余暇に好きな“仕事”をする ドイツNo.62
ドイツと日本の年間労働時間
ドイツの人々や町の雰囲気がゆったりしていることについては、たびたび書いてきた。昼食時や夕刻の過ごし方を見ていると、日本との違いはあきらかだ。ここでもそれについて触れよう。現在、ゴールデンウイークも終わろうとしている。私もサラリーマン時代には、この時期を待ち望んだものだ。現在でも、周囲の人々が休日を過ごす姿を見ているとうれしくなる。まだサラリーマン思考が抜けきれていないからだろうか。労働時間が長いほど休日は楽しみになる。(写真上は、ミュンヘン・カールス広場の夕刻の風景。2007年6月16日(土) 17時25分撮影)
今から18年ぐらい前、私が出版社に勤務していたころ、ドイツと日本の年間労働時間を比較したレポートがあった。どんなメディアだったか記憶はないが、ドイツが約1600時間なのに対し日本は約2000時間と報道されていた。当時、自身の労働時間を計算したら約2400時間だった。この事実を知って、何か“おかしい”と感じた。仕事があり忙しいことはうれしいことだ。嫌いな仕事ではなかったので、恵まれていると思っていた。しかし、一方で自身のライフワークも進めていたので、それにも時間を費やしたかった。(写真上左は、ミュンヘン・ビクトエーリエン・マルクトのカフェ。2007年6月15日(金) 12時58分撮影)
ドイツのヘルムート・コール首相(当時)は、1993年と1996年の2回来日しているが、どちらかの機会で、日本の労働時間について触れた。その要旨は「労働時間以外の余暇で国や社会に貢献できるはずだ」という発言だった。日本は余暇が少ないだけでなく、余暇の使い方に工夫があってもよいのではないかという趣旨だ。すなわち、会社(拘束された労働時間)だけが“仕事”の場ではないという指摘だ。(写真上右は、ミュンヘン・レジデンツ宮殿前にできた移動遊園地に集まる家族連れ。2007年6月16日(土) 15時38分撮影)
仕事で7年間ドイツに滞在した友人が次のように話していた。「ドイツの会社では、残業はほとんどない。残業しなければならない労働環境だったら、ドイツ人はすぐ会社を辞めてしまう」というのだ。その結果が、ドイツの労働時間に反映している。現
在、 日本の年間労働時間は1784時間、ドイツが 1436時間、ちなみにアメリカが1797時間、韓国が2357時間である(社会実情データ図録 OECD Factbook2008より)。現在でも、日本はドイツより300時間以上年間労働時間が多い。その分だけ余暇は少ない。日本とドイツは国情が違うので、すぐドイツのまねができるわけではないが、労働者と企業、財界、政界が心がければ労働時間を少しは改善できるのではないか。もちろん、労働時間が少なくなった分だけ、余暇に専門知識を生かしたり、
好きな“仕事”に従事することで、それをカバーするのである。好きなことや得意なことで国や社会に貢献できれば、それに越したことはない。また、家族やコミュニティーへのふれあいが増え、社会の人間関係もより円滑になるのではないだろうか。
4月29日、横浜山手にあるサンモール・インターナショナル・スクールのフードフェアーに行ってきた。休日を老若男女、家族ぐるみで楽しんでいるようすを見て、ドイツとは違った余暇の過ごし方があると感じた(写真上3点)。
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