マリエン教会のコンサート ドイツNo.123
リューベックの教会ではたくさんのコンサートが開催されている。『Musik in Lubecks Kirchen』という小冊子(写真下左)には、6月初旬から8月末までの3か月間に100に及ぶコンサートがリストアップされている。リューベック旧市街、ならびに近郊にある教会を挙げてみると、St. Marien、St. Jakobi、St. Petri、Heilig Geist、St. Aegidien、Dom、St. Matthai、St. Philippus、Wichem-Kirche、St. Jurgen-Kapelle、St. Thomas、St. Gertrud am Stadtpark、St. Augustinus、St. Vicelin、St. Johannes Kucknitz、など15を超える。
これらの教会のどこかで、または同時にほぼ毎日コンサートが開かれているのである。いかに音楽的環境が豊かであるかということだろう。しかし、これは音楽鑑賞の環境というよりは宗教的な環境というべきかもしれない。 (写真最上右はマリエン教会。同上右は入場チケット)
6月1日、私たちもその中の一つに触れることができた。日中の見学で訪れたマリエン教会(St. Marien 写真上右)で、関係者が当日夕刻のコンサートの情報を提供してくれたのだ。コンサートのタイトルは「After Work Konzert “Trompete und Orgel”」、「仕事の後のコンサート トランペットとオルガンの夕べ」とでも訳してよいのではないか。夕刻19:00を目ざして聖堂を訪れた。入場料は、私たちは一人10ユーロだった。聴衆は少ない。ほとんどは祭壇内陣に作られたソファーのような客席に座っている。信徒や常連客のようだ(写真右上)。私たちは外様なので、遠慮して礼拝席に座った。
初めにあいさつと曲の解説があり、第1曲のG.P.テレマンの合奏協奏曲が始まった。トランペットが独奏楽器(1声部)を受け持ち、オルガンが室内楽のオーケストラを担当する。オルガンは鍵盤の両手で2声部、ペダルの両足で2声部を受け持つので、合計4声部になりオーケストラに匹敵する演奏ができる。音にも厚みがあるのでオーケストラに引けをとらない。トランペットの高音とオルガンの重厚な響きが音響効果の良い聖堂内の空気を震わせた。まず、堂々たるサウンドに感激した。第2曲目はJ.S.バッハのチェンバロ協奏曲である。これがオルガンの独奏で演奏された。
前述のように、独奏でも4声部の厚みのある音なので、オーケストラと同じように聴こえる。特にオルガン特有の低音のパートが強調され心地よい。第3曲目はA.ヴィヴァルディの合奏協奏曲集「調和の霊感」(op3)からの1曲だ。「調和の霊感」は、私がもっとも注目しているヴィヴァルディの曲なのでうれしかった。トランペットが主旋律を奏で、オルガンが伴奏するという感じがすばらしかった。 (写真上左 祭壇脇のオルガンのそばで演奏するトランペット。同上右 当日のプログラム)
第4曲目はG.ベーム作曲のオルガンのための「天にいますわれらの父よ」という曲である。聴いたことがあるように思えたが、作曲者と曲名は帰国後調べた。第5曲目は、G.F.ヘンデルの組曲ニ長調である。これも聴き覚えがあるが曲名は浮かばない。しかし、ヘンデルらしい荘重な響きを堪能した。帰国後曲名を調べたが不詳である。5楽章の組曲ニ長調は、事典では見つかなかった。第6曲目は、J.パッヘルベルのオルガン曲・シャコンヌ ヘ短調である。シャコンヌといえばバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番(パルティータ)の第5曲が有名だ。変奏曲なので、作曲テクニックを味わうように鑑賞した。なお、パッヘルベルの「カノン」はあまりにも有名だ。終曲は、G.P.テレマンの「英雄的行進曲」だ。プログラムには「Heroische Marsche fur Trompete und Orgel」と書かれている。原曲12連作の中から3曲が抜粋され、トランペットとオルガン用に編曲されたようだ。行進曲の雄々しさとテレマンの作風が一体となって、高らかに唄われた。それには、聖堂の音響効果が貢献していることを付け加えなければならないだろう。演奏者名は、プログラム(写真上右)のポップアップ画面を参照してほしい。
マリエン教会は、市庁舎とマルクト広場の隣りにあり、リューベックを代表する教会である。パイプオルガンは世界最大級(写真上左)と言われているが、演奏に使われたのは祭壇脇の中型のオルガンだった。『Musik an St. Marien Programm 2012』 (写真下右)には、マリエン教会で年間に開催されるコンサートがリストアップされている。私たちが鑑賞した「After Work konzert」以外に「Musik im Gottesdienst」「Lubecker Orgelsommer」「Konzerte und Sonderveranstaltungen」「Buxtehude-Tage 2012」などシリーズ化されている。4月から12月までに87のコンサートが催される。なんと豊かな文化的環境だろうか。教会での開催なので、入場料は10ユーロ前後(教会への寄進)である。これを支える主催者と演奏者に敬意を表したい。 参照:『教会のバッハコンサート ドイツNo.106』
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