キノコの家族 八ヶ岳山麓No.184
私はキノコが好きだ。まず形がおもしろい。種による違い、個体差など、さまざまな形は、ドラマチックであり、メルヘンチックであり、神秘的だ。そして、短時間(1日単位)でその形を変える、変身術の見事さにも驚く。老若(老菌と幼菌)の違いは、人間のライフステージの縮図のようだ。老菌は何の跡形もなく消えてゆく。理想的な生き方ではないか。
植物が作った葉や茎、木質にはセルロースが含まれている。セルロースは植物体の細胞膜の主成分で、繊維素ともいわれ、物理的にも化学的にも強靭な特性をもっている。その特性を利用して、人類は紙や紐の原料にしたり、セロハン、アセテートなど繊維を作っている。しかし、人間がすべてのセルロースを消費しているわけではない。植物の成長や時間ともに地球上には落ち葉や朽ち木としてセルロースが年々蓄積していく。このままでは、地球上はセルロースでいっぱいになってしまう。
さて、キノコは菌類といわれ、森の清掃者ともいわれる。森の中で、ある種の菌類は落ち葉や朽ち木(セルロース)を分解して、菌糸を作りキノコを構成する。キノコは腐りやすいので、自然界で腐敗分解し、土壌のとけ込み肥料となる。同時に、キノコは人を含む従属栄養生物の餌になる。一方、ミミズやムカデなどの土壌生物も落ち葉や小枝を食べてセルロースの分解に一役買っている。肥沃な土壌にはミミズやムカデがたくさんいるといわれるゆえんだ。森の中でセルロース(落ち葉や朽ち木)があふれないのはキノコと土壌生物のおかげである。すなわち、キノコと土壌生物は、森の清掃者ということになる。
生物の『三界説』というのがある。地球上の生物の進化を把握するために生物を『植物界(生産者)』『動物界(消費者)』『菌界(分解者)』の三つに分類しようという考え方だ。また、『五界説』というのもある。こちらは『モネラ界(原核生物 細菌や藍藻類など)』『原生生物界(単細胞生物 ミドリムシや鞭毛虫類など)』『植物界(緑色植物など)』『菌界(キノコ類)』『動物界』の五つに生物を分類している。ここで、注目しなければならないのは、どちらの説にも分解者としての菌界があることだ。菌類(キノコ)は、地球の進化にとって欠かせない存在であったということだ(以上は、概観的な解説であることをご容赦いただきたい)。この事実を知ると、ますますキノコが好きになる。この秋撮影したキノコの一部を人間関係に当てはめてみた。森の中で果たす役割について併せ考えてみたい。
●恋人同士 カラカサタケの成菌と幼菌。親子というより恋人同士のようなほほえましさを感じた (写真最上段)
●孫と祖父母 老菌のようすをみるとこのように感じたが…。キノコの同定は不詳 (写真下)
●大家族 最近、都会ではめったに見られないのではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)
●5人兄妹 仲の良い兄妹のようだ。うらやましい家族ではないか。キノコの同定は不詳 (写真下)
●老カップル ニセショウロ科の老菌。撮影後、たたいてみたら胞子が出てきた。まだ元気いっぱいだ (写真下)
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