パステルカラーの町並み…ヴァッサーブルグ ドイツNo.101
ドイツの町は、それぞれが自慢の看板をもっている。例えば、オーバーアガマウではほとんどの家屋の壁にフレスコ画が描かれ、宗教画とメルヘンが調和して、すばらしい雰囲気だ。ツェレでは、木骨組みの家々が旧市街を埋め、中世にタイムスリップしたようだ。バンベルクは世界文化遺産の旧市街と大聖堂を見学するために多くの観光客と巡礼者を集めている。ランズフートの家は、立派なファサードを互いに競い合っている。ハーメルンは「笛吹き男」が表看板だ。野外劇で「笛吹き男」をPRし、パン屋のショーケースのなかにも「笛吹き男」や子ども、ネズミなどがパンのモデルになっている。ニュルンベルクやノルドリンゲンは、町を囲む市壁(城壁)が自慢だ。市壁はコミュニティーの象徴なので大切にしている。ハンブルグは豪壮な倉庫群とフィッシュ・マルクト(朝市)ではないだろうか。また、ラートハウス(市庁舎)や教会が顔になっている町も多い。ミュンヘンやハンブルグのラートハウスは壮麗である。
ヴァッサーブルグ・アム・インは旧市街の家々をパステル調カラーに彩色している。一般に、ドイツの町の美しさは、電線・電柱がないことと、家屋の壁の塗装が調和していることによるのだが、ヴァッサーブルグは特別だ。私は町を撮影し始めてすぐに気づいた。案の定、翌日、i (information 観光案内所)を訪れてみたら、1枚のポスターが貼ってあり、それを物語っていた(写真左上 15ユーロで販売されている)。町の紹介文には、「訪問者は、
おとぎ話(fairy tale world)の中に入ったように感じるだろう」と書かれている。あきらかに町全体で、このカラー壁をアッピールしている。このカラーが自慢なのだ。
自身のことだけ考えて家を設計し壁を塗るのが日本の建築や町のデザインではないか。ヴァッサーブルグの町並みは、日本では考えられないデザインだ。日本以上に個人主義を重んじるドイツで、なぜこのようなことができるのだろうか。実は、個人主義とは良心と自由による思想や行為を重んじる一方で、義務と責任を伴う。私たちは、個人主義に伴う義務と責任を忘れがちだ。町の統一されたカラーは義務と責任の表れではないだろうか。すなわち、個人主義がゆえにヴァッサーブルグのパステルカラーは生まれたのだ。ドイツ人は、自分たちが住んでいる町を少しでも美しく見せたいと願っている。そのために、隣りの壁の色を見て、我が家の壁はそれに違和感のないカラーを選んで塗る。
ヴァッサーブルグの町を撮影しながらもう一つ気づいたことがある。人々の衣装もカラフルで町に調和しているのだ。町の美しさは、個人主義によるだけでなく、市民のカラーセンスも貢献していると思った。 (写真はすべてヴァッサーブルグの町並み)
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