教会のバッハ・コンサート ドイツNo.106
午後7時30分、鐘の音が終わると同時に指揮棒が振られた。荘重な導入部が聖堂に響きわたった。J.S.バッハの管弦楽組曲第3番だ。この瞬間と響きを待ち焦がれていた。一昨日の夕刻、聖ゼバルドゥス教会を訪れたとき、入り口に置かれていたチラシに目がとまった。チラシには「Johann Sebastian Bach CHOR-UND ORCHESTERKONZERT」 と書かれていた(写真下左)。聖ゼバルドゥス教会の聖霊降臨祭 日曜日の催しものだ。聖霊降臨祭とは、復活祭から数えて第7回目の日曜日に行われる行事である。この日にめぐり会い、教会でバッハが聴けるとはなんと幸運なのだろう。教会で生の音楽を聴くのは、一年前パリのSt.ブロアーズ教会でモーツァルトの「レクイエム(鎮魂ミサ曲)」を聴いたとき以来だ。
このコンサートは、Kirchen music 2011と称する音楽会の一環だ。4月から6月のかけて春の教会行事の一つでもある。聖ゼバルドゥス教会では、年間に何回もコンサートが開催される。当日の曲目はJ.S.バッハの作品だけで、「管弦楽組曲第3番」(ニ長調)と「第4番」(ニ長調)、「カンタータ第173番〈高められし肉と血と〉」(聖霊降臨祭第2主日用)と「第74番〈「われを愛する者は、わが言葉を守らん〉」(聖霊降臨祭第1主日用)の4曲だ。バッハのカンタータは、キリスト教の行事に合わせて作曲されているので、当日のカンタータ2曲は、聖霊降臨祭に合わせて選曲されたようだ。
●最初に演奏された「管弦楽組曲第3番」は、2曲目のエアー(Air)が有名な「G線上のアリア」に編曲されている。3曲目のガヴォットはオーボエとトランペット、ティンパニーが主役になり高らかに謳う。管楽器の響きが私の気持ちを高ぶらせた。●2番目の曲目「カンタータ第173番」は、以前から聴いていたが、聖堂という厳粛な雰囲気のなかで聴くのは初めてだ。身が引き締まる思いだった。4人の独唱者の唱法は天井の高い聖堂内に残響しすばらしい。●3番目の「管弦楽組曲第4番」は、今までに聴いた記憶がない。ニ長調であるうえに楽器編成が似ているので、第3番と似た響きだ。第1曲はフランス風の序曲なのだが、中間部でアンサンブルが乱れたように聴こえる。指揮が乱れたのか、楽譜がそうなっているのか異常なアンサンブルだった。楽譜を読むことはできないが、解説書によるとフーガの部分があるので、それが異様に聴こえたのかもしれない。しかし「管弦楽組曲第4番」は、今まで聴いてきたバッハの寄せ集めのようで新鮮味がなかった。バッハの作品にしてはやや大味のように感じたが…。●4番目は「カンタータ第74番」である。これも聴きなれた曲だ。まずテノールの独唱から始まる。アルト、バス、ソプラノなど、ほとんど独唱と二重唱で構成されている。終局の合唱まで高められていく構成は名曲だと感じた。
2曲のカンタータは、私の心に深く刻み込まれた。演奏は、指揮がベルンハルト・ブットマン、オーケストラはニュルンベルグ・バッハ管弦楽団、それに4人の独唱者たちだ。なお、入場料は一人7ユーロだった。
演奏が終わり外へ出てみると、南の空には太った下弦の月が輝き、聖堂脇の広場では聴衆たちが余韻を楽しむかのように集っていた(写真上左)。
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