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2016/02/03

テーブル・トップ・フォト〔Ⅲ〕 ドイツNo.142

「とむワールド」に学ぶ

〔思いどおりの撮影ができる〕

 日本カメラ社の「写真用語事典」には、「テーブル・トップ・フォト」について次のように解説されている。 ≪日本語では「卓上写真」という。卓上でミニチュアセットを作ったり、童話的な場面を作ったりして、Hpp2040550_edited1ライティングに工夫をこらして撮影する写真のことで、抽象的な写真からトリック写真、商業写真などに利用される。被写体やライティングを手軽に移動できるため、実景を写すよりも表現意図やイメージの再現が容易である≫(要旨) なお、今まで本ブログではテーブルフォトと省略した呼び方をしてきたが、正確にはテーブル・トップ・フォトである。撮影には被写体と背景、ライティングが不可欠だが、テーブル・トップ・フォトの最低限の条件は、主役である主要被写体を自身が準備することである。すなわち、主役の位置や向きを自由に調節できる撮影のことだ。 (写真上 とむワールド・カレンダー2016年 中村都夢 作品集
 テーブル・トップ・フォトの創始者は知らないが、もっとも活用しているのは商業写真家といってよいだろう。いわゆる小物撮影という分野だ。被写体が小さいので、テーブル上にセットを組んで撮影でき、大きなスタジオを使わなくても済む。時計や宝石、カメラ、携帯電話、人形、書籍などは、テーブル・トップ・フォトで十分な撮影が可能だ。商業写真(コマーシャル)では、商品(被写体)の持っている性能や質感を正確に再現することが求められるので、ライティングがキーになる。テーブル上の小さなセットでは、その調節が容易にできる。
 もうひとつ、テーブル・トップ・フォトを活用したファンタジーフォトという分野がある。人形などを撮影したメルヘン写真や模型を撮影したジオラマ写真だ。ここで紹介する作品は、「とむワールド」が制作したカレンダーの一部である。Hpimg_0002「とむワールド」の主宰者・中村都夢氏(1923~1996)は、スタッフと共に作った表情豊かな人形を自然風景の中に配し、メルヘン調のストーリーを展開する手法を開発した。人形に小人(こびと)を使った「小人たちの歌がきこえる」(1~6巻 偕成社)は、イタリア・ボローニアで開催される国際児童図書展で、1982年度のエルバ賞グランプリを受賞した。
 とむワールドの作品は、屋内のスタジオ撮影されたものと、屋外の自然環境の中での撮影と両方ある。どちらも、撮影の規模はいわゆるテーブル・トップ・フォトより少し規模は大きいが、被写体や小道具、背景などを思いどおりに組み立て、自由に調節できるという点では、テーブル・トップ・フォトの参考になる。写真撮影の目的をフィクションとノンフィクションに大別すれば、商業写真はノンフィクション、ファンタジーフォトはフィクションになるだろう。 (写真上 水辺の情景。とむワールド・カレンダー2015年7月)

〔カメラワークと演出がフィクションを実現〕
 ここではメルヘンや童話などのフィクションについての撮り方を解説しよう。とむワールドの昨年のカレンダーから学ぼう。
まずカメラポジションとアングルが大切Hp
 アイレベルやローアングル、ローポジションが被写体に優しいカメラポジションである。そして、観賞者をフィクションの世界へ引き込むことができる。ハイアングル(ハイポジション)は、被写体に対して威圧的なカメラポジションであり、観賞者は被写体と仲よくなりにくい。 (写真左 ローポジション・アイレベル撮影。とむワールド・カレンダー2015年2月)
② 自然なライティングは当然
 屋外で撮影すれば、ほぼ自然なライティングになる。屋内のテーブルトップ撮影では、Hp4img_0010_edited11灯ライティングが基本だが、屋外の空からの光に匹敵する光がないので、日陰にあたるシャドー部にレフ板を当てるとよい。 (写真右 スタジオでの撮影。トップライトのシャドー部をレフ板でフォロー。とむワールド・カレンダー2015年4月
③ 迫真に迫る演技
 舞台装置とカメラポジション(アングル)が決まったら、登場する被写体は演技が欠かせない。Hpimg_0006自然で豊かな表情が大切。人形や昆虫などはできるだけ自然な表情や仕草が必要だ。とむワールドの作品は大いに参考になるだろう。 (写真左 小人たちの遊びは迫真に迫る。とむワール・ドカレンダー2015年10月)
④ 季節感や自然現象を生かす
 観賞者は被写体と共通の体験をすることで、フィクションに入っていけものだ。とむワールドの作品はカレンダーなので、季節感はもっとも重要なモチーフになる。Hpimg_0008それぞれの作品では、季節を楽しむ小人たちに共感できるのではないか。また、雨や風、雪などの天候はだれもが体感できる身近な自然現象だ。それを積極的に撮り込むことで、作品はなじみやすいものになるだろう。 (写真右 雪は冬の象徴。とむワールド・カレンダー2015年1月) 参照:ホームページ『とむワールドへようこそ』

〔ドイツの森の原点を撮ってみたい〕
 私は、好きなドイツの森をイメージしてみようと考えた。カエサルの『ガリア戦記』には、今から2000年以上前のローマ時代のゲルマニア(ほぼ現ドイツ)の森のようすが書かれている。Hp_p2180100_4「ヘルキュニアの森は、南北の距離が、軽装の旅行者で10日もかかるほど長い」(『ガリア戦記』《國原吉之助訳 講談社学術文庫》)と書かれている。ヘルキュニアとは、現ドイツの中南部になるという。すなわち、2000年前のドイツはほぼ全土が深い森におおわれていたということだ。カエサルによると、ゲルマニアの森にはほかの土地では見られないさまざまな動物が生息しているという。前頭部の真ん中に1本の角が生えた牛に似た動物で、角の長さは見慣れている牛の角よりも長く真っ直ぐであると書かれている。Hpp9160306いわゆるユニコーンであろうか。ほかに、象よりやや小さい野牛がいる。力が強く速く走り、狂暴であるという。そんな魑魅魍魎とした森をイメージしたかった。そこで、八ヶ岳山麓の森の中へ、ドイツのオーバーアマガウで買ってきた奇獣を持ち込みいろいろとイメージを膨らませてみた。(写真上左 こもれ日を利用した。同右 秋にキノコのそばに置いて撮影。同下 ホワイトバランスを調節して月光下の森をイメージした)
 気に入った人形やアクセサリー、模型などを、自然の中や自身で作ったミニチュアセットの中に置いて、撮影してみようではないか。デジタルカメラの撮影では、結果がすぐわかるので、フィードバックが簡単だ。

Hpp2185299_3撮影結果を見て、被写体、ライティング、カメラアングルなどをその場で調節すれば思いどおりの写真が撮れる。屋外が苦手な方には、室内の撮影を勧めたい。

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