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2014/06/14

パリ・マドレーヌ教会のコンサート

モーツァルト/ヴィヴァルディ/etc.
Hpp6029445

 パリへ来て、まず訪れたのはマドレーヌの花市だった。教会のわきに小さな花市がある。しかし、土曜日だったので、ほとんどが閉店していた。滞在するホテルの部屋に花を飾るのが家内のモットーだが、花を買うのはあきらめて教会を見学することにした。マドレーヌ教会は、外観はギリシャ神殿のようだが内部は普通の教会である。Hp2_p5310051礼拝堂はかなり広く、天井も高い立派なカトリック教会だ(写真上右、同左、同下右)

 扉を開けて拝廊に入ると資料を並べたテーブルがあった。そこで目に入ったのはMozart Requiem(モーツァルト レクイエム)のチラシだった。Hpp5310118当日の午後9時からレクイエムのコンサートがある。教会のコンサートでレクイエムを聴くのは憧れだ。2年前にサンタンブロワーズ教会(St.Ambroise)で同じレクイエムを聴いたことを思い出した。しかし、時差ボケのコンディションで夜のコンサートはきついと判断してあきらめた。さらに6月のスケジュール表を見ると、明後日にヴィヴァルディの『四季』とモーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』を含むコンサートがリストアップされていた。家内にもなじめる曲目なので、これを聴くことにした。 参照: 『フランスの過酷で愉快な生活〔前篇〕 ドイツNo.93』

 午後8時からコンサートは始まった。まず、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』(セレナーデ13番K525)だ。私が、初めて生の演奏で聴いたのはこの曲だった。小学校の講堂で山田一雄の指揮する、この曲を聴いたときを思い出した。なんと澄んだ音色なのだろう、音楽にはこんな低音(チェロの響き)があるのかと、当時、感動したものだ。それ以来、私はクラシック音楽のファンになってしまった。『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』は、モーツァルトのもっともポピュラーな名曲である。優しいメロディーは、だれもが必ず耳にして、口ずさんだことがあるはずだ。Hpimg_0003_2K525といえばモーツアルトの最晩年の作品番号になる。どんな芸術家も晩年は難解な作品を創りたくなりがちだが、モーツアルトは、そうではなかった。この曲のおかげでクラシック音楽のファンになってしまうのは、私だけではあるまい。マドレーヌ教会での演奏は、モーツァルトの優しさと甘さが込められていた。 (写真左は当日のチラシ、同下右はチケット)

 アルビノーニの『アダージョ』、パッフェルベルの『カノン』までは、弦楽四重奏(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロ)の演奏だった。4曲目のマスネの『タイスの瞑想曲』からヴァイオリンのソリスト・Frederic Moreau氏が加わった。シューベルトの『アベ・マリア』のあと、ヴィヴァルディの『四季』(作品8)が演奏された。Hpimg_0004『四季』も、クラシック音楽の分野ではもっともポピュラーな名曲だ。作品8は12曲のヴァイオリン協奏曲で構成され『和声と創意の試み』というタイトルが付けられている。そのうちの第1番から第4番までの4曲(春、夏、秋、冬)が『四季』としてたびたび演奏されている。楽器構成は、独奏ヴァイオリンと弦楽四重奏だ。ソリストは指揮を執りながら独奏パートをこなした。『四季』は標題音楽といってよいだろう。4曲それぞれの楽譜には季節感を表す詩(ソネット)が添えられているというから、描写音楽に属する。ただし、『四季』はヴィヴァルディの命名ではないという。後世の人が詩に合わせて付けたようだ。当時の音楽界では標題音楽や描写音楽はまだ関心が低かった。そのような時代にヴィヴァルディがチャレンジしたといってよいのではないか。演奏は、季節感や自然現象をできるだけ強調した表情豊かなものだった。

 ちなみに、ヴィヴァルディの作品3に『調和の霊感』という12曲の合奏協奏曲集がある。私は、『和声と創意の試み』より『調和の霊感』のほうが好きだ。『調和の霊感』にはポリフォニーへのチャレンジを感じるからだ。Hpp6029462_2私は、標題音楽よりも絶対音楽に関心がある。ドイツのJ.S.バッハは、第2番、3番、6番、9番、10番、11番を自身の曲にアレンジしている。きっとバッハは、『調和の霊感』にポリフォニー音楽の“霊感”を得たにちがいない。ヴィヴァルディは、ポリフォニーと標題音楽という将来の二つの分野を予期してトライしたのではないだろうか? (写真右上は演奏者)参照: 『フーガの技法についての考察 ドイツNo.77』

Hpcdp6132636_2 アンコールに応えて、ソリストがパガニーニのバイオリン協奏曲(何番か不詳)で超絶技巧を披露した。終演は9時30分ごろだった。出演者のサイン入りCD(写真左)を記念に買って聖堂をあとにした。夕闇が迫るパリ市街とコンサートの余韻を楽しみながらメトロの階段を降りた。

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