ニュルンベルグのマイスタージンガー ドイツNo.100
ニュルンベルグは、ミュンヘンに次ぐバイエルン州第2の都市である。人口50万人、旧市街は今も堅固な城壁で囲まれ、その中に中世がギッシリ詰まっている。なにより重厚でドイツ的な町だ(写真下左)。ミュンヘンから北へ、ICE(特急)で1時間強の距離にある。
ニュルンベルグと聞けば、私が思い浮かぶのはリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」(Die Meistersinger von Nurnberg)である。第1幕の前奏曲は、序曲や前奏曲の白眉と言っていいだろう。後に続くドラマのクライマックスを予感させ、興味をつなぐには絶好の曲である。ヒットラーはワーグナーに心酔したというが、多かれ少なかれこの前奏曲に影響され鼓舞され、自身の主義主張を正当化してしまったのではないだろうか? もちろん、ワーグナーが大作「ニーベルングの指輪」でゲルマン民族の精神的遺産をたたえたことがヒットラーの大きな支えとなった。
楽劇のストーリーのあらましは、「中世ドイツのマイスタージンガーとして有名なハンス・ザックスが歌合戦で一役買って、騎士ワルターを勝たせる」というものだ。ワーグナーは自身をハンス・ザックスになぞらえて、旧弊に対して反抗したという。「ニュルンベルグのマイスタージンガー」の主人公ハンス・ザックス(1494~1576年)は実在の靴職人のマイスターであった。マイスター(親方)というのは、ドイツの徒弟制度の頂点をなす資格で、最高の技術と経験、知識を持つ。現ドイツの技術力を支えてきたと言われる。私は、ハンス・ザックスとマイスターの痕跡をニュルンベルグで探したかった。ハンス・ザックス広場にあるザックス像(写真最上)や、現在も中世の雰囲気が濃い職人広場(写真上左)、かつて職人たちが住んでいたというヴィスゲルバー路地(写真上右)などを訪れた。そして、前奏曲を口ずさみながら撮影した。
もう一度書いておこう。「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第一幕の前奏曲は、私やヒットラーだけでなく、多くの人々を迷いから目覚めさせ勇気づける曲だと思う。特に、導入部のアレグロ・モデラートの「マイスタージンガー」のモチーフは圧巻である。(写真上左は旧市街からのノイ・トアー城壁、同右は城外からのノイ・トアー堀)
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