2014/06/28

衣類の回収ボックス

フランスで見つけたリユースの例
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 パリの滞在中、一日だけ地方へ出かけた。ローマ遺跡があるというサンリス(Senlis)を目ざしてパリ北駅を出発した。途中、列車からバスへ乗り換えるシャンティイ(Chantilly)は、ガイドブックでもページを割いている名所である(写真下左 シャンティイの駅舎)。目的地のサンリスよりは知られた町だ。Hpp6070683_2サンリスについては機会をあらためよう。ここではシャンティイで体験したことについて触れる。パリの北約40キロにあるシャンティイは、フランス競馬のメッカだという(写真右上 バス停に建っている広告塔)。サンリスへ向かうバスの車窓から見えた広大な馬の施設には、ゆとりと風格を感じた。馬具博物館もあるという。

 さて、シャンティイでの乗り継ぎ時間が1時間もある。バス停で時間をもてあましていたところ、すぐ隣りにゴミ箱が3つ置かれているのに気づいた(写真下左)Hpp6070699_22つはガラス製品のリサイクル回収箱、もう一つは衣類のリユース回収箱だった。日本ではめったに見ない衣類の回収箱に引かれて撮影した。Hpp6070702投入口にはみ出した衣類が見える。フランス語の辞書と首っ引きで、書かれていることを翻訳してみた。まず、環境問題を標榜する絵とキャッチコピーが目に入った(写真右)。コピーには「環境と雇用のために日々行動しましょう」とある。そして、この回収箱を利用する規定が次のように書かれていた(写真下左)。「下記の指示に従うように」とあり、箱に入れる規定が書かれている。「提供物はこの中へ。あなたの衣類と布地をきれいで乾いた袋に入れて提供してください。また、あなたの靴も一足をひもでくくって提出してください。革製品もけっこうです」。「汚れた、そして濡れた繊維はお断りします」とある。当局は、シャンティイ地区の町の共同体のようだ。なお、「雇用のため……」という意味が、私にはわからない。私はフランス語にはまったく縁がないので、翻訳がまちがっているのかもしれない。Hpp6070702x_2_2

 最近、衣替えを兼ねて衣類を取捨選択した。捨てようと決めたものの中には、未練が残るだけでなく、十分役立つものがある。それらを有効に活用できたらと考えるのは私だけではあるまい。フランスで見たこの回収箱は地球レベルで有効ではないか。しかし、じゃまなものを捨てるためにこのような回収箱を悪用されることも考えられる。このシステムは人々の良識によって成り立つのであろう。

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2012/08/04

“犯人”はニホンアナグマだった 八ヶ岳山麓No.142

日本の食生活を考える…コンパクトカメラシリーズ42

 山小屋の庭に設置したコンポストのふたが、毎晩、開けられている。中のゴミが目当てだ。犯人の正体を突き止めようと、インターバル撮影の無人カメラを仕掛けた。使用カメラはオリンパスSP-350、5分ごとにシャッターが切れるように設定した。今までに2回失敗し、3回目に成功した。前2回は、コンポストのふたを開ける前に、フラッシュの光に驚いて逃げてしまったらしい。3回目はふたを開けたとたんにフラッシュが光りそのまま逃げたらしい。Hpbp8012890とりあえず1カットに、“犯人”がコンポストに顔を突っ込んでいるシーンを撮影できた。その前後のカットには何も写っていなかった。犯人はニホンアナグマと断定した。 【撮影データ】 オリンパスSP-350 8ミリレンズ(35ミリ判換算35ミリ) 絞りF4.5 1/30秒 ISO400  WB晴天 フラッシュ・オート発光 -1/3EV補正  8月1日 22:12

 アナグマは、丸々と肥っている。この写真から学べることは、私たちが食べ残したものにもかなりのエネルギー(カロリー)が残されているということだ。コンポストに捨てるゴミは、将来、肥料にするので生ゴミだけである。多少の食べ残しも含まれるが、ほとんど調理の屑物だ。これらも、アナグマにとっては貴重なエネルギー源になる。地球上のエネルギーが不足している現在、私たちの食生活にも改善の余地があるかもしれない。そして、アナグマは野生ではないということだろう。

