左下で、左のボトルから順に、0.08セント、0.15セント、0.02セントである。1セントは0.01ユーロなので、それぞれ0.0008ユーロ(約0.13円)、0.015ユーロ(約0.25円)、0.0002ユーロ(約0.03円)になる。返還料が規格品よりずっと安いのは、リサHpp6066991_3 イクルのシステムに適合しないからだろう。着色ボトルやレッテルが張ってあるボトルはリサイクルに手間とコストがかかるので安くなる。しかし、有料で引き取ってもらえれば、回収に協力した甲斐があるというものだ。参照「ボトルキャップ取り持つコミュニティー 横浜No.21」

 スーパーに学校の帰りの若者が入ってきた。中学生だろうか、肩のザックをカウンターの脇に置いて中へ入っていった。左上の写真、カウンターの右下のザックがそれだ。スーパーの中ではフェアーにふるまいたいということなのだろうか。また、これがドイツの常識なのだろうか。

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