旧品川宿から江戸情緒を想像する
2月3日、シャトロー会の撮影会で、旧東海道・品川宿周辺を散策、撮影した。私は、池波正太郎の「鬼平犯科帳」の愛読者である。鬼平犯科帳の舞台には、品川宿がしばしば登場し、捜索の舞台になっている。宿場を描写した部分を読むと、無意識に品川宿のイメージが脳裏に浮かんでくる。それは、どの小説を読んでも同じだ。私は自身のイメージを確かめたいと思って品川宿へ向かった。ちなみに、鬼平犯科帳には私が幼少から高校時代まで過ごした下町も描かれている。 不忍池、上野、車坂、鴬谷、坂本、根岸、下谷、三ノ輪にかけての一帯だ。
読んでいると、筋書きのおもしろさと同時にいろいろな地名に懐かしさがこみあげてくる。鬼平犯科帳になじむ所以だ。 (写真最上右/左 一心寺で江戸時代のカラーと陰影を見つけた。写真左/上右 品川寺〈ほんせんじ〉は江戸六地蔵に数えられる)
もちろん、旧品川宿に江戸時代そのままの町並みが展開していることを期待しているのではない。当然のことながら、現代の町並みの中にほんのわずかでも江戸情緒が残っていたらもうけものだが、それさえも期待できない。日本の町づくりと文化財の保存はその程度のものだ。それを前提として被写体への取り組み方を考えた。現在の風物をいかに江戸の風物へ置きかえるか、というところにおもしろさがあるのだ。私にとって撮影とは、しばしば被写体を自身のイメージに置換する作業である。 (写真上左/上右 江戸時代から続いている畳屋)
私は、歴史的建造物や環境を撮影するときのチェックリストを作っている。その中には、✐歴史的過去と現在の共通点を探す(天候、四季、光、生活、人情、etc.) ✐独自の解釈を明確にする(日常とは、信仰とは、交通とは、時間とは、etc.)がある。 以上の2項を撮影に生かすには、多少歴史を学ばなければならない。今回は、シャトロー会の撮影会担当に配ってもらった「街歩きマップ」と「しながわ観光ガイドマップ」の2点、それに鬼平犯科帳だけからイメージを膨らませた。 (写真上左 穴子めし屋。写真上中 創作和風料理屋。写真上右 おでん屋。いずれも江戸時代にあった職種ではないか?)
旧東海道の品川宿は、現在の京急電鉄の海側にほぼ並行して展開している。マップを見てわかったのだが、この宿場沿いには寺社が集中している。これは品川宿の繁栄を物語るものだろう。私たちは、青物横丁駅で下車、2駅都心寄りの北品川駅付近まで散策した。地元の町づくり協議会が真剣に取り組んでいるためか、住民の生活環境と歴史的雰囲気を両立させた町並みが展開している。
訪問者側が柔軟な感受性と想像力をめぐらせれば、十分楽しめるところである。わずかな散策距離だったが、地元の心がけに共感できた。私は、ここに掲載した写真の被写体から江戸時代を想像した。 (写真上左 草鞋屋を想定した。写真上右 町飛脚として撮影した。写真下左 天ぷらは江戸中期以降に普及したという、もちろん自販機はなかった。写真下右 店のシャッターに描かれた船頭)
(写真下左 品川神社・品川富士からの展望。写真下右 現在の品川浦船だまり)
豊田芳州のTheme』に掲載された写真と文章は、著作権法で保護されています。無断使用は、ご遠慮ください。All pictures and writings on this blog are copyrighted.
| 固定リンク | 0
この記事へのコメントは終了しました。
コメント