 昨日のNHKラジオ第1放送「夏休み子ども科学電話相談室」で、「なぜキュウリは曲がるのですか」という質問に対して、「キュウリは本来曲がるのがあたりまえ」「曲がっても味はまったく変わらない」(以上要旨)という先生方の答えが興味深かった。市場で曲がったキュウリが嫌われるというのは、流通コストの問題だけではあるまい。商品の体裁にこだわる民心もかかわる。流通も民心も改善の余地があると思う。太陽光による地球上の生産物は、少しでも効率よく消費しなければならないからだ。もっとも、コンポストのゴミは家庭菜園で再利用されてはいるが…。 参照: 『夜のシカを撮影 八ヶ岳山麓No.102』

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2011/08/17

アオミドロ 八ヶ岳山麓No.125

生物界の原始的な風景

Hpp8169612 山小屋の近くの池で興味深い現象を撮影した。鈍く光る半球状の物体が水面に浮かんでいる(写真左)。周囲にはアオミドロ(緑藻類)が繁殖し、池の1/3ぐらいは緑から黄緑色に変色している(写真下2点)。池の水は滞留しているわけではなく、新鮮な水が池の縁をかすめるように流れている。半球状物体を撮影後、棒でつついてみたら、へこんでしまった。中には気体が入っていた。

Hpp8169632 「植物と菌の系統と進化」(岩槻邦男ほか 編著 放送大学教材56271-1-9511)によると、地球上の生命の起源は、化石の分析から32億年以前とされている。同書によると30数億年前「原始大気中に含まれていた水、二酸化炭素、窒素などの気体に、紫外線、放電、地熱、宇宙線などのエネルギーが作用し、Hpp8169640アミノ酸や核酸などが生じたと推定される」とある。その後、「これらの高分子がより集まった物体が、やがて秩序のある構造をもつようになって生じたのがバクテリアの仲間だったと考えられる」。これが生命の起源だ。そのなかに光合成で酸素を放出する藍藻類があった。原始大気中にはなかった「酸素がやがて地球の外側にオゾン層をつくると、紫外線などは地表に達する量が減り、引き続き生命の誕生が見られるような条件は失われてしまった」。藍藻類は緑藻類へと変異(進化)し、地球上に繁殖して現在にいたっている。すなわち、アオミドロなどの緑藻類は現在でも原始的な生物である。

 そのころの地球にはどんな風景が展開していたのか。生物の発生と進化に興味のある私は、緑藻類が光合成で水中から酸素が放出する風景を想像した。そして、イメージをこの池の水面に重ね合わせてみた(写真上右 酸素の噴出口が見える)。半球状の物質の中にはアオミドロが作った酸素が入っていたのであろう。Hpp8169670水中から発生した酸素は、繊維状のアオミドロと水の表面張力で風船状に膨らんだと考えられる。「植物と菌の系統と進化」よると、緑藻類の中には現在の陸上緑色植物へ進化した仲間があったという。しかし残念なことに、アオミドロは上陸して進化した仲間ではないとのこと。(写真右は観察した池)

参照:「物質循環 信州No.8」(「信州」は「八ヶ岳山麓」の前のカテゴリー)

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2011/01/30

標高1400メートルの寒さ 八ヶ岳山麓No.115

1月下旬ののようすHpp1270006_2 

 八ヶ岳の積雪は少ない。山腹の雪は赤岳山頂付近までまだら模様だ。それだけ今冬は寒いと言える。冬型の気圧配置が続いているので、日本に吹きつける西風の湿気は日本海側で雪になってしまい、内陸部には達しない。

 冬、山小屋に到着すると、まずユーティリティーを立ち上げる。水道管に巻きつけたヒーターの電源を入れて水を通す準備をする。Hpp128575710分ぐらいたってから、すべての蛇口を閉めて水道の元栓を開けるのだが、パイプの途中が凍っているらしく水が出ない個所がある。だいたい蛇口付近が凍っているので、ドライヤーで暖めたりお湯をかけて解かす。なんだかんだで、ユーティリティーが完全に立ち上がるまでに1時間はかかる。これが厳冬期に山小屋へ来たときの作業である。帰るときの水抜きも油断できない。点検を見落とすと水道管が破裂する羽目になる。

