水中のミノムシ…沈黙の森から 八ヶ岳山麓No.122
野草や昆虫の同定はたいへん難しい。特に、昆虫の幼虫で同定するのは至難の業だ。専門知識の少ない私には確信のある同定はほとんどできない。もっと検索と同定のしやすい図鑑はできないものか。今のところ、手軽でお金がかからないのがインターネットである。
1週間ほど前、家内が水中の異様な状景を発見した。浅い水底(写真右 発見した現場)をパイプ状の物体が移動するというのだ。シラカバの樹皮などを筒状に丸めたものようだ。家内は、はじめ淡水のヤドカリだと思ったらしい。しかし、私の知識ではそれはないと思った。私も近づいてよく見ると、水底を“パイプ”が動くのである。さっそく撮影した(写真最上 左手前に顔が見える)。正体を突き止めようと、小枝を箸にして地上につまみ上げた。中から出てきたものは、ひと目幼虫のようだ(写真左、同下左)。形は似ていないが、渓流釣りの餌にするクロカワムシ(トビゲラの幼虫)の仲間かとも思った。
パイプの長さは50~60ミリ、直径は8~10ミリ、幼虫の体長は25ミリぐらいだった。問題は、淡水中の“ヤドカリ”、すなわち“ミノムシ(蓑虫)”だということだ。小さな図鑑で調べたところマダラミズメイガの生活形に似ているようだ。そこでインターネットで「ミズメイガ」を調べた。ヴィキペディア(Wikipedia)には次のように書かれている。「ミズメイガの幼虫は水生植物の葉を餌とし、巣(ミノ)は自ら出した糸でウキクサなどの浮葉を紡いで作る(要旨)」とある。ガの1種であることはわかった。池にはシラカバの皮が浮いていたので、これを材料にしたのではないかと推測した。同定はできないが、珍しい生物の生活形を見ることができた。水中のミノムシを見るのは初めてだ。「沈黙の森から」の一つのメッセージだった。
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コメント
写真を偶然見せていただきました。この昆虫はムラサキトビケラ属昆虫の幼虫です。長野県、八ヶ岳山麓で撮影されたものですね。東日本から北海道に分布するものの和名はヒメムラサキトビケラに変更されます(現在、日本産ムラサキトビケラの分類学的研究を取り纏め中です)
投稿: 倉西良一 | 2019/04/30 17:14