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2006/06/24

ノルドリンゲンで暮らす ドイツNo.19

Hpp5280006

撮影は地縁的活動

 若いときから中世ヨーロッパの町にあこがれていた。栗田勇著作集(新書館刊)に、「人が住む町の広さは、徒歩だけで行動できるぐらいの規模が好ましい」(要旨)と書かれていて、その例としてヨーロッパ中世の町並みについて触れていた。どういうわけか、当時そのことに納得できた。日本の大都市、東京でずっと暮らしてきたがゆえに、「そういう考え方もあるのか」と気づき感心した。今までドイツへ行くときは、このことを念頭に置いた。できるだけ中世の町並みが残っている所を選んできた。そして、今回、取材に選んだノルドリンゲンは、私の期待にぴったりの町だった。中世の城壁が完全に近い状態で残り、町も積極的に町並みを保存している(写真上)。しかも、同じロマンティック街道の町、ローテンブルグほど観光客が来ない。中世そのまま?と言えるほどのゆったりとした町だった。ノルドリンゲンの駅からタクシーで町へ向かい、「ライムリンガー門」をくぐって城壁内へ入るときはワクワクした。ホテルにチェックインして、すぐ昼食のため市直営のRathous Cafeへ行った。これからの撮影の成功を祈ってビールで乾杯した(写真右)。 Hpp5248230

 町は、直径約1キロの円形で、その周囲を城壁が囲んでいる。城壁の高さはだいたい12メートル、厚さは1.6メートルほどある。14世紀に今の形が完成したという。現在、城壁の上は遊歩道になっている。そこから町の中を見下ろすと、人々の平和な生活が見え、市民の安全を第一とした当時の人々の執念を感じる。日本にも城壁はあるが、大名や武士とその家族を敵から守るための城壁である。ノルドリンゲンには町全体を守る城壁がある。この中ではぐくまれた共同体意識が、ドイツに共通の精神的支柱になっていると思える。

Hpp5279085  市庁舎裏のギャラリーで、ノルドリンゲン在住の写真家、ペーター・ビンダー氏が個展「Neordlingen Stadtrunde」(「ノルドリンゲン市周辺」とでも訳すのか)を開催していた(写真左)。アマチュアであるがたいへんレベルが高く、私の撮影の参考になった。彼も、私と同じ被写体を撮影していた。斜光線に照らされた古い壁と窓の質感描写は私のねらいだっHpp5258595 たのだが、私のほうは天候と時間に恵まれず実現しなかった(写真右)。やはり地元写真家にはかなわない。写真にとっては被写体がもっとも大切だ。すなわち被写体のある撮影地が重要なのだ。撮影では、そこに住み、根を張り、腰をすえることで表現目標に近づける。地元なら多様な被写体情報を入手でき、ベストコンディションで撮影できる確率が高くなる。よそ者では撮れないシャッターチャンスに恵まれる。これを地縁的活動と言っていいだろう。私は今まで横浜、信州に根ざして撮影してきた。そういう意味では、第三のテーマ「ドイツからの風」は絶望的である。しかし、何回か通うことで少しでも好きなドイツを作品にしたいと思っている。

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