理想的な多重露出撮影 横浜No.40
デジタルカメラの重要なスペックとして多重露出機構を挙げることができる。今まで、ニコンとペンタックスがそれを採用してきたが、オリンパスも初めてペンE-P1に2重露出機構を採用した。重要だと言ったのは、これからの写真表現で、有効なテクニックになると考えているからだ。また、仕上がりを即確認できるデジタルカメラには搭載する価値があるスペックだ。(写真上右 横浜開国博Y150の人気もの「ラ・マシン」)
オリンパスの2重露出機構の特徴は、第2露出のとき、液晶モニター(ファインダー)に第1露出の画像がオーバーラップして見えることだ(写真下参照)。それにより、第1露出画像と第2露出画像の位置関係(フレーミング)を思いどおりに調節できる。今まで多重露出撮影で最も困難とされていたことが解決された。多重露出では、第1露出と第2露出の露出バランスも難しい。しかし、フレーミングが思いどおりにできれば、露出のバランスに集中できるので、全体として2重撮影はかなりやさしくなったと言える。(写真右上 2重露出で構成した恐竜と卵。下の写真は左から第1露出の恐竜、中は第2露出時の液晶モニター、右は第2露出の卵)
今まで、多重露出という撮影テクニックは、軽んじられてきた。カメラが持っている可能性だけで、再現はもちろん表現には向かないと思われてきたのである。いわばカメラの「お遊び」と思われてきた。それにはわけがある。画面構成が思いどおりにできないうえに、偶然に頼る撮影だったからだ。加えて、セルフコッキング機構(多重露出防止機構)のなかった昔のカメラでは、2重露出は失敗の“最右翼”だった。そのためだろうか、正統派写真からは遠い存在であった。すなわち、写真の主流から外れた位置づけにあった。
多重露出に対して通常の撮影をワンショット撮影ということにしよう。なぜワンショットでなければいけないのか。以前にも本ブログで触れたことがあるが、多重露出は写真の重要な視覚である。今から70年以上前にモホリー・ナギ(1895~1946年)は、8つの写真的視覚像の中の一つに「同時視(Simultaneous seeing)」を挙げている。多重露出や多重焼き付け(プリント)で、時間的、空間的に違ういくつかのシーンを一つの画面にまとめることの意義を指摘した。例えば、二つの時刻や場所を一つの画面で見せることができる。因果関係も一つの画面で表現できるかもしれない。これにより、異次元の時間や空間を創造できる。これは一種のモンタージュで、大きなカメラアイになる。表現としての写真なら、どんな手段も許されてよいのではないか。多重露出に“写真”という手かせ足かせをはめる必要はないと考える。(写真上左 コスモワールドの観覧車)
ワンショット撮影が限界にきているとは思わないが、さらに深い写真を追求するのであれば多重露出撮影を気にかけてもよいのではないか。オリンパス ペンE-P1の出現で多重露出は「お遊び」ではなくなった。構想やイメージしだいで画期的な作品ができるだろう。参照:米山明六の「多重・テーブルフォト・花たち」常設館/豊田芳州のTheme「イルカのクリスマス 横浜No.17」
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