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2011/01/23

モノクロ撮影は写真と視覚の原点

冬の鎌倉をモノクロで撮るHpp1210184_2

 1月21日は、シャトロー会のメンバと鎌倉を撮影した。カメラの仕上がりモードをモノクロ(モノトーン)にして冬の禅寺を撮り歩いた。鎌倉を撮影するにはモノクロが適すると考えたからだ。言うまでもなく、北鎌倉には禅宗の名刹が並ぶ。今までに、鎌倉で撮影するときには、禅の精神で取り組もうと提案してきた。Hpp1210053私は、撮影の究極の境地は禅に似ていると考えている。雑念を排し、被写体とモチーフに集中し、写真の画面内でテーマやイメージを伝えるところが禅的であると思う。「以心伝心(いしんでんしん)」「不立文字(ふりゅうもんじ)」「只管打座(しかんたざ)」「直指人心見性成仏(じきしにんしんけんしょうじょうぶつ)」「禅定(ぜんじょう)」など、禅宗にまつわる用語はいずれも撮影の精神に合うのではないか。カラー(雑念)を排しモノクロで撮影をすることは禅的であると思う。一方、鎌倉の史跡は武家文化の遺産だ。Hpp1210101_2虚飾のない質実剛健な武家文化にもモノクロが適するのではないか。また、鎌倉の冬枯れにもモノクロは向いている。

Hpp1210166_2  モノクロは、人の目(視覚)と写真の進化ともかかわる。視覚認知の第一段階(被写体は何かを察知すること)は、まず明暗、輪郭(形)、コントラスト、カラー、動きなどを認知する。これをボトムアップ処理と言われ、この段階では被写体が具体的な何かはわからない。原始的なカラー処理は含まれるものの、人はまずモノクロで被写体を観察すると考えられる。次に第二段階として、被写体の特長が少し明らかになる。Hpp1210156線か、面か、群か、奥行きがあるか、対象(主役)と背景の関係などだ。しかし、この段階でもまだ具体的な被写体ははっきりしない。第三段階では大脳での処理が加わり、はじめて被写体が人間なのか樹木なのか、猫なのか犬なのかがはっきりしてくる。もちろん、第一段階から第三段階までは一瞬に行われる。この流れは、人間の視覚認知の進化(系統発生)とほぼ一致していると考えられる。要点は被写体を見つけたとき、まずモノクロで見えると言ってよいだろう。カラーは後から観察する。モノクロ撮影は原始的な観察と言える。

Hpp1210211 一方、写真も発明されたときはモノクロであり、以後100年余りはモノクロが写真界を支配した。写真にとってもモノクロは欠かせない通過点である。一つの専門分野を極めようと思ったら、その過去(歴史)を学ぶことは基本条件だ。撮影の本格的な上達にはフィルムによるモノクロ体験が欠かせないのである。

 さて、カメラ(オリンパスE-410)をモノクロに設定していると、モノクロ撮影用コントラストフィルターも選べることがわかった。フィルター効果にR(赤)/G(緑)/Or(橙)/Ye(黄)/N(無し)の5選択肢がある。私は、昔からモノクロ撮影にはオレンジフィルター(Or)を常用してきた。当日はRとOrを使い分けた。カラー/モノクロを選んだあと、R/G/Or/Yeフィルターを選べるデジタルカメラ技術はすばらしい。ちなみに私は、「大和路の印象Ⅱ」(1967年) 「現代の呪術」(1970年) 「横浜が見える時間Ⅰ」(1983年)までモノクロで撮影してきた。「横浜が見える時間Ⅱ」(1985年)からカラーフィルムに転向した。

Hpp1215629_3 私は、鎌倉でのモノクロ撮影のモチーフとして ①光(と影) ②形 ③質感 を挙げた。私が提唱する8大モチーフの中の3項目である。は、原始的な視覚なので納得できるだろう。質感を挙げたのは、ライティングが質感描写を左右するので、モノクロ向きだからである。当日は、東慶寺と円覚寺のご厚意にも恵まれ、充実した一日を過ごした。 (写真上左 東慶寺の秘仏・水月観音菩薩。井上正道 和尚に解説いただいた。写真下左 同行の亀山会員からごちそうになった鎌倉の銘菓。同右 円覚寺のご厚意で抹茶をいただいた)Hpp1215659 Hpp1215645_2

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