 27日夕刻、到着時の室内は-5度Cだった。15度Cになるまでに3時間はかかった。山小屋は安普請なのでやむを得ない。厳寒時の室内の常温は15度Cと決めている。Hpp128835020度Cを保つには灯油の消費量が倍近くかかるからだ。厚着で15度Cを乗り切るのである。慣れると、都会の20度Cよりは温かく感じられるから不思議だ。寝るときの布団も氷点下である。昔は、自身の体温で温めて眠ることができたが、最近は電気敷き毛布を使っている。それでも、山小屋へ来た初日は足が暖まらない。暖房器具の熱は家を暖めるために使われてしまうからだ。二日目からはだいぶ楽になる。

 最近は、ほとんどキツネを見なくなった。しかし、27日の夕方、山小屋へ向かう車窓から、家内がキツネを見つけた。やせ細ってとぼとぼと畑を歩いていたという。Hpp1298444キツネにとっても今年の寒さは相当こたえているのではないか。28日の朝、山小屋前の道路にキツネの足跡が残されていた(写真上右)。この時期、ほっとするのは湧水である。真冬でも約8度Cの水が湧いていて、あたりには緑が目立つ。私たちは湧水地に「クレソン谷」と名まえを付けて大切にしている。29日に立ち寄ると、クレソンが寒気に耐えてがんばっていた(写真右上)。湧水地は野生動物にとってもオアシスである。いろいろな動物の足跡が目立つ。私たちは朝食用にクレソンを4本ほど採取した。

Hpp1285797 この時期は、氷と霧氷の撮影がおもしろい。28日と29日は、浅瀬の霧氷を撮影した。そこは水源に近いので、水温は7度Cと高い(写真左下)。気温はHpp1288374_2マイナス数度である。15度以上の温度差が霧氷を作る。水面から蒸発した水蒸気は、すぐ冷やされて固体になる(気体から固体へ戻るときも昇華という)。このとき、そばにある落ち葉や小枝を核にして結晶ができる。これが霧氷だ。霧氷は、寒気が取り持つ水と植物の共演と言えよう。 寒い八ヶ岳山麓へやってくるのは、このドラマを見るためだ。

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2009/03/22

買い物かご ドイツNo.80

高い環境意識Hpp2212867_2

 ドイツへ行くたびに気になっていたのだが、ドイツでは買い物かご(バスケット)がポピュラーだ。特に、マルクト(市)ではかごが目だつ。それも、男性が持っている場面をしばしば見る。(写真右 ゲンゲンバッハのマルクト)

 日本でも、40年以上前には買い物かごが使われていた。私の家にも買い物かごがあったのを思い出す。スーパーマーケットやコンビニエンスストアーなどが普及してからは、買い物かごは消えた。Hp2p6077112_4店内のかご(ショッピング・バスケット)を使わざるを得ないからだ。その結果、レジ袋が浸透してしまった。言うまでもなく、レジ袋は資源やエネルギーを消費する。最近は、日本でもレジ袋を有料化したり、買い物客がマイバッグを準備するようになってきたが、ドイツでは、ずいぶん前から問題意識が高かった。少しでも節約しようという気持ちが伝わってきたのである。 (写真左 ヘレンベルグのマルクト)

Hpp6071782 もちろん、レジ袋がまったくないわけではない。我々外国人は買い物かごを持っていないので、支払うときにレジ袋が欲しいと言うと、用意してくれる。かご以外に布袋やナップザックなどの利用者もいる。いずれにしても、レジ袋を使うまいという風潮は浸透している。カップルで買い物に出かけると、男性が買い物かごを持つ役だ。男性独りだけで買い物かごを持っているシーンもよく見かける。ドイツの男性は女性に優しいと思うのだが…。また、紙袋の比率も日本より高い。果物や野菜、菓子類などを買うと、そのまま紙袋に入れてくれる場合が多い。Hpp2217758 紙とプラスティックのどちらが省エネ、省資源なのかは正確にはわからないが、ドイツの実情を紹介した。 (写真上右 ヘレンベルグのマルクト 写真左 ゲンゲンバッハのマルクト)

 最近、本屋で文庫本を買ったら、「カーバーをどうしますか」と聞かれた。「いらない」と言うと、店員はレジ袋に入れようとしたので、それも断った。ドイツで少しでも生活すると、これがあたりまえに思えるようになる。